メモ

「マリファナ」という呼び名は人種差別的で廃止すべきなのか?

by Michael Fischer

アメリカで合法化が進む大麻は「マリファナ」とも呼ばれますが、マリファナという呼び名は人種差別と関係しており、使用を避けるべきだという主張が存在します。

Marijuana: is it time to stop using a word with racist roots? | Society | The Guardian
https://www.theguardian.com/society/2018/jan/29/marijuana-name-cannabis-racism

乾燥させた麻の葉には「大麻」「ガンジャ」「ハッパ」「リーファー」などさまざまな呼び名がありますが、最も広く使われている名は「マリファナ」です。アメリカでは1840年に医薬調合品として大麻の使用が可能になり、禁酒法時代には酒の代わりとして振る舞われることもありましたが、治安悪化などの問題と相まって1937年に連邦法によって非合法化されました。


当時、官僚だったHarry Anslinger氏は、大麻の非合法化に尽力した人物。Anslinger氏は「アメリカには約10万人のマリファナ喫煙者がおり、その大部分はニグロやヒスパニック、フィリピン人、そして芸能人です。彼らが作る悪魔のようなジャズやスウィングはマリファナ使用の結果なのです。マリファナは白人女性たちに、ニグロたちと性的関係を持つ方法を求めさせるものです」というような発言を繰り返していました。そのため、今日の大麻産業では「cannabis(カンナビス)」と「marijuana(マリファナ)」という言葉はどちらも使われていますが、言葉に慎重になるべき場面ではネガティブな歴史を持たない「カンナビス」という言葉が使われる傾向にあります。過去の経緯から「マリファナ」という言葉が人種差別の意味合いを持つと考えられるためです。

カリフォルニアで大麻を扱う最も古い薬局「Harborside」は、ウェブサイトで「『マリファナ』という呼び名は、『カンナビスは危険であり、人を酔わせる依存性のあるもの』という発想とつながっており、薬草由来の薬ということを示すものではありません。この汚名がアメリカにおけるカンナビス合法化を妨害しているのです」と記しています。

そもそも、マリファナという呼び名はメキシコからやってきました。その起源は明確ではありませんが、 Martin Booth氏の「Cannabis: A History」によると、アステカの言語で「brothel(魔窟・売春宿)」を示す「Maria y Juana」から来ているという一説があるとのこと。マリファナは19世紀後半から20世紀初頭にかけてアメリカ南部に入ってきて、労働者や軍人たちの手によって喫煙の習慣を広めていきました。ブラジルからの船はジャズの発祥地であるニューオリンズに到着するため、黒人のジャズミュージシャンたちはいち早くマリファナの習慣を受け入れていったようです。

by Nathan Bingle

近年、アメリカでは大麻を合法化する州が増加しており、大麻産業は100億ドル(1兆円)規模に成長しています。しかし、企業が大麻の育成に大金をつぎ込んでも、個人か所持できるのは取るに足らない一定量のみだという点が依然として大きな壁として存在します。大麻が合法化されることで大麻関連の犯罪が減るのかと思いきや、コロラドで大麻が合法化してから、少年少女が規定量以上に大麻を所持していたとして逮捕される件数が増加したとのこと。そして、現代においても大麻関連の逮捕は、マイノリティと大きく関わっています。

2016年、アメリカでは60万人もの人が大麻に関連する罪で逮捕されていますが、暴力犯罪に関わるもの以上に、少量の所持で逮捕されるケースが多く発生しました。そして、特に人種的マイノリティがその影響を受けやすいことが判明しています。統計的には人種が異なっても大麻を使用する割合は同じと示されていますが、人種的マイノリティはより刑罰に処される確率が高く、アメリカ自由人権協会によると2001年から2010年にかけてアフリカ系アメリカ人が大麻所持で逮捕される確率は白人の4倍近くに上ったそうです。そして、逮捕された60万人のうち実際に刑務所に入る人は少数でも、その後、逮捕されたという事実は家を建てたり学生ローンを借りる障害になってしまいます。

州やコミュニティの中には少量のカンナビス所持で有罪判決を受けた場合に、記録を消せるようにしようとする動きもあります。また、複数の市が、麻薬戦争の影響を受けて事業を行うのが難しくなった起業家をサポートする、いわゆる「公正プログラム」を作ろうとしています。しかし、マリファナという名の持つ人種差別の過去と向き合い、呼び名を変えることで関連性を断ち切ろうとする動きは、あまり起こりません。

by Thought Catalog

しかし、合法とされる医療用の大麻産業が「カンナビス」とう名を使い、一方でマイノリティが「マリファナ」で逮捕されていることから、「マリファナ」という呼び名をやめることで状況を変えようというのが、この主張の考え方。「ばかばかしい」と論じられることもありますが、ピンク・トライアングルNワードなど人種差別に関連して用いられたものは、いずれも現在はコミュニティを抑圧した象徴として見なされています。大麻にまつわるマイノリティの状況を変えるためには、「マリファナ」という言葉を使わないようにするか、あるいは人種差別の過去を表す重要なものとして考えていかなければならないという主張なわけです。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
アメリカで合法化が進む大麻は「第二のクラフトビール」になるかもしれない - GIGAZINE

マリファナは周期性おう吐症を引き起こす可能性がある - GIGAZINE

ある神経外科医がマリファナに対する否定的な考えを改めた理由 - GIGAZINE

マリファナや野菜を自宅で簡単に育てられる全自動栽培ボックス「Leaf」 - GIGAZINE

あのMicrosoftが大麻ビジネスに参入 - GIGAZINE

in メモ, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.