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NVIDIAの技術カンファレンス「GTC2018」が開幕、8万基超のCUDAコアで構成される小型スパコン「DGX-2」や自動運転車の仮想シミュレーション技術などを発表


半導体ソリューションメーカー・NVIDIAが開催する技術カンファレンス「GPU Technology Conference 2018」(GTC 2018)が現地時間の2018年3月26日~29日にわたってアメリカ・カリフォルニア州サンノゼ市の「San Jose McEnery Convention Center」で開催されます。自動運転やAI向けの技術が強調された今回のカンファレンスでは、2日目にNVIDIAのジェンスン・フアンCEOが登壇してプレゼンテーションをおこない、8万1920基ものCUDA Coreを搭載して「世界最大のGPU」をうたう小型スーパーコンピュータ「DGX-2」や、自動運転車を仮想世界で何十億kmも走行させて学習させる仮想シミュレータ「DRIVE Constellation」など数々の注目すべき内容を発表しています。

NVIDIA Reinvents the Workstation with Real-Time Ray Tracing | NVIDIA Newsroom
https://nvidianews.nvidia.com/news/nvidia-reinvents-the-workstation-with-real-time-ray-tracing

◆価格4000万円超、8万1920基ものCUDA Coreを搭載する小型スーパーコンピュータ「DGX-2」
GTC 2018でNVIDIAは、サーバー向けに提供されているデータセンターGPU「Tesla V100」のメモリ容量を従来の2倍となる32GBとした「Tesla V100 32GB GPU」を発表しました。そしてこのGPU16基を相互接続させ、秒間2.4TBという帯域幅でつなぐことで1つの「世界最大のGPU」として動作するのが、スーパーコンピュータの新製品「DGX-2」です。

DGX-2
https://www.nvidia.com/en-us/data-center/dgx-2/?ncid=pa-tra-d2lh-34943


DGX-2は16基のTesla V100 32GBをNVLinkベースとなる新開発のスイッチ「NVSwitch」を12基用いてつなぐことで、合計512GBのメモリ容量を確保。そしてファン氏いわく「わずか10kWの消費電力」で2 PFLOPSもの半精度浮動小数点演算性能を実現することが大きな特長であるとのことです。


価格は39万9000ドル(約4200万円)と発表されています。決して手を出しやすい価格ではありませんが、ファン氏はコストパフォーマンスの高さも強調しています。同等の性能をCPUベースで実現しようとすると、そのコストは300万ドル(約3億2000万円)となり、消費電力は180kWに達しますが、DGX-2を使えば15ラックを占める300台のサーバーに匹敵するディープラーニング処理能力を備えつつサイズはその60分の1となり、電力効率は18倍という小スペース・高効率を備えているとのこと。


ファン氏はGTC 2018でDXG-2を発表した際に、「このディープラーニングの驚異的な機能強化は、今後さらに発表される機能のほんの一部でしかありません。これらの機能強化の多くは、またたく間に世界標準となったNVIDIAのディープラーニングプラットフォームに基づいています。当社はムーアの法則を大きく上回るペースでプラットフォームのパフォーマンスを劇的に向上させており、医療、輸送、科学探査、その他の数え切れない分野での変革を後押しするブレークスルーをもたらします」と述べています。

◆仮想環境内で自動運転車が数十億kmを安全に走行可能なシミュレーションシステム「DRIVE Constellation」
自動運転車のテスト用に開発されたフォトリアルなシミュレーションによるクラウドベースの仮想シミュレーションシステム「DRIVE Constellation」は、現実世界と酷似した環境をコンピューター内に再現し、その中を仮想の自動運転車を走行させることで、実物の車両を用いることなく車載AIの学習を進めることを可能にするもの。これにより、開発に用いる自動運転車両を公道上に導入するための、より安全で、より拡張性の高い手法が生み出されるとのことです。

このシステムは、別々のサーバー2基を基盤にしたコンピューティングプラットフォームとなっています。1つめのサーバーは「NVIDIA DRIVE Simソフトウェア」を実行し、カメラやLidar、レーダーなど、自動運転車に搭載される各種センサーをシミュレートします。そして、強力なAI車載コンピューターである「NVIDIA DRIVE Pegasus」を搭載する2つめのサーバーは、自動運転車用のソフトウェアスタック一式を実行して、あたかも実際の道路上を走行する車のセンサーから得たデータであるかのように処理します。


NVIDIAのオートモーティブ事業担当のバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーであるロブ・チョンガー氏はこの技術について、「プロダクションレベルの自動運転車を導入するうえでは、数十億マイル(数十億km)の走行テストと検証を実施して、顧客が必要とする安全性と信頼性を獲得するためのソリューションが求められます。NVIDIAの専門分野であるビジュアル コンピューティングとデータセンターの知見を融合させることで、DRIVE Constellationはそれを達成することができるようになりました。仮想のシミュレーションを使うことで、数十億マイル(数十億km)分のカスタムシナリオと厄介なレアケースについてテストを実施し、アルゴリズムの堅牢性を高めることができます。これらすべてにかかる時間と費用は、実際の道路上で同じだけのテストを実施することを考えれば、ごくわずかに過ぎません」とプレスリリースの中で述べています。

