メモ

IPv6はなぜ普及しないのか?


IPv6アドレスはIPv4アドレスの枯渇問題を解決するために1999年に登場しました。しかし、登場から20年近くたった2018年現在においても主流のIPアドレスはIPv4であって、「IPv6が普及した」とは言い難い状況が続いています。東アジア、南アジア・太平洋エリアにIPアドレスを分配するAPNICが「なぜIPv6が普及できていないのか」について理由を考察しています。

Is IPv6 only for the Rich?
(PDFファイル)https://ripe76.ripe.net/presentations/9-2018-05-17-ipv6-reasons.pdf

以下の画像は、2017年時点でのIPv6の普及状況を示したグラフです。横軸が時間軸、縦軸が普及率(%)を示しています。青線がIPv6のサイトのみにアクセスできるユーザー、赤線がIPv6/IPv4の両方のサイトにIPv6でアクセスできるユーザーを示しており、両グラフともに年々右肩上がりで順調に上昇しており、全体の2割近くにまで達しています。しかし、赤枠の2017年の直近部分に絞ってみると……


グラフが頭打ちになってきていて、調査から直近の9カ月間は普及スピードが鈍化している傾向にあります。


IPv6の普及スピードが落ちている原因について、APNICは「これまでIPv6の普及を推し進めてきたものが、効果的ではなくなってきていること」を理由としています。では、これまでのIPv6の普及を進めていた要因は何だったのでしょうか?

1つの要因として考えられるのは巨大なインターネットサービスプロバイダ(ISP)による影響です。ISPが抱えるユーザー数を上位から順に並べると、以下の表になり、上位6つのISPはインドとアメリカで独占されています。


ここで、ISPの顧客数に国の1人あたりGDPを掛け合わせることで、国の裕福度も考慮に入れたランキングをAPNICが作っています。赤枠の数値が大きい(裕福な)ISPの上位20社をまとめると、この中の緑の印が付いた13社の顧客だけで、IPv6アドレスの35%以上を占めているとのこと。


上記より、IPv6の普及には裕福なISPによる影響力が強いともいえますが、IPv6アドレスの半数以上を抱えるのは上位20位圏外のISPなので、APNICはこれが要因であると断定できないとしています。

次に視点を変えて、ISPの成長度という観点で調べてみます。過去16カ月で(赤枠部分の)顧客数が著しく伸びたISP上位30社をまとめた表が以下の画像です。トップはタイのISPで成長率は372%、2位が韓国のISPで355%と上位2社は3倍以上の成長を記録しています。しかし、これらのISPの多くはIPv4アドレスに主眼を置いており、IPv6のインフラを構築するための投資には積極的ではありません。このため、これらのISPはIPv6全体の10%以上の影響力しか持っておらず、IPv6の普及に強く貢献しているとはいえないとのこと。


次に顧客数(赤枠)を多く抱えるISPを上位から並べて……


100万以上の顧客を抱える418のISPを抽出し、各ISPがどの程度IPv6に積極的に投資しているかを分布図で確認します。縦軸がISPが扱うIPv6のアドレス数、横軸を顧客数を示しています。すると、IPv6に積極的に投資しているISPは81あり、残りの337のISPは分布図の下部に位置しており、積極的に投資を行っていませんでした。多くの顧客数を抱えていたとしても、IPv6の普及に貢献することはあまりないようです。また、これらのISPに限らず、ほとんどのISPにも同様の傾向が見られ、IPv4に積極投資しているISPはIPv6をあまり重視しない傾向があります。


しかし、この傾向がIPv6アドレスの普及を阻害する要因にはなっていません。実際、IPv4アドレスの在庫の枯渇により使用可能なアドレスが減少していますが、今後も新しいアドレスのニーズが高まることが予想されているため、これらのISPがIPv6アドレスを導入するのは、時間の問題であるとAPINICが述べています。

APNICは、これらの理由から「IPv6の普及を促進しているもの」を明確に断言することはできないとしており、逆にIPv6の普及スピードが鈍化している理由もよくわからないと結論づけています。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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