サイエンス

世界人口の95%は汚れた空気を吸って生きている

By V.T. Polywoda

陸上に住む生物にとって、空気を吸って吐く「呼吸」は生まれてから死ぬまで一度も欠かすことができないもの。一生のお供である空気は、食べ物や飲み物と同様にできる限りきれいなものを取り込みたいものですが、最新の研究からは世界中で暮らしているうちの実に95%もの人が、WHO(世界保健機構)が定める「空気質ガイドライン(Air Quality Guideline)」に適さない空気を吸って暮らしていることが明らかになっています。

(PDF)State of Global Air 2018


Over 95 Percent Of The World Is Breathing Unsafe Air | IFLScience
http://www.iflscience.com/environment/over-95-percent-of-the-world-is-breathing-unsafe-air/

アメリカ・マサチューセッツ州に拠点を置くHealth Effects Institute(HEI:健康影響研究所)が、WHOが定めている空気質ガイドラインに基づいて調査した世界各国の大気汚染状況をまとめた年次報告書を発表しました。その内容によると、世界人口の95%にあたる約70億人が汚れた空気を常に吸いながら生活を送っているとのこと。また、大気汚染を原因として世界中で610万人が若くして亡くなっており、その主な死因は心臓発作や肺がん、慢性肺疾患であることも示されています。以下の図では、大気汚染状態が色分けされているのですが、世界の大半の人口が集中する中国やインド、そしてアフリカ地域で汚染度が高くなっていることが示されています。


この状況が、過去に比べて悪化していることも示されています。2014年の調査の際では「世界の92%の人がWHOの定める基準を満たさない汚れた空気を吸って暮らしている」ことが判明していましたが、今回の結果では95%と3ポイント増加していることがわかっています。

ここで示されている「大気汚染」とは、大気の中に硫黄や硝酸、アンモニア、塩化ナトリウム、黒色炭素(ブラックカーボン)、鉱物粉末などの微粒子が含まれている状態のことを指します。WHOのガイドラインでは、空気1立方メートルあたりに含まれることが許容される微粒子のレベルが定められていますが、実に世界の95%の地域でガイドラインが定める安全な基準を超えた微粒子を含んでいることが確認されています。

世界中で全ての世代の男女の死因を分類すると、上位には高血圧や喫煙、高い空腹時血漿グルコース濃度などが挙げられているのですが、その中に微粒子状物質を要因とするものや、家庭で炭や固形燃料を燃やすことなどによって生じる大気汚染が含まれていることがわかります。


「大気汚染」と聞くと、多くの自動車が集中する大都市や、工場が煙を吐き出す工業地帯で多く発生していると考えがちですが、この報告書では木材や固形燃料、動物のフンなどを燃やすことなどによっても深刻な大気汚染が発生していることが示されています。HEIの副所長のボブ・オキーフ氏は「全ての大気汚染問題は個人に被害を与えます。呼吸器系に疾患を抱える人が呼吸することを難しくし、老若男女が病院に送られることで学校や仕事にいけなくなったり、早期の死という結果をもたらしたりしています。今回の結果からは、世界のいくつかの地域では問題が深刻化しており、私たちはこの解決可能な問題に立ち向かわなければならないということが示されています」と述べています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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