過去40年で動物の半分以上が消えた

By bass_nroll

世界自然保護基金(WWF)」が行った発表によると、野生の陸上や海中、河川に生息する動物の個体数が約40年前と比べて半数以上減っています。その主な原因は、人々がエネルギーや食卓に並ぶ食糧などを用意する「文明的な暮らし」を行うための自然環境への開発や森林伐採であり、今後の生活の在り方を人々に問う状況となっています。

LIVING PLANET REPORT 2016 The future of the planet is in our hands. WWF’s Living Planet Report 2016 shows the scale of the challenge – and what we can do about it. (c) Bjorn Holland / Getty
http://wwf.panda.org/about_our_earth/all_publications/lpr_2016/index.cfm

Earth has lost half of its wildlife in the past 40 years, says WWF | Environment | The Guardian
https://www.theguardian.com/environment/2014/sep/29/earth-lost-50-wildlife-in-40-years-wwf

WWFの「Living Planet Report:生きている地球レポート」によると、約40年前の1970年代に比べ、野生動物の数が半分以上の58パーセントが減少したことが示されています。理由は人々の「消費行動」のため自然破壊の犠牲として、動物の生息域への「汚染」と「破壊」が原因とのこと。

1970年から2012年までにそれぞれの生息域の動物の個体数は、魚類などの海に生息している動物は36パーセント減少し、ゾウなどの陸上に生息している生物は38パーセント減、そして河川などの淡水環境に生息している生物が81パーセントと、最も大きく減少しています。また、鳥類のいくつかの種における劇的な個体数の減少も報告されています。

WWF淡水環境担当チーフアドバイザーのDave Tickner氏によると「河川は自然のシステムの大黒柱」です。河川は、陸上で起こった汚れを最後に引き取り、せき止める、そして水害を抑える役割がある」とのこと。また世界には主に4万5000基ものダムがあり、これらは河川を細かくわけるので河川の水流を妨げます。また、世界には高さが15メートル以上の大きさのダムが約4万5000基あります。Ticker氏によるとこれらのダムは「河川を細かく分断してしまうために、きれいな水の流れが損なわれてしまう」とのこと。さらに、世界人口は50年前に比べ4倍になりましたが、水の消費量は7倍となっている状況があり、これらが合わさることで「人類と河川の生物は水不足に陥るだろう」とTickner氏は述べています。

By Michael Coghlan

WWFのレポートには、動物の個体数の減少傾向を生物の増減数の尺度が測る指数「生きている地球指数」(LPI)で示されており、3430種類もの動物の個体数が減少傾向にあるとのこと。WWFの調査によるとその1番の原因は「人間による開発」で、その他の主な原因は以下の通りとなっています。LPIは、世界各地の陸域、川や湖などの淡水域、海洋に生息する3000種以上の野生生物の1万以上の個体群を調査し、個体数がどれくらい減少したかを基に計算したもので、1992年に締結された「生物の多様性に関する国際条約」にも採用されている指数です。

37パーセント:「Exploitation(開発)」
31パーセント:「Habitat degradation/change(生息環境の悪化/変化)」
13パーセント:「Habitat loss(生息地の消失)」
11パーセント:「Other(その他)」
7パーセント:「Climate change(気候変動)」


WWFの自然科学者であるKen Norris教授は、「もし、来週にイギリスのロンドンにある動物園の動物たちの半数が死んでいたら大ニュースになるでしょう。しかし、それが自然界にいる動物の半数でおきています」とコメント。

By Andrew Nicholson

Norris教授は「自然は、人間に食べ物ときれいな水、そして空気をもたらすには不可欠なもの」とし、動物たちが住む自然環境の悪化は、動物生活だけでなく私たちの生活にも影響があるとしています。野生生物などの「動物の個体数の減少」は、山や海や遠い国の話ではなく私たちが行っている電気や水道、スーパーで食糧が買えるなど便利な「文明的な暮らし」と密接な関係があります。WWFの科学政策局局長Mike Barratt氏によると、人間の食べ物とエネルギーの安定的な持続を可能にするには、森林伐採と開発から地球を保護する必要があり、また「この自然の犠牲は、人々が選んだ結果であり、そして避けられるものです」とのこと。

By Matt

またこのレポートでは、人間が将来的に文明的な活動を行う際にどのくらいの天然資源が必要のなのかも算出されています。この算出には、人間活動が環境に与える負荷を示す指数「Ecological Footprint」(EF)指数が用いられています。現在の天然資源の消費ペースを保ったままで、人類全体が将来にわたって生活を維持するのに必要な天然資源を算出すると、人類全体で地球1個と半分の量にのぼる「天然資源が必要」とのこと。また、人類全体がイギリス様式の生活を維持するには地球2個と半分の天然資源が、そして人類全体がアメリカ様式の生活をするのには、なんと地球が4個分もの天然資源が必要と算出されています。

By Greg Vierra

国家別の自然環境の保護への取り組みに関しては、先進国など裕福な国家は自然保護活動で自然環境が少々改善しています。対して開発途上国など貧しい国家は動物の個体数の大きな減少がみられました。しかし、豊かな国家の企業などによる貧しい国家での自然破壊「自然破壊のアウトソーシング」が行われているという現状があります。これは豊かな国家の企業が貧しい国家におもむき、その国家の動物が住む生息域を開発して食糧を生産をし、それを自国家に輸入するものです。例えば、貧しい国家で1990年から2008年までに自然破壊をともなって生み出された材木や牛肉、大豆などの商品の3分の1は、EUに輸出されました。

By CIAT

しかし、かすかな希望があるようです。イギリスで毛皮のために乱獲され、絶滅の危機に陥っていた動物のカワウソは、環境保護活動により、危機を回避し奇跡的にイギリスの川に戻り生息し始めているとのこと。同じように、ネパールで減少していた野生のトラ個体数も環境整備の成果により増加傾向であり、2013年の政府調査によると3年間で3倍以上に増えた地域もあったとのことです。同じようにネパールで減少していた野生のトラ個体数も環境整備にの成果にドイツでは、野生のオオカミが数を増やしているという報告があります。

By Skinnyde

野生のオオカミがドイツで数を増やしていると報告される - GIGAZINE


イギリスWWF最高経営責任者David Nussbaum氏はこのレポートについて、「ここで示された指数の数々は、人々が自然の危機について目を覚ますための警告になって欲しい」とコメント。また、「政治家や経済界そして私たち全員が、自然と人間の双方に健全で価値のある未来を守るための行動に関心と責任を持つべきです」とのことです。

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in サイエンス, Posted by log1f_yi