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「ひも理論」は宇宙の真理を解き明かす最高の理論なのか?


宇宙に関する話題になると、しばしば「ひも理論」という言葉を耳にしますが、その実体がどういうものなのかはあまり知られていないもの。そんな「ひも理論」について説明したムービーが、YouTubeで公開されています。

String Theory Explained – What is The True Nature of Reality?


宇宙の真理を知りたいがために、古くから人間はありとあらゆる理論を考えてきました。


人類は長い歴史の中でいろんな理論を考えて検証し、「この理論は正しいようだ」「この理論は間違っている」という取捨選択を行ってきました。しかし、正しいとされる理論ほど難解で複雑なものになってしまいがち。


「ひも理論」も多くの学者から支持されているものの、非常に複雑で誤解されやすい理論です。では、どのようにして「ひも理論」は生み出されたのでしょうか。


自然科学の研究者たちは、物事の本質を見極めるため、虫眼鏡や顕微鏡で非常にミクロな世界をのぞき込みました。


すると、世界には肉眼では見えないほど小さな生き物や、規則正しい分子構造でできていることがわかり……


ついに分子を構成する「原子」の存在にたどり着きました。多くの人は「原子こそがもっとも小さい世界の構成単位だ」と思ったのですが、なんと原子と原子をぶつけ合うことにより、もっと小さな構成単位の存在が明らかになったのです。


それが「素粒子」。しかし、素粒子を研究する上で問題なのが、「素粒子はあまりにも小さすぎるため、いくら精巧な顕微鏡を使っても見えない」ということ。


私たちがものを見る時、「光」が必要になります。光は波となって物体にぶつかって反射し……


目を通って網膜に像を投影し、脳にイメージとして感知されます。光が物体に当たって反射し、人の目に入るというプロセスなしでは、人はものを見ることができないのです。


ほとんどの物質は光を反射することができるのですが、素粒子はあまりにも小さすぎるため、普通の光では素粒子に反射されずに素通りしてしまいます。


これを避けるためには光の波を圧縮した強力な光線を照射するしかないのですが、強力な光を素粒子に当ててしまうと、光の力によって素粒子を変化させてしまいます。つまり、原理的には私たちに素粒子を観測することは不可能なのです。


この原則は「ハイゼンベルクの不確定性原理」として、量子物理学の基礎になっています。


そこで、素粒子のような「存在することは知っているが観測できない」対象を科学するために、人類は「数学的な仮説」を立てるというアプローチを用いてきました。


素粒子の振る舞いを扱う上で使われた仮説が「場の量子論」です。素粒子は空間上の一つの点であるとするこのモデルは多くの問題を解決し、量子物理学の標準モデルは場の量子論の上に成り立っています。


粒子は実際のところ空間上の点ではないのですが、そのように考えることで宇宙についての問題がいくつか解決可能であり、学問が大きく前進しました。


ナノスケールの化学技術に利用される量子溶媒やガンの陽子線治療、リニアモーターカーなどの現実世界に役立つ技術の開発にも、「素粒子は空間上の点である」という現実ではない仮説が役立てられています。


しかし、場の量子論だけで素粒子を考えると、「重力」という大きな問題が立ち塞がります。


量子力学では素粒子がさまざまな力を物体に及ぼすのですが……


アインシュタイン一般相対性理論によれば、重力は宇宙に存在する重力以外の力と全くの別物。


素粒子が俳優だとするなら、重力はステージだといえます。


重力は絶対精度で記述する必要がある幾何学的な存在なのですが、量子力学の世界では絶対的な精度で重力を観測することが不可能。重力はそのままの状態だと、量子物理学の世界では扱えない存在というわけです。


素粒子を含む量子物理学の世界に重力の概念を持ち込むと、全ての考えが崩壊してしまいます。


しかし、重力と量子物理学の標準モデルを結びつけることができれば、宇宙の謎を解明する大きな手助けになることは間違いありません。そこで世界中の科学者が頭をひねり、「点に代わる新たな素粒子の仮説はないだろうか?」と新たなモデルを模索しました。


そこで、「点よりもさらに複雑な情報を記述できるのは、『ひも』ではないか?」と考えた学者が現れました。


そして誕生したのが、素粒子をひもとして扱う「ひも理論」です。


ひも理論を使用すれば、複数の素粒子を振動が異なる複数のひもの状態として区別することが可能。それぞれの素粒子が個別の振動を持っているとすれば、重力を含む全ての力を説明できるのです。


「『ひも理論』により宇宙に存在する全ての力が統一的に説明できる!」として、ひも理論は大きくもてはやされました。


しかし、残念ながらひも理論には欠点が存在します。


私たちが住む宇宙は、3次元か3次元に1つ次元を足した4次元によって動作していますが……


ひも理論を説明するためには、なんと10次元が必要。


そのため、ひも理論を考える科学者たちは、現実には存在しない10次元におけるモデル上で理論を構築しています。


ひも理論を10次元の世界から私たちの現実世界に存在する4次元にまで持ち込もうとする努力は行われてきたものの、記事作成時点では誰一人として成功していません。


科学は仮説とそれを実証する実験の繰り返しによって発展してきましたが、ひも理論は決して実験などで正しいかどうか証明できるものではないため、「実験で証明できない単なる仮説に何の価値があるのか?」と思われがちなのも事実。


しかし、物理学は数学によって成り立っており、少なくとも数学のフィールドではひも理論が有効に動作することを考えると、一定のレベルではひも理論が有用だと思われます。


例えば、巨大なクルーズ船を建設したい人が小さな小舟の設計図を持っていたとしても、小舟の設計図からそのままクルーズ船を作り出すことはできません。


エンジンや材料、構造が全く違うからです。


しかし、これも見方を変えれば「水に浮く」という非常に基本的な点では、クルーズ船も小舟も共通。


同様に、ひも理論は量子物理学者たちが最終的に解明したい大きな問題の解決には、直接的に役立つわけではないかもしれませんが、少なくとも重力に関するいくつかの問題に答えることが可能。


何十年にもわたって科学者たちを悩ませてきたブラックホールにおける情報のパラドックスの問題など、ひも理論は難しい問題の解決に役立っているのです。


ひも理論は全ての真理を解き明かす万能理論でこそありませんが、量子物理学者たちにとって非常に便利なツールとして使うことができます。


理論レベルでしか存在しないひも理論ですが、上手に活用することによって最終的に宇宙の謎を解き明かし、全ての真理が解明される日が到来する可能性もあるわけです。

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in サイエンス,   動画, Posted by log1h_ik

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