シミュレーション用のサーバーにはNVIDIA製GPUが搭載されており、各GPUがシミュレートされたセンサーデータを生成して、処理用にDRIVE Pegasusに送出します。DRIVE Pegasus からの走行指示はシミュレーターにフィードバックされ、デジタル上のフィードバックループが完成します。この「hardware-in-the-loop」サイクルは、1秒間に30回行われ、「Pegasus上で実行されているアルゴリズムとソフトウェアが、シミュレートされた車両を正しく操作しているか」という検証に使われます。

DRIVE Simソフトウェアはフォトリアルなデータストリームを生成し、莫大な数におよぶ種々のテスト環境を作り出します。このソフトウェアがシミュレートできるのは、たとえば、暴風雨や吹雪などの異常な天候、日中のさまざまな時間帯のまぶしい太陽光、夜間における限定された視界、ありとあらゆるタイプの路面および地形などです。危険な状況はシミュレーション内に記述しておき、人間を危険にさらすことなく、自動運転車が反応する能力をテストできます。


DRIVE Constellationは、2018年第3四半期に早期アクセスパートナー向けに提供される予定となっているとのことです。

◆「リアルタイム・レイトレーシング」を可能にするグラフィックボード「Quadro GV100」
自然環境と同じ仕組みで光りが目に入ってくる様子を再現することで、より現実に近いCGの生成を可能にする技術「レイトレーシング」をリアルタイム演算で行うことを可能にするグラフィックボード「Quadro GV100」も発表されています。NVIDIA RTX 技術を採用し、Volta アーキテクチャをベースにしたQuadro GV100は5120基のCUDAコアと640基のTensor Core、32GBのHMB2メモリを搭載し、倍精度(FP64)で7.4 TFLOPS、単精度(FP32)で14.8 TFLOPS、Tensor性能で118.5TFLOPSの演算能力を備えることで、物理的特性に基づくリアルなグラフィックスの生成を可能にします。


Quadro GV100は、さまざまなAPIを用いることで容易な実装が可能で、「実際の光や物理的特性を用いたリアルなライティング、リフレクション、およびシャドウ」「AIによるレンダリングパフォーマンスの大幅な向上」「NVLinkを使用してメモリを64GBまで拡張可能な拡張性」「没入型VRでコラボレーション、設計、および作成を行うことが可能」などの特徴を備えているとのこと。すでに公式ストアなどで購入が可能となっており、記事作成時点の価格は8999ドル(約95万円)となっています。

Buy Professional Graphics Cards & Workstations | NVIDIA Quadro
https://www.nvidia.com/en-us/design-visualization/quadro-store/


NVIDIA のプロフェッショナル ビジュアライゼーション事業担当バイスプレジデントであるボブ・ぺティー氏は、「NVIDIA は、Volta アーキテクチャ向けに最適化されたレイトレーシング技術を採用し、これを高性能なハードウェアと組み合わせることで、ワークステーションの変革を実現しました。専門家および設計者は、これまで不可能だった方法で作成物をシミュレートしたり、操作したりすることができます。これによって、さまざまな業界のワークフローが根本から変わることになるでしょう」と述べています。

◆半導体メーカーARMとの提携、最新開発環境「TensorRT4」をGoogleのTensorFlow 1.7へ統合なども
カンファレンスではまた、NVIDIAがSoftBank傘下の半導体メーカー「ARM」と提携し、世界市場に投入される何十億台ものモバイルデバイス、家電製品、モノのインターネット(IoT)デバイスに対するディープラーニング推論を提供していくことが発表されています。

今回の提携では、NVIDIAとARMがオープンソースのNVIDIAディープラーニングアクセラレーターアーキテクチャをARMの「Project Trillium」プラットフォームに組み込み、機械学習を実現します。この協業により、IoTチップ企業が容易にAIを自社の設計に組み込み、インテリジェントで低コストな製品を世界中の何十億人もの消費者の手に届けることを可能にすることが目指されています。

さらに、ディープラーニング推論の能力をハイパースケールデータセンターに拡大すると同時に、ディープラーニングを活用したサービスの提供コストを大幅に低減する、一連の新しいテクノロジとパートナーシップも発表されています。同時に、新しいバージョンのTensorRT推論ソフトウェアと、世界で広く使われているGoogleの「TensorFlowフレームワーク」へのTensorRTの統合が発表されています。これについてNVIDIAのバイスプレジデント兼アクセラレーテッドコンピューティング担当ゼネラルマネージャーであるイアン・バック氏は、「実働するディープラーニング推論向けにGPUアクセラレーションを利用すると、大規模なニューラルネットワークでもリアルタイムかつ最低のコストで稼働させることができます。私たちは、より多くのインテリジェントなアプリケーションやフレームワークに対するサポートを迅速に拡大させたことにより、ディープラーニングの品質を向上させ、3000万台のハイパースケールサーバーのコスト削減に貢献できるようになりました」と述べています。

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in ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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