メモ

働かなくても生活に必要な最低限のお金がもらえる「ベーシックインカム」を導入したオンタリオの住民たちは何を感じているのか?

by Sharon McCutcheon

政府が国民に対して生活に必要な最低限の資金を定期的に提供する、という社会保障制度が「ベーシックインカム」です。過去にはフィンランドでベーシックインカムの大規模試験が行われ、その結果、参加者のストレスや職探しのモチベーションに驚くべき変化が起こっていることが明らかになっていました。ベーシックインカムの試験導入が行われている土地はフィンランドだけでなく、カナダのオンタリオ州でも現在進行形で実施中とのことで、ここでも驚くべき成果が見られるそうです。

Inside Ontario’s Big, Bold Basic Income Experiment
https://www.fastcompany.com/40532513/inside-ontarios-big-bold-basic-income-experiment

オンタリオ州でベーシックインカムの試験導入プログラムに参加しているアラナ・バルツァーさんは、最近冬用の新しいコートを買ったそうです。そして、最近はジャンクフードの代わりに野菜や果物といった健康的なものを食べているとのこと。また、ベーシックインカムのおかげでお金について心を悩ませる心配がなくなったため、うつ病の症状なども少なくなったことを打ち明けています。そんなバルツァーさんは現在大学に通いながら仕事を探しています。

バルツァーさんにベーシックインカムを得てからの日々について尋ねたところ、「私は貧しい家庭で育ちましたが、そこから脱出することについてはあまり考えてきませんでした。しかし、ベーシックインカムは私に機会を与えてくれたし、これを浪費したいとは思いません」という答えが返ってきています。

バルツァーさんが暮らすオンタリオ州ハミルトンではベーシックインカムの試験導入プログラムが実施中で、約4000人の住人が毎月一定の金額を支給されています。バルツァーさんは28歳で体に障害を持っているため、これまでは障がい者向けの手当として毎月722カナダドル(約6万円)を受け取っていたそうですが、ベーシックインカムの試験がスタートしてからは毎月1915カナダドル(約16万円)が支給されています。これについてバルツァーさんは、「生活が一変した」と語っています。

by Sharon McCutcheon

ベーシックインカムの試験導入プログラムは、現在カナダのオンタリオ州ハミルトン、サンダーベイ、リンジーという3つのエリアで行われています。バルツァーさんのような無職の独身受給者は、年間で1万6989カナダドル(約140万円)を受け取ることとなり、夫婦の場合は年間で2万4027カナダドル(約200万円)が受け取れます。仕事に就いている場合、毎月200カナダドル(約1万7000円)以上を稼いでいる場合は支給額が50%減額されることとなります。なお、この支給額はカナダの年収中央値のちょうど半分だそうです。

オンタリオ州で行われているベーシックインカムの試験導入プログラムに参加した別の被験者に話を聞いてもプログラムが望ましい成果をあげていることがわかります。参加者たちはこれまでよりも多くの資金を手にしただけでなく、これまでよりも社会援助制度を受けるための手続きなどにかかる時間を短縮することができます。

被験者のひとりであるデイブ・チェルケフスキーさんは、「ハミルトンは寛大なコミュニティですが、平均水準の生活を送るには多くの時間を使う必要があります。しかし、ベーシックインカムのおかげで個人的な自由時間を得られるようになり、コミュニティへの恩返しについて考える時間ができました」とコメント。チェルケフスキーさんは例えとして、貧困層向けに食べ物を支給しているフードバンクの待機列に並ばなくてよくなったことをあげています。

チェルケフスキーさんは2002年までは地元の通信会社で12年間働いていたそうです。しかし、10代の頃から精神障害を患っており、手当として毎月1078カナダドル(約9万円)を受け取っていました。これに加えてベーシックインカムとして毎月750カナダドル(約6万3000円)を受給可能となったため、チェルケフスキーさんは年間2万3000ドル(約250万円)を得られるようになっています。このお金でチェルケフスキーさんは心理学について学んでおり、将来的にはメンタルヘルス関連の事業を展開することを夢見ていると語ります。また、チェルケフスキーさんは自分のように日々の生活に苦しんでいる人を手助けする仕事をしたいとも述べました。

チェルケフスキーさんやバルツァーさんによるとベーシックインカムの試験導入プログラムに参加するのはとても簡単で、収入などの基本情報を書類に記入し、約45分ほどかかる調査アンケートに記入し、銀行の口座情報などを記入し、プログラムの同意書に署名して提出するだけです。これは他の社会扶助制度などよりもよほど簡単かつ明瞭だそうです。

by Ben Rosett

ベーシックインカムの試験導入プログラムでは総額5000万カナダドル(約42億円)が支給されます。試験を通して研究者たちは被験者を追跡調査し、ベーシックインカムがどのような影響を及ぼすのかを調べます。また、試験では3つの地域ごとに異なる影響があるかどうかも調べられることとなるそうです。プロジェクトに参加する研究者のひとりであるクワミ・マッケンジーさんは、「ベーシックインカムが人生を軌道に乗せて働く能力を高めるか?健康を改善して保険サービスの利用頻度を減らすか?メンタルヘルス改善につながるか?などを、被験者の他のデータと結び付けて調べていきます」と語っています。他にも、試験導入時にはプログラムの管理にどれくらいの費用がかかるかを調べる必要があるそうです。

・関連記事
働かなくても最低限のお金がもらえる「ベーシックインカム」構想が実現すると何が起きるか現実の都市でテスト - GIGAZINE

働かなくても毎月30万円もらえる所得保障制度導入の是非を決める国民投票がスイスで行われることに - GIGAZINE

「仕事の有無に関係なく政府は住民にベーシックインカムを与えるべき」とリチャード・ブランソンが語る - GIGAZINE

ベーシックインカムの大規模実験を始めたYコンビネータのサム・アルトマンがベーシックインカムを語る - GIGAZINE

働かなくてもお金がもらえる「ベーシックインカム」を導入すると何が起こるのかをアニメでわかりやすく解説 - GIGAZINE

in メモ, Posted by logu_ii