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Steamの2017年ゲーム売上は前年比22%増しの4600億円、一方でインディーゲームメーカーにとっては楽ではない一年に


本来は非公表であるはずのSteamの売上数や売上高といったデータを独自の手法で収集するサイト「Steam Spy」が2017年のSteamの動向を分析して公開しています。それによると、2017年のゲーム売上高は43億ドル(約4600億円)に達して昨年比で22%も成長し、ユーザー数が飛躍的に増加したとのこと。しかしその一方で、1人あたりが購入するゲームタイトルの数は減少しており、実際にヒットするゲームとそうでないゲームの格差が広がる傾向にあるとみられています。

Steam in 2017 – Steam Spy
https://galyonk.in/steam-in-2017-129c0e6be260

Steam SpyのSergey Galyonkin氏は公開したブログの中で、データは2018年2月時点で収集したものであるために鮮度がやや低いことを前置き。また、データはあくまでユーザーとゲーム提供側の動向を追うことで売上を類推しているために、実際の売上高ではないことを事前に断っています。ただし、このSteam Spyによる分析は非常に精度が高いとされており、過去にはあるゲームの「100万本突破」というニュースを先にSteam Spyが報じてからゲームベンダーがそれを認めるという出来事もあったほどなので、一定の信頼は置けるといえます。

そんなSteam Spyが分析した2017年の売上高は43億ドル(約4600億円)で、前年の35億ドル(約3800億円)から20%増加しています。


ユーザー数は過去最高を記録しており、2017年末時点のプレーヤー数は2億9100万人。そのうち6300万人は2017年に新たに加入した新規ユーザーで、売上高の推移とほぼ同じ22%の伸びを示しているとのこと。


2003年からのユーザー増加数を年ごとにグラフにするとこんな感じ。2013年から一気に増加数が増えていると同時に、前年比で増加数が減ったことが一度もないことがわかります。


また、ユーザーがサービスを使い続ける「リテンションレート(保持率)」が高いのもSteamの特徴とのこと。データ取得時の最新データでは、直前の2週間のアクティブユーザー数は5700万人で、そのうち2017年に加入した新規ユーザーのアクティブ率は31%に達しているとのこと。


Steam全体におけるリテンションレートの推移をグラフにするとこんな感じ。年を追うごとに減少傾向にはありますが、逆に総ユーザー数が増加しているので、アクティブユーザーの絶対数は増加しています。


一方で、新規ユーザーが購入するゲームの数は少ない傾向にある模様。ユーザー全体が1年に購入するゲーム数の中央値は「2」だったのに対し、新規ユーザーは「1」だったとのこと。特に、中国やフィリピンなどSteam上で成長が著しい市場でこの傾向が強いと分析しています。


購入ゲーム数の中央値を年ごとにグラフにするとこんな感じ。2003年には「15」もあった数値が右肩下がりで減少して「1」に達していることが分かります。


2017年はゲーム数が大きく増加しました。データ取得時点でのタイトル数は2万1406本で、そのうち7696本が2017年にリリースされたもので、その比率はなんと全体の39%。これは、Steamが2017年に導入したゲーム販売申請システム「Steam Direct」によって参入障壁が下がり、多くのインディーゲームがリリースされたことが原因とみて間違いなさそう。


しかし、実際にヒットするゲームが集中するようになっているとのこと。全タイトルの0.5%に相当するトップ100タイトルがSteamの利益の50%を生み出しているという状況となっています。


最もヒットしたタイトルはPLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS(PUBG)で、販売数は約2780万本で6億ドル(約620億円)を売り上げているとみられます。しかも、ここにはアプリ内課金の金額は含まれておらず、実際の売上高はさらに増えるともみられています。


上記の一覧を見ればわかるように、Steamのトップ20に入るために必要な売上高は2200万ドル(約24億円)となっていますが、これは2016年と同じ水準にあるとのこと。つまり、Steamの中でも上位グループの市場はそれほど大きな変動がないことを意味しています。


全体で見ると、セールス数は減少傾向にあるとのこと。Steam全体ではセールス数の中心地は1タイトルにつき9500本ですが、インディーゲームのセールス数に絞ると5000本に減少し、さらに2017年リリースのインディーゲームに限定するとその値は1500本にまで減ってしまいます。


また、単価が下がっているのも近年の傾向とのこと。Steam全体での単価中央値は5.99ドル(約640円)ですが、インディーゲームだと3.99ドル(約430円)、そして2017年リリースのインディーゲームに限定すると2.99ドル(約320円)にまで低下。厳しい現状が浮き彫りになっています。


しかしこれはタイトル数が一気に増加したことも影響していそうです。事実、「トップ20」の所でも述べたとおり、一定のランクに入るために必要な売上高はそれほど変化しておらず、Steam全体のトップ2000に入るために必要な売上高は15万ドル(約1600万円)と、前年比でむしろ低下しているほど。


