トロントのゲイ・コミュニティーを震撼させた連続殺人事件はなぜ止められなかったのか?

by Anton Lindström

毎年100万人を超える参加者を集めるプライド・パレード(ゲイ・パレード)が開催され、LGBT先進地域として知られるトロントにあるゲイコミュニティーで、「数年間にわたりゲイの男性を狙った連続殺人事件が発生していた」と、BBCニュースが報じています。

The mystery of Toronto's gay village killings - BBC News
http://www.bbc.com/news/world-us-canada-42980512

トロントのチャーチストリートとウェルスリーストリートの交差地点にあるゲイ・コミュニティーは、1960年代からLGBTが集まる街として知られていました。そのゲイ・コミュニティーにおいて、ここ数年の間「シリアルキラーがゲイ・コミュニティーを標的に連続殺人を行っている」といううわさが流れていたとのこと。しかし、実際に被害者が確認されていなかったことから、警察はうわさの真偽を確認するために動こうとはしませんでした。

2017年の6月、ゲイ・コミュニティーに所属していたアンドリュー・キンズマン氏が失踪し、Facebook上でキンズマン氏の情報を求める投稿が拡散されました。これを受けてようやく警察は、「トロントのゲイ・コミュニティーを狙うシリアルキラー」のうわさを改めて確認したそうです。警察は捜査チームを設立し、本当に連続殺人犯の被害者に該当する失踪者が存在するのかや、加害者に該当する不審人物の有無についての調査を開始。しかし、数カ月間にわたって進展はありませんでした。

事件が解決に動いたのは2018年に入ってからでした。ゲイ・コミュニティーに出入りし、よく知られた人物でもあったブルース・マッカーサー容疑者の自宅にある花壇から、合計6人の遺体が発見されたのです。1月18日に警察はマッカーサー容疑者を逮捕し、取り調べを進めているとのこと。

by thestar.com

マッカーサー容疑者は1990年代後半からゲイ・コミュニティーに現れるようになり、コミュニティー内のバー「ジッパーズ」の常連だったそうです。ジッパーズのオーナーであるハリー氏はBBCのインタビューに対し、「マッカーサーは白いあごひげを生やし、お腹は少し出ていて、みんなから『サンタ』という愛称で呼ばれていました」と述べています。実際に近所のショッピングモールで、クリスマスセール期間中にサンタのコスプレをして働くこともあったとのこと。

しかし、2003年にマッカーサー容疑者が金属パイプで男性を殴って重傷を負わせるという事件を起こしており、ゲイ・コミュニティーへの立ち入りや男娼の利用、さらに性的興奮を引き起こす薬物の使用を禁じられているということは周囲の人々に知られていませんでした。マッカーサー氏は2003年の事件で執行猶予判決を受けた後も、出会い系サイトを通じてゲイの男性と出会っていたとのこと。事件発覚の発端となったキンズマン氏とも、出会い系サイトを通じて出会ったようです。

花壇からは6人の遺体が発見されていますが、2018年2月18日時点でマッカーサー容疑者が自白しているのは5人の殺害だそうです。そのうち白人男性はキンズマン氏のみで、他の被害者は中東やアジアからの移民だったとのこと。また、被害者の中にはトロントなどに妻や子どもを持っている人物もいましたが、いずれも家族に対してゲイ・コミュニティーに通っている事を隠していたそうです。そのため、家族が失踪届を提出したにもかかわらず、警察はゲイ・コミュニティーと失踪者たちを結びつけられませんでした。被害者には男娼のホームレスもいたとのことですが、彼は失踪届を出されていなかったとのこと。

by Toronto Police Service Homicide Squad

マッカーサー容疑者が殺害を認めた被害者以外にも、ゲイ・コミュニティーでは複数人の失踪者がいるそうです。「ゲイ・コミュニティーを狙うシリアルキラー」のうわさの発端となったナバラタム氏はスリランカからの移民であり、ジッパーズの常連でもありましたが、2010年に失踪。ナバラタム氏の友人は「彼はアパートに子犬を残していったが、責任感のあるナバラタム氏は自らの意思で失踪するなら、子犬も連れて行くはずだ」と主張。マッカーサー容疑者の手にかかったのではないかと疑っています。

南アジアエイズ予防同盟(ASAAP)の常任理事であるハラン・ヴィジャヤナタン氏は、「なぜ移民の人々が失踪しても警察は動かなかったのに、白人男性であるキンズマン氏が失踪した途端に捜査を開始したのか」と疑問を呈しており、第三者機関に調査を依頼したとのこと。「警察がもっと早い段階で動いていれば、犠牲者の数を減らせた可能性がある」とヴィジャヤナタン氏は述べています。

by Aude Lising

ゲイ・コミュニティーにおける連続殺人事件の発覚が遅れた背景には、トロント警察とLGBTコミュニティーの関係がよくないという事実もあるとのこと。2016年にはトロント警察が「同性愛者たちが集まる場所」として知られている公園に集まった、数十人の同性愛者を逮捕するという出来事も発生しています。また、ゲイ・コミュニティー周辺の一般住民にとってもゲイ・コミュニティーは隔てられた印象があり、失踪者が多発していてもそれを知らないなど、身近な出来事として捉えられていなかったという事情もあります。

今回の連続殺人が数年間にわたり継続され、長年容疑者の逮捕にも至らなかった理由には、被害者の多くが移民であったことや、ゲイ・コミュニティーと周辺地域・警察の関係などの問題が複雑に絡み合っていたようです。

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