メモ

学生が好む「学習スタイル」を提供しても学生の成績向上にはつながらないという研究結果

by Phil Roeder

子どもにはそれぞれに適した学習スタイルがある」という説は世界中に広まっており、教育者の中には「VARK(画像的・聴覚的・読字的・運動的)」アンケートを行って生徒の学習スタイルを分類する人もいますが、近年では「学習スタイルという考えを裏付ける明確な証拠はない」ことが判明しています。そんな中、教育系の科学ジャーナルAnatomical Sciences Educationにも学習スタイルの効果を否定する研究結果が掲載されました。

Another nail in the coffin for learning styles? Disparities among undergraduate anatomy students’ study strategies, class performance, and reported VARK learning styles - Husmann - - Anatomical Sciences Education - Wiley Online Library
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/ase.1777

“Another nail in the coffin for learning styles” – students did not benefit from studying according to their supposed learning style – Research Digest
https://digest.bps.org.uk/2018/04/03/another-nail-in-the-coffin-for-learning-styles-students-did-not-benefit-from-studying-according-to-their-supposed-learning-style/

学習スタイル説とは、生徒に対してVARKアンケートを行って「視覚的な学習が効果的」「聴覚を利用した学習が効果的」といった4つの学習スタイルに生徒を分類し、それぞれの学習スタイルに合致した学習方法を取らせるもの。世界中に支持者を持つ学習スタイル説ですが、実際のところ学習スタイルによって学習方法を変える試みは、せいぜい「実際に勉強したかどうかはともかく、よく勉強した気持ちになる」といった程度の効果しか得られないとされています。


ところが、「学習スタイルには証拠がない」とする多数の研究が発表されている中、なおも学習スタイル説への支持を取りやめない教育者は少なくないとのこと。学習スタイル説の支持者の中には「これまでの研究で学習スタイル説が裏付けられなかったのは、『好きな学習スタイルであれば、学校の授業以外でも生徒が自主的に勉強する時間が増える』という、学校の授業以外への影響を考慮していないからだ」と主張する人がいます。これまでの研究は学習スタイルを学校における教育方式に当てはめようとしており、授業以外での学習における学習スタイルの効果を測定していないというのです。

そんな授業外における学習スタイル説の効果について測定するため、インディアナ大学の研究チームは解剖学の講義と演習のコースを受講した数百人の生徒に対し、VARKアンケートによって生徒を個別の学習スタイルごとに分類しました。研究チームは学生たちに対し、「講義外での自主学習において、VARKアンケートで得られた学習スタイルに沿った学習法を行うよう」奨励したそうです。そして、1年のコースが終了した後で学生たちが本当に自分に合っているとされた学習スタイルを使用したのか、そして学生たちの成績は学習スタイルと関連があったのかについて分析しました。

by Kashif John

その結果、実に全学生のうち67%は、VARKアンケートで得られた学習スタイルを使用していなかったことが明らかになりました。また、自分の学習スタイルに沿った勉強法を取った生徒も、勉強法に関して学習スタイルを用いなかった生徒より高い成績を取ることはなかったとのこと。

学習スタイルと成績の間に相関が見られなかった一方で、よりよい成績を取った生徒は顕微鏡作業の練習や講義ノートなど、学習スタイルとは関係のない特定の学習形式が成績と関連していることがわかりました。なお、フラッシュカードを用いて暗記する勉強法は学習者によい成績をもたらさなかったそうです。

研究チームは今回の研究結果について、学習スタイルには本来想定される効果以外にも何ら副次的な効果がないことを示すものであり、「私はイメージ学習が効果的な人間だから、文字を読むのは苦手」といった発言は使われるべきではないと述べています。

by San Francisco State

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in メモ, Posted by log1h_ik

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