先述の通り、Steamが導入した「Steam Direct」により特にインディーゲームが爆発的に増えたため、「売れないゲーム」の数も増加している状況があるとのこと。以下のグラフは、Steamユーザーがインディーゲームをプレイした回数を示したものなのですが、インディーゲームの数が2015年の「2149タイトル」から2018年初頭の「1万3624タイトル」へと6倍に増加しているのに対し、インディーゲームのプレイ回数はごく緩やかに増加しただけであることがわかります。つまり、インディーゲームがリリースされるペースと、実際にプレイされる回数の増加ペースには大きな隔たりがあることが浮き彫りになっているというわけです。


月別にリリースされたタイトル数のグラフを見れば、急激な増加傾向にあることがわかります。2013年頃まではほぼ横ばいの月別増加数だったものが、ゲーム開発者支援プログラム「Greenlight」が導入された時点で増加が始まり、「Direct」の導入によりグラフが急上昇しています。


前述のように2017年はタイトル数が急激に増加。2017年リリースのタイトル数「7696本」はSteam全体の39%を占めており、同年9月だけでもリリースされたタイトル数は864本を数えます。Steam Directが導入されたことで、前年同月比の増加率は55%にも上っています。


Steamで販売されたゲームの最高額を価格帯ごとにプロットしたのが以下のグラフ。9.99ドル(約1100円)にタイトルが集中しており、ここが「最も値段を付けやすいスイートスポット」であるといえます。


しかし、だからといって「9.99ドル」が最も儲かる価格帯というわけではありません。ゲームの販売数を価格帯ごとにプロットすると、29.99ドル(約3200円)の価格帯のゲームが最も多く売れていることがわかります。とはいえ、このグラフは価格がまさに29.99ドルのモンスタータイトル「PUBG」によって大きく影響を受けています。


ということで、PUBGを排除したグラフだとこんな感じで、19.99ドル(約2100円)と59.99ドル(約6400円)が「売れ筋」ということになりました。


2018年2月時点で、Steamを利用しているユーザーの64%が、PCの言語設定で簡体字中国語を設定していることが明らかになっています。一方、英語を設定しているのは18%にとどまっており、今やユーザーの大部分が中国語を使う人によって占められていることがわかります。しかし興味深いのは、Steamは公式には中国国内でのオペレーションが認められておらず、香港で認められているのみという現実です。そのため、今後の中国政府の動向によっては、Steamが大きな影響を受けないとも限りません。


中国国内でのプレイヤー数とゲームタイトルのグラフはこんな感じ。PUBGの登場とともにプレイヤー数は大きく増加しましたが、一人のプレイヤーが購入するタイトル数は変化していないとのことです。


ここまでの数字は、厳密にいうと「Steamがインストールされているマシンの数」をベースに考えたもの。一方、「実際のプレイヤー数」ベースで統計を取ると,全く違った風景が見えてくるとのこと。Steam全体のアクティブプレイヤーのうち、中国人プレイヤーが占める割合は19.5%ということに。これは、前述の「64%」という数字と大きくかけ離れていますが、その理由は「ネットカフェ」の存在にあるとのこと。ネットカフェに置かれた大量のマシンにSteamがインストールされることで、世界の半分を占めるほどの数値をたたき出していたというわけです。また、中国人プレイヤーが所有しているゲーム数で見ると、全世界の5.4%が中国に集まっていることがわかります。


アメリカにおけるプレイヤー数のシェアは、緩やかな減少傾向を見せています。


上記の中国と同じく、アクティブプライヤープレイヤーベースで見てみると、その数値は13.9%と、中国とそれほど大きくは変わらない水準にあることがわかりました。一方、アメリカ人プレイヤーが所有するゲーム本数は、全世界の23.3%にのぼることがわかります。


つまり、平均的なアメリカ人プレイヤーは、中国人プレイヤーの6倍多くゲームを保有していることがわかるというわけです。


しかし、一週間のうちPUBGをプレイする時間は、アメリカ人の「7時間」に比べ、中国人は「16時間」と、ダブルスコア以上で引き離していることも判明しています。


インディーゲームをプレイしている人数(左)で見ると、1位のアメリカに次いで中国とロシアがランクインしています。しかし、これらの地域では特別価格が設定されているために多くインディーゲームが売れているとのことで、実際に購入するのに消費された金額(右)で見ると、8位と9位にまでランクを落とすことがわかります。


◆まとめ
これらのデータから、Galyonkin氏は2017年がSteamにとって非常に良い年になったと結論付けています。一方で、インディーゲームのデベロッパーにとってはゲームの単価が下がったこと、そしてタイトルが氾濫したことで遊ばれにくくなったことで、厳しい一年だったとしています。

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in ネットサービス,   ゲーム, Posted by darkhorse_log

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