サイエンス

8万5000年前のホモ・サピエンスの指の骨がサウジアラビアで発見される


我々ホモ・サピエンスの起源はアフリカにあるといわれていますが、新しくサウジアラビアで約8万5000年前のホモ・サピエンスの指の骨が発見されました。これにより、8万5000年前には太古の人類がアフリカから飛び出し、アラビア半島にまで進出していたことが明らかになっています。

Homo sapiens in Arabia by 85,000 years ago | Nature Ecology & Evolution
https://www.nature.com/articles/s41559-018-0518-2

Rare 85,000-year-old Finger Bone Complicates Our Understanding of African Migration | Science | Smithsonian
https://www.smithsonianmag.com/science-nature/rare-85000-year-old-finger-bone-could-complicate-our-understanding-african-migration-180968720/

これまで何年もの間、考古学者のヒュー・グローカット氏と研究チームはサウジアラビアの砂漠で発掘作業を行ってきました。2014年にはウスタ行政区で骨の化石の発掘を始め、それから2年で800本以上の動物の骨の化石と、400本近い石の人工物を発見したそうです。そして、その中で発掘チームは「ホモ・サピエンスの中指の骨」と思われるものを発見しており、これが多くの考古学者たちから注目を集めています。

発見されたのは解剖学的に現代の人間と同じような構造をした指の骨ですが、これは少なくとも8万5000年以上前のものだそうです。グローカット氏は、「これは奇妙なことです。ほとんどすべての骨は残っていないし、化石として残っていた骨に特別なものは何もないので、指の骨が化石として残っていることは本当に幸運なことでした」と語っています。


新しく発見された8万5000年前の指の骨が発見されたのはアメリカのケンタッキー州ほどもあるネフド砂漠でのことであり、「骨が残っていたこと」に「広大な土地で小さな骨を掘り当てたこと」という幸運が重なって、今回の発見へとつながりました。

そして、なぜこの8万5000年前の指の骨が多くの考古学者たちの注目を集めているのかというと、この化石はアフリカ以外の地域で見つかったホモ・サピエンスの骨としては最古のものとなるからだそうです。記者会見で研究の共同執筆者である考古学者のミカエル・ペトラグリア氏は、「この指の骨は過去数年間に発見された骨と同じもので、ホモ・サピエンスが過去10万年ほどの間にアフリカから何度も移動していることを示します」と語ります。


ホモ・サピエンスの起源としては「アフリカ単一起源説」と「多地域進化説」の2つの仮説が長年対立していましたが、現在はアフリカ単一起源説が主流となっています。このアフリカ単一起源説をベースにすると疑問として浮かび上がってくるのが、「ホモ・サピエンスがアフリカをどのように去ったか?」ということ。過去10年間、何人かの遺伝学者たちはアフリカから遠い場所で発見された骨から、約6万年前にアフリカからホモ・サピエンスの一部が移動したという仮説を提唱していました。

ただし、これまでにもホモ・サピエンスの骨と思われるものがアフリカ以外の土地で発見されており、2018年1月にはイスラエルで2002年に見つかった化石がホモ・サピエンスのものであることが発表されています。

アフリカ以外で最古の現生人類の化石 従来説変えるか - BBCニュース


さらに、新しくサウジアラビアで発見されたホモ・サピエンスの指の骨が、太古のホモ・サピエンスたちがレバントを超えてアラビア半島にまで移動し続けてきたことを示唆しています。

研究チームは発見された指の骨が何年前のものかを調べるため、年代測定法のひとつである「ウラン系列年代測定法」を試しています。これは放射性炭素年代測定のように、化石の中に保存された物質の放射性崩壊を調べるというもの。また、骨の周りの堆積物の年代は、光刺激ルミネッセンスを使って調べられています。

それでも疑問はまだ残っています。例えば、およそ10万年前の砂漠でホモ・サピエンスたちはどのように生き残ってきたのかという点などです。ひとつの可能性としてあげられるのは、「当時のネフド砂漠は砂漠ではなかった」というもの。ネフド砂漠は現在では一面が砂と岩の砂漠と化していますが、当時は夏のモンスーンのおかげで湖と川で覆われたサバンナだった可能性があります。今回発見された8万5000年前のホモ・サピエンスの指の骨と一緒に、牛などの野生動物の骨も大量に発掘されたことが何よりの証拠と言えます。


「ホモ・サピエンスが中近東からアラビア、東アジアまで移動していったことは降雨の助けを受けてのものであったことは明らかだろう」と、スミソニアン研究所の古生物学者であるリック・ポッツ氏。アラビア半島に位置するサウジアラビアでホモ・サピエンスの指が発見されたことは、当時のアラビア半島が人類が生息するのに適した緑溢れた土地であったことを示しているとしています。

グローカット氏は、この発見により人間の進化に関してはこれまであまり注意を払われなかった地域でも、より多くの研究が行われるようになることを期待しています。

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in サイエンス, Posted by logu_ii

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