Googleはペンタゴンが開発するドローン用の映像解析AIを極秘で手伝っている

by Jon Russell

Googleがアメリカ国防総省、通称ペンタゴンと提携してドローンが撮影した映像を解析するための人工知能(AI)の開発を支援している、と海外テクノロジーメディアのGizmodoが報じています。

Google Is Helping the Pentagon Build AI for Drones
https://gizmodo.com/google-is-helping-the-pentagon-build-ai-for-drones-1823464533

Google helps Pentagon analyze military drone footage—employees “outraged” | Ars Technica
https://arstechnica.com/gadgets/2018/03/google-helping-the-pentagon-sift-through-millions-of-hours-of-drone-footage/

ペンタゴンが進めるドローンが撮影した映像の中に映る物体を認識するためのプロジェクト、通称「Project Maven」が、Googleの協力を得ていることはこれまでひた隠しにされてきました。しかし、2018年3月に入って初めてプロジェクトに関する情報がGoogle社内のメーリングリストで共有されるようになり、匿名の社員が情報をGizmodoにリークすることでその関係が明らかになっています。Google社員の中にはドローン技術の進歩のためとはいえ、Googleがペンタゴンに開発リソースを提供することに怒りを覚えている人もいるそうです。

元GoogleCEOでAlphabet顧問のエリック・シュミット氏は2017年秋に、ハイテク企業がペンタゴンと提携することについて、「軍事産業団体が何らかの形で、不適当に、人々を殺すことに技術を使うかも知れないという懸念がある」と語っていました。なお、GoogleはProject Mavenにおいて「戦闘用途」には一切関与していないとしているのですが、多くの社員がペンタゴンへの技術提供に不安を感じているとのことです。

by Zachi Evenor

Project Mavenは「AWCFT(Algorithmic Warfare Cross-Functional Team)」とも呼ばれており、2017年4月に始動したプロジェクトです。ペンタゴンの持つ大規模データと機械学習の統合を加速させることを目的として、軍が集める何百万時間ものムービーを適切に処理するため始動しました。

ペンタゴンが管理するドローンからは、人間の分析官による処理では追いつかないほどの大量の映像が送られてきます。そのため、機械学習を用いて自動で映像を分析させることができるようになれば、「これまで以上にドローンが撮影した映像から有益な情報を得られるようになるはず」というのがペンタゴン側の考えです。そして、世界最大規模のムービー共有サービスであるYouTubeを運営してきたGoogleは、おそらく世界有数の映像分析におけるノウハウを持つ企業であるため、ペンタゴンは技術提供を依頼したと考えられます。

by Intel Free Press

なお、初期段階のProject Mavenではイラク・シリアといったイスラム国家との戦いにおいて必要な情報を検出するために技術が利用されていたとのこと。そして、現在ではProject Mavenによるドローン用AIを用いることで、軍に「各地を行き来して個人を追跡することができる能力」を提供しているとGizmodoは主張しています。

海外メディアのArs TechnicaがGoogleにコメントを求めたところ、「我々は長い間、政府機関と協力し、技術ソリューションを提供してきました。国防総省の試験的なプロジェクトには、未分類のデータに対するオブジェクトの認識を支援するオープンソースのTensorFlow APIを提供しました」と、協力を認める旨の回答があったそうです。

加えて、Googleは「この技術は人間があとで映像を見直すために便利なフラグを立てるものであり、非攻撃的な用途のみを対象としたものです。機械学習の軍事的利用が懸念を生むのは当然のことです。我々は機械学習技術の開発と使用に関するポリシーおよびセーフガードを引き続き開発予定で、その中で重要なトピックを社内外で積極的に議論していくつもりです」とコメントしています。