動画

近くて遠い星「月」を4K高画質で巡るNASAのムービー「Tour of the Moon in 4K」


地球から約38万km離れた宇宙に存在するは、人類にとって最も近いところにありながら、なかなか簡単に到達することができない天体です。NASAが有人月探査と有人火星探査を実行するための情報収集のために2009年に打ち上げた探査機ルナー・リコネサンス・オービター(LRO)は高性能なカメラで月の表面を撮影し続けており、その画像をもとにNASAは月の主要ポイントをめぐる4K画質ムービー「Tour of the Moon in 4K」を公開しています。

Tour of the Moon in 4K - YouTube


月の直径は平均で3474.3km。常に地球に対して同じ面を向けて回っているために、その裏側は長い間謎に包まれ、「宇宙人の基地がある」などという都市伝説が作られることもありました。LROはそんな月の表面から高度50kmの軌道を周回して表面の調査を行っています。搭載されるカメラは最大解像度50cmという驚異的な性能を備えており、非常に精細に月の表情を捉えることができます。


このムービーのツアーは、地球から月を見た時に左側の縁に位置する東の海からスタート。最大の特徴である3重のリングは、小惑星サイズの天体が衝突したことで表面が波打ったことの名残だと考えられています。


この映像に、月探査機GRAILによる重力分布データを重ねるとこんな感じ。このデータは、月の地殻内の構造を明らかにし、月の内部の地質的特徴を示す扉を開いてくれることになります。


次の訪問地は、太陽の光をほとんど受けず、太陽系の中でも最も気温の低い地点の一つである、月の南極です。LROに搭載された温度分布計測器「DIVINER」とレーザー高度計「LOLA」の観測データ、そしてLROと同時に打ち上げられた探査機LCROSSによる調査から、水色で示された部分には水が氷の状態で存在している可能性が示唆されています。


LOLAはまた、南極付近に位置するクレーター「シャクルトン・クレーター」のデジタル標高モデルをもたらしてくれました。このクレーターは幅21km、深さ4kmの大きさがあり、クレーターの底はほとんど太陽光が届かない「永久影」の領域となっています。


月で最大のクレーター「南極エイトケン盆地」がこの写真に隠されています。それは一体どこにあるのかというと……


この白い円の領域。幅2500kmで、深さは月の平均半径から比べて約9km、最大で13kmも深い巨大なくぼみ地となっています。月面の裏側にあるため、1960年前後に月面探査が行われるまでは全く存在が知られていなかった巨大クレーターで、小惑星が衝突してできたと考えられていますが、誕生した年代は不明のままです。


LROのセンサーは、月の表面をこれまでになく詳細に調査することを可能にしています。直径85kmの「ティコ・クレーター」には、中央に山が存在することが判明しています。


この山は山頂部分で100メートルの幅がありますが、いったいなぜこのような山がクレーターのど真ん中に誕生したのか、その起源は謎に包まれたままです。


次に訪れたのは、月面の中でも非常に明るく見える領域で、望遠鏡や肉眼でも確認することができる「アリスタルコス・クレーター」。


アリスタルコス・クレーターは天体の衝突と火山活動による影響を示唆する地形で、多様な鉱物分布が特徴。赤外線センサーによる観測では、オレンジ色の部分に輝石が、そして青色の部分に斜長石が分布していることが判明しています。


LROは、既に人類が訪れたことがある場所にも目を向けています。月に向かって右上の部分にある晴れの海に近づき……


さらに近く寄っていくと、そこにはアポロ17号で着陸船が降り立った「タウルス=リットロウ谷」が存在しています。


さらにズームインすると、3日間にわたって実施された月面車「ルナビークル」の活動範囲が見えるようになりました。


もっとズームインすると……


そこには、探査後に月面に残された着陸船の下半分と、ルナビークルの姿を確認することができます。


ツアーの最後の目的地は、月の北極部分です。月の自転軸は太陽に対してほぼ90度であるため、月の南極と北極では太陽光が限りなく水平方向からしか当たりません。そのため、くぼ地には南極にあるような「永久影」の領域が生まれますが、一方ではクレーターの頂上などの標高が高い部分には、ほぼ絶え間なく光が当たり続ける領域が出現します。


LOLAによる詳細な地形観測から、コンピューターを使った地形のモデリングが可能になっています。そのデータを使ったシミュレーションで常に太陽光が当たり続ける部分を見つけることで、将来の月面活動の際に電力を作り出す「太陽光発電所」をこの極地域に建設するというプランも考案されています。


人類による月の探索は、まだまだ始まったばかりの段階です。今後もLROを使った調査、そして実際に人類が月面に降り立って長時間滞在することで、さらに多くのデータが集められることになりそうです。


◆おまけ
アポロ11号による月面着陸を、最初のロケット発射から最後の地球帰還までをVR体験できるコンテンツ「Apollo 11 VR」がリリースされています。

Apollo 11 VR | Immersive VR Education
http://immersivevreducation.com/apollo-11-vr/

VRならではの没入感と、実際のアポロ司令船などの設計データをそのまま使ったという作り込みの高さにより、過去のどんな宇宙系コンテンツよりも濃い体験ができる内容になっています。特に、月を周回する着陸船が徐々に高度を落として着陸フェーズに入るシーンでは、「月ってこんなに大きかったのかよ……」と、思わずため息が出ることうけあい。

Apollo 11 | PSVR | PS4 - YouTube


Apollo 11 VRは、Oculus RiftやHTC VIVEなどでプレイできるSteam版と、プレイステーションVRでプレイできるPSVR版がリリースされています。記事作成時点ではSteam版が1080円、PSVR版が1400円と比較的お手頃な値段なので、月のスケール感を体験してみたい人にオススメです。

【PSVR】月面着陸をVRで体験する『アポロ11号』 | Mogura VR - 国内外のVR/AR/MR最新情報
http://www.moguravr.com/apollo-11-psvr-2/

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
人類は月にどのぐらいの量の「ゴミ」を残してきたのか? - GIGAZINE

中国の無人月探査機が月面に着陸成功して撮影した写真が公開される - GIGAZINE

NASAが「月」に水があることを確認、新聞やテレビでは未公開の各種データをネット上で一挙に公開 - GIGAZINE

月の地震はマグニチュード5レベルがなんと10分間も続く - GIGAZINE

「月」以外に地球の周りを回っている知られざる天体とは? - GIGAZINE

月から帰還する宇宙飛行士も旅行者と同じく「税関」を通る - GIGAZINE

NASAいわく、2020年までに「人類は月面に戻る」 - GIGAZINE

木星の縞模様の大気の下には「9つのサイクロンが密集」など地球の想像を絶する世界が存在することが判明 - GIGAZINE

in サイエンス,   動画, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.