サイエンス

高価な「C型肝炎治療薬」の効果を保ったまま安価で提供するための取り組みが進行中

By The Javorac

ウイルスの感染により起こる肝臓の病気「C型肝炎」は、肝硬変やガン、そして最悪の場合には死に至ることも決して少なくない病気です。日本でも100万人から200万人の患者がいるといわれているC型肝炎ですが、治療薬が高額であることが理由で特に貧しい国では十分な治療が行われていない実態があります。この状況を改善するために、ある非営利組織は高額な治療薬と同じ効果を持つ薬をわずか300ドル(約3万円)という格安で提供するための研究開発を進めており、実際に非常に良い結果が明らかになってきています。

Non-profit’s $300 hepatitis C cure as effective as $84,000 alternative | Science | The Guardian
https://www.theguardian.com/science/2018/apr/12/non-profits-300-hepatitis-c-cure-as-effective-as-84000-alternative

社会から顧みられない病気に対する治療薬の研究開発を行う非営利組織DNDi(Drugs for Neglected Diseases initiative:顧みられない病気の新薬開発イニシアティブ)は、C型肝炎を低いコストで治療できるようにするための新薬開発に取り組んでいます。エジプトの製薬企業「ファルコ・ファーマシューティカルズ」と共同でDNDiは、既存薬「ソフォスブビル」と新薬「ラヴィダスヴィール」という2つの薬を使った治療法を、アメリカ製の非常に高価な薬を買えない国で提供するための研究を進めてきました。

開発は当初の予想よりも時間がかかってしまっているとのことですが、最新の結果からは非常に良好な内容が判明しています。中間報告として発表された内容では、臨床試験のフェーズ2とフェーズ3に参加した301人の患者の97%が、12週間にわたる薬の投与のおかげで病気が治ったことが明らかになっています。また、HIV感染や肝硬変のような治療が難しい病気を併発している人においても治療薬は同等の効果があることが確認されています。


C型肝炎はウイルス性の病気で、肝硬変やガン、最悪の場合には死に至ることもあり、世界中で7100万人がこの病気を患って40万人が死亡しているといわれています。すでに効果の高い薬が作り出されてきましたが、非常に高価であるために全体のうち300万人しかこの薬に手が出せないという状況があります。

アメリカの製薬会社「ギリアド」は、国民の収入が低い国ではC型肝炎錠剤「ハーボニー」の価格を下げましたが、それでもなお政府がかじを取って薬を広く提供するプログラムを進めるには高すぎる状態が続いています。ハーボニーを12週間にわたって投与するための費用は、マレーシアで4万8000ドル(約520万円)、チリで1万2000ドル(約130万円)となっているのですが、以前の薬「ソホスブビル」はさらに高価で、1錠あたりの価格は1000ドル(約11万円)。12週間にわたって投与した際のコストは8万4000ドル(約920万円)にも上るという状態でした。この価格は国によって大きく幅があり、アメリカが最も高くなる傾向にあるとのことです。


ギリアドには、同じアメリカの製薬会社である「アッヴィ」からのプレッシャーがかかっています。アッヴィは2017年に発売したC型肝炎治療薬「マヴィレット」は投与期間が8週間と短くなっており、トータルの費用も2万6400ドル(約290万円)と低く抑えられているのが特徴。しかし、その価格は先進国であっても決して容易に手が出るものではなく、ましてや発展途上国における入手困難度はさらにたかまります。

DNDiのエグゼクティブ・ディレクターであるベルナール・ペコー氏は、「ソフォスブビルとラヴィダスヴィールの組合せによる治療は、最新で入手可能な最高のC型肝炎治療薬に匹敵します。その一方でこれらの薬は手頃な価格であり、製薬会社のアクセスプログラムから除外されている国においても十分に利用可能であることを最新の研究結果が示しています」と述べています。

By DraconianRain

この薬を使った治療は、2019年から2020年までにマレーシアで開始される予定であるとのこと。また、DNDiは中南米でも12週間のコースで500ドル(約5万5000円)で利用できるようにする契約を締結しており、さらに価格を300ドル(約3万3000円)に引き下げるための準備を進めています。

今回のPharcoが製造した医薬品を使用した試験はDNDiによって実施され、マレーシア保健省によって共同後援されたもの。また、エジプトでも遺伝的特徴が異なる300人の患者に対した試験が行われ、こちらは100%の治癒率という結果が残されています。さらに、南アフリカとウクライナでは、6つの遺伝子型があるC型肝炎のすべてをカバーするためのさらなる研究が行われています。さらにDNDiは、ラヴィダスヴィールを低所得国および中所得国で取り扱うライセンスを、カリフォルニアの製薬会社「プレシディオ・ファーマシューティカルズ」から取得しています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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