サイエンス

アルコールの分解を助けてツラい二日酔いを防止する特効薬が近い将来に登場するかもしれない


調子に乗ってお酒を飲み過ぎてしまい、二日酔いで目が覚めた翌朝には「今すぐこの気持ち悪さを治す薬を……」と今はまだ存在しない薬を切望する気持ちになってしまうものですが、近い将来にそれが実現する可能性が出てきました。カリフォルニア大学バークレー校の科学者による研究チームは、すでに安全が確認されている物質だけを使ったアルコールの「解毒剤」がマウスを使った実験で有効に機能していることを確認しており、近いうちに人間の被験者による臨床実験を始める方針を立てています。

A Hepatocyte‐Mimicking Antidote for Alcohol Intoxication - Xu - - Advanced Materials - Wiley Online Library
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/adma.201707443

A hangover pill? Tests on drunk mice show promise
https://theconversation.com/a-hangover-pill-tests-on-drunk-mice-show-promise-96188

この研究を進めているのは、化学・生物分子工学の教授で、自らもワイン愛好家というYunfeng Lu氏らの研究チームです。自らの体験から、そしてアメリカでは病院に緊急搬送されてくる患者の8~10%が急性アルコール中毒であるという事実から、Lu氏は二日酔いに苦しめられることなくお酒が楽しめ、人の命を救うことにもつながる「アルコール分解薬」の必要性を確信していたといいます。

Lu氏は、ケック医学校で肝臓病を専門に研究を行うCheng Ji教授および、自身の下で学んでいる大学院生のDuo Xu氏とともにこの研究を進めています。Lu氏が用いているのは、人間の肝臓の中にも存在するアルコールオキシダーゼカタラーゼアルデヒドデヒドロゲナーゼの3つの酵素で、これらを血管から肝臓へと送り届けることでアルコールの分解能力を増強させることを狙いました。

Lu氏によると、最も大きな問題はいかにしてこれらの酵素を確実に、効率的に肝臓に届けるかという点だったとのこと。そこでLu氏は、すでにアメリカのFDA(食品医薬品局)が薬品用に認可している材料を使ってそれぞれの酵素を極小のカプセルで覆い、血流に乗せて肝臓へと届けるという手法を採っています。

実際にこれらの酵素を投与されたマウスと通常のマウスを比較した実験では、違いが如実に表れたとのこと。酵素を投与されたマウスでは、アルコール摂取から4時間後の血中アルコール濃度が最大で45%も減少し、さらには発がん性があり、頭痛や吐き気を引き起こす作用があるアセトアルデヒドの血中濃度も極めて低い状態が維持されたことが確認されています。また、マウスはアルコールで酔った状態になるとすぐ睡眠状態に陥るのですが、酵素を投与されたマウスはそうでないマウスよりも早く目を覚ましたことも判明しています。

By Yu-Chan Chen

血中アルコール濃度は、酔いの強さと密接に関係する要素であり、濃度が低いほど酔いの程度も低いと見なすことができます。つまり、今回の研究で酵素を投与されたマウスの血中アルコール濃度が素早く低下したということは、アルコールの影響を受ける時間がそれだけ短くなっていたということを意味するといえます。

酔いのメカニズム|お酒とうまく付き合う|CSV活動|キリン
http://www.kirin.co.jp/csv/arp/risk/mechanism.html

酔いの程度は、脳内のアルコール濃度によって決まります。ただし、実際に脳内の濃度を測るのは不可能なため、代わりに血中アルコール濃度によって酔いの程度を判定しています。


研究チームは目下、これらの極小カプセルが予期せぬ悪影響を生体に与えないことの確認を進めている段階とのこと。この確認が取れると次は人体を使った臨床実験に進むことが可能になります。研究チームでは、その時期を2018年5月から1年以内となる見通しを立てています。

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in サイエンス,   生き物, Posted by darkhorse_log

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