生き物

犬と触れ合う「ドッグセラピー」にはストレスを下げ幸福を感じさせ学習効果を高めるなど多様な効用がある


アメリカで起きた銃乱射事件によって心に傷を負った生徒を癒すため「therapy dog(セラピードッグ)」と呼ばれる犬を使った治療法(ドッグセラピー)が脚光を浴びています。数ある動物の中でも、人間に寄り添って精神的な支えとなる犬の効果に注目が集まっています。

Therapy dogs can help reduce student stress, anxiety and improve school attendance
https://theconversation.com/therapy-dogs-can-help-reduce-student-stress-anxiety-and-improve-school-attendance-93073

科学や学芸に関する情報サイトのThe Conversationが、ドッグセラピーの効果についてさまざまな研究成果を引用する形で解説しています。ドッグセラピーは動物と触れ合うことで精神的な健康を増進させるための手法である「アニマルセラピー」の一種です。数あるアニマルセラピーの中でも、ドッグセラピーによる多様な効用が研究から明らかになってきています。

ドッグセラピーの効用を考えるときには、まず初めに盲導犬や聴導犬などに代表される「補助犬」とセラピードッグとの違いを理解することが大切だとのこと。補助犬は特定のオーナーだけのために尽くす犬であり、聴覚、視覚、運動能力などに障害を持つ人の能力を補うのが最も重要な役割です。これに対してセラピードッグは飼い主の指示の下で、人々やその環境に反応することが求められます。つまり、関わる人間は一人とは限らず、何か物理的なサポートをするというわけではなく、主に精神的なサポートをすることが大切な役目です。


ドッグセラピーによる人間と犬との結びつきによって、ストレスが減少することが分かっています。ビエナ大学の研究によると、セラピードッグの存在によって患者のストレスが減少し幸福を感じやすくなることが分かりました。実験では犬と関わり合いを持つことでストレスに関係する「コルチゾール」レベルが低くなることや、幸福感につながるホルモンの「オキシトシン」を誘発する反応が起こるのが確認されました。オキシトシンによって人に対する信頼感が増すという研究も現れており、他人を信じられなくなった人の治療にドッグセラピーが有効なことが裏付けられています。

ドッグセラピーによって得られる効果には、対人関係の作り方などの社会性に関するスキルアップがあるとする研究(PDFファイル)もあります。セラピードッグと触れ合うことで、互いに信頼関係を築くことが、他人との関係性構築の良いトレーニングになるというわけです。

以上のような、失われた精神的な健康を回復するという効果に加えて、ドッグセラピーには学生の学習意欲を高めるという効果があることが分かり始めています。セント・トーマス大学の研究(PDFファイル)では、ドッグセラピーを導入することで子どもの学校への登校率を高めることに成功したり、ジェームズ・クック大学の研究(PDFファイル)では読み書きスキルの向上という学習効果を発揮したり、セント・ジョン・フィッシャー大学の研究(PDFファイル)では学習意欲が高まったりすることが分かっています。また、セラピードッグから信頼と無条件の愛情をもらうという経験をすることで、クラスメートや教師との信頼関係が強化されることも分かっています。中には、大学の授業でドッグセラピーを取り入れた研究もあり、ストレスや不安が減り学生の大学生活にプラスの効果を与えたことが報告されています。


以上の通り、ドッグセラピーには精神的に健康な状態を回復したり、学習に最適な環境を作り出したりという効果があることが確認されていますが、衛生面やケガへのリスクに対する懸念から、なかなか理解が進んでいないのが現状だとのこと。また、セラピードッグの提供が飼い主の善意に頼る面が多いことも原因に挙げられています。しかし、安全面への心配は飼い主と犬を慎重に選び、厳格な衛生検査を導入することで解消できるとThe Conversationは述べています。今後、ますますドッグセラピーに関する研究成果が増えることで、社会の理解が進み、セラピードッグが増加して、さらなる成果の報告が増えるという好循環が訪れる可能性もありそうです。

・おまけ
2018年2月にフロリダ州バークランドの高校で起きた銃乱射事件を受けて、ドナルド・トランプ大統領は「教師が銃で防戦すれば、乱射事件はたちまち終わる」と述べました

この発言に対して、「英語教師である私のボーイフレンドは、犬のBanjoを教室に連れていっているわ。銃を持つ教師ではなく、コーギーを連れる教師を増やしましょう」というソフィー・ヴァーシュボウさんのツイートが30万件近い「いいね」を集めています。

My friend’s boyfriend is an AP English teacher in Austin. He brings his dog Banjo to school every day. Less teachers with guns, more teachers with corgis. pic.twitter.com/BZdYUZjK8o

— Sophie Vershbow (@svershbow)

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in サイエンス,   生き物, Posted by darkhorse_log

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