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億万長者からの圧力でニュース記事や文書を葬られないよう保存する「Archive-It」とは?

By University of Exeter

プロレスラーのハルク・ホーガン氏に訴えられた訴訟により、ゴシップサイト「Gawker」は1億4000万ドル(約150億円)もの賠償命令を受けた結果、運営元のGawker Mediaが破産法の適用を申請しました。この背景には、PayPal共同創業者のピーター・ティール氏が自身に対して不利な報道をしたGawkerに報復をかねて、ハルク・ホーガン氏を支援していたという事実があったことが、本人の証言からも明らかになっています。アメリカのNPO「Freedom of the Press Foundation(報道の自由財団)」は、こういった億万長者からの圧力に危機感を覚え、インターネットアーカイブと共同で「Archive-It」という記事のアーカイブサービスを立ち上げたとのことです。

Archiving the alternative press threatened by wealthy buyers
https://freedom.press/news/archiving-alternative-press-threatened-wealthy-buyers/

「Archive-It」は、組織が作成したオンラインコンテンツを保存することを目的としています。特に「億万長者からの報復」に対して、財政面で脆弱なオンラインのニュースサイトに焦点を当てており、ニュース記事や発言などを取り下げたり、変更を加える前にサイト全体を保存することを目指しているとのことです。「Archive-It」は、指定されたウェブサイトのスナップショットを特定の時点で取得することで、取得した内容と以降の内容を比較して、変更を加えられたり、削除された内容を比較することができます。

例えば「Gawker」の場合、ティール氏などの敵対的な人物によって買収されれば、ニュース記事が改変されたり削除されたりする可能性が高いと予想できますが、「Archive-It」の存在はその行為自体の意味をなくすことになり、結果、コンテンツの保護につながるというわけです。


「Archive-It」のクロール対象となると、アーカイブが集められるだけでなく、「インターネットアーカイブ」のアーカイブ閲覧サービスである「Wayback Machine」にも連携されます。 オンラインで入手できないコンテンツを探している研究者などにとって、すでに存在しない資料を閲覧できることは、とても重要なことです。

このため、報道機関だけでなく、カリフォルニア大学ロサンゼルス校では ウォールストリート占拠運動に関連するサイトや文書のアーカイブ、2014年に起きたウクライナ内戦のニュース元となるウェブサイトのスナップショットを保持しているとのこと。

By Sasha Maksymenko

また、「Archive-It」のおかげで隠されていた記事が発見されることもあります。「LA Weekly」では、新しいオーナーに関する情報は従業員にも秘密にされていましたが、「Archive-It」に保存されていました。これは元従業員の1人が「『LA Weekly』のオーナーは誰か?」という記事を一時的に掲載していたことが原因だったようです。

この元従業員によると、「Archive-It」がクロールするようになって以降、記事が再掲載されていることを確認しているようで、記事の内容が、クロールする以前に本人が書いたものと同じかどうか検証中とのこと。

By Keith Allison

「報道の自由財団」によると、「Archive-It」により過去の記事やコンテンツの保護は可能となっても、「億万長者からの報復」に対する根本的な問題の解決にはならないとのことで、将来書かれるはずだった記事やコンテンツが消えてしまうリスクは残ります。つまり、ニュースサイトの意図的な買収などにより、億万長者が本来受けなければならない責任を回避できてしまう行為そのものは、健全な社会を築くための障害にしかならないということです。

このため、金銭的な攻撃に対応する術をほとんど持っていないメディアをどのように保護していくか、考えていく必要があると結んでいます。

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