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インドの国民総背番号制度「アドハー」は13億人の国民全ての指紋・虹彩・顔の認証を登録するシステムを導入している


インドでは、全ての国民に固有の番号を割り振って特定の個人を識別しやすくする制度「Aadhaar(アドハー)」が導入されています。これは日本の「マイナンバー」と同じような制度であり、行政サービスを受ける際や携帯電話を購入する際、または貧しい人が食糧の配給を受ける際に必要とされることが多くなっているのですが、その登録の際には顔写真や全ての手の指の指紋採取、両眼の虹彩の登録などが必要になっており、個人情報のセキュリティ面で危惧する声も少なからず存在しているようです。

‘Big Brother’ in India Requires Fingerprint Scans for Food, Phones and Finances - The New York Times
https://www.nytimes.com/2018/04/07/technology/india-id-aadhaar.html

アドハーは2010年に登録受付が始まった制度で、2017年7月の時点では13億の人口の90%以上、11億6000万人近くが登録を行ってアドハーの身分証明カードを受け取っているとのこと。日本ではマイナンバー制度導入後もなかなか「マイナンバーカード」の保有率が上がらず、「2019年3月末に8700万枚」という政府の目標に比べて2017年8月末時点の交付枚数は約1230万枚・人口に対する普及率は9.6%と低調で、まだまだ運転免許証などによる本人確認が一般的といえますが、インドではアドハーを用いた個人確認が社会のあらゆるところに普及しています。

日本でも確定申告時にマイナンバーを記入するようになっていますが、インドでも納税申告書の提出など行政サービスを利用する際にアドハー番号が必須となっており、すでに100以上の行政サービスでアドハーは欠かせないものとなっています。また、SIMカードの購入や銀行取引、オンラインでのチケット購入など多くのサービスで番号の提供が必須な状況になってきており、すでにアドハーなしで生活を滞りなく行うことは難しい状況となっています。


国民の登録は義務ではないにも関わらず90%以上という異例の普及率を誇るアドハーですが、登録の際には顔写真の撮影や指紋の採取、さらには両目の虹彩をスキャンして登録する必要があるという点を踏まえて「国民の監視ではないか」と懸念する声も少なからず存在しています。

登録の際には政府機関を訪れ、カメラの前に座って顔写真や虹彩のデータを採取されます。この時、エラーが発生することもあるようで、その場合はもう一度列に並び直すこととなる模様。


また、左右全ての指の指紋を採取されるのもアドハー登録の特徴の一つであるとのこと。


アドハーにまつわる「政府による人民監視」という懸念は、イギリス人作家のジョージ・オーウェルによる小説「1984年」に登場するビッグ・ブラザーになぞらえて表現されています。作中でビッグ・ブラザーはエリートの頂点にいる人物とされ、街中に掲げられた「ビッグ・ブラザーがあなたを見守っている」というキャッチコピーとともに国民監視の象徴としての存在感を示しています。そのモデルになったのは、ソビエト連邦で強大な権力を示して「独裁者」とも表されたヨシフ・スターリンであるとも言われています。

つまり、このビッグ・ブラザーに匹敵するのがインドのアドハーであるという懸念が存在しているというわけです。また、アドハーに関しては登録されている情報が流出し、Googleで検索するだけで大量の個人情報を入手できる状態になっていたことも明らかになっています。

アドハーのシステム構築に携わった起業家のナンダン・ニレカニ氏は、「国中に高速道路を通すようなものです」と述べており、「国家がプラットフォームとしてデジタル公共サービスを構築することで、その周辺に新たなイノベーションを起こすことができます」とアドハー整備の効果について解説しています。

また、「政府による監視が行われる」という指摘に関しては「深読みしすぎ」という見方も示されています。アドハーのシステムには情報を一括で統括する中央組織がないというのがその理由であり、むしろアドハーが導入される前には正式な出生記録をもたず、この世に存在しないことになっている国民が多かった問題を解消に導いているアドハーの存在意義を唱える見方も存在しています。

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in ネットサービス,   セキュリティ, Posted by darkhorse_log

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