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いまなお研究され続ける「スーパーマリオブラザーズ」のステージ4-2最速攻略の知られざる歴史とは?


スーパーマリオブラザーズ」は、ファミリーコンピュータ(海外ではNES)専用ソフトとして1985年に発売されたアクションゲームです。そしてゲームのクリアタイムを競う「スピードラン」というジャンルにおいても今なお研究が重ねられているゲームでもあります。特に「スーパーマリオブラザーズ」の4-2は、一気に最終面にワープできるために「スピードラン」では特に重要になるステージで、長年重ねられてきた4-2攻略研究の歴史を、ゲームのスピードラン攻略ムービーをアップしているSummoning Saltさんが、以下のムービーにまとめています。

4-2: The History of Super Mario Bros.' Most Infamous Level - YouTube


全8面で構成されている「スーパーマリオブラザーズ」には一気にステージを飛ばせるワープゾーンがいくつか存在し、4-2は一気に最終ワールドの8面までジャンプすることができるため、スピードランでは重要なステージです。地下でスタートしたらまずは足場を超えてまっすぐ進み……


クリボーを踏みながら前へ進みます。


さらにハテナブロックを足場にして、動く床に乗ったら……


高いところにある一番左のブロックをたたきます。するとブロックからワープゾーンにつながるツタが伸びます。


さらに一番右のブロックの下にある隠しブロックを出現させ、それを足場にツタまで向かいます。


ツタを登ると地上への出口に到達します。地上ステージの最後に現れる土管に入るとワープできます。以上が4-2に仕込まれているワープゾーンへの行く手順。


2004年4月にScott Kesslerさんが5分10秒、Trevor Seguinさんが5分7秒というタイムで「スーパーマリオブラザーズ」をクリアしたことから「スーパーマリオブラザーズ」のスピードラン攻略の歴史が始まります。当時のプレイヤーは4-2を「途中のツタを登って、8面へのワープを目指すだけ」と捉えられていて、せいぜいがんばって可能な限り早く進むといった程度の認識しか持っていませんでした。


しかしScottさんが5分10秒でクリアしたムービーを見ると、「隠しブロックを足場にしてツタに到達したら登る」という部分で、プログラムバグのせいなのか、わずかにタイムロスが発生しています。


そこでTrevorさんが5分7秒でクリアしたムービーを確認すると、ツタに向かうまではスムーズにクリアできていました。ゲーム内のタイムカウントは400から減っていくのですが、Trevorさんがツタに到達したのはタイムカウントが376の時です。


さらにTrevorさんが改良を重ねて再度アップロードしたムービーでは、ツタに到達した時点でタイムカウントが377となっていて、わずかにタイムが短縮したことが分かります。ここでようやく4-2の最速手順と目安が確立し、スピードランに挑む人たちも4-2攻略の重要さに気付きます。


そして研究の結果発見されたのが「The Wrong Warp(間違ったワープ)」という方法です。この方法では、ツタのブロックより少し先に行ったところにある、コインボーナスのステージにつながる土管を利用します。


実は「スーパーマリオブラザーズ」では一度に1つまでしかワープ先をロードできません。ツタのブロックに到達すると「出口」がロードされるので、コインボーナスのステージがロードされないようにして土管に入れば、ツタが伸びるアニメーションもカットした上で直接「出口」に到達し、さらなるタイム短縮が期待できます。


これを再現するためには、「出口」がロードされてから土管に入るまで、マリオをデフォルト位置より右側にずらし続けるという裏技が必要だと分かりました。以下の画像のような位置にマリオを持っていけばロードを回避することが可能なので、直接「出口」に向かうことができます。


そのため、プレイヤーの間でどうやってマリオを右にずらせるかという研究が始まりました。最初期に研究された方法は、エミュレーターとツールを用いたTAS(Tool-Assisted Speedrun/Superplay)でのものでした。TASでの攻略はエミュレーターを用いてプログラムによる操作を行うことが多く、実際のゲーム機を使って人間がプレイしても再現は到底不可能となる場合がほとんどでした。


2004年には、マリオがブロックの中にめり込んでしまうのを利用し、20ピクセルも右に近寄るというやり方がTASプレイで発見されていました。しかし人間には不可能な操作だろうとあまり注目はされませんでした。


2004年にMichael Fさんが投稿したTASプレイムービーで、左端から右端にワープしてしまうプログラムのバグを利用したテクニックが公開されました。それまでよりもタイムを2秒も縮められ、さらに人間でも再現可能な方法でしたが、明確なバグを利用したタイム短縮はルール違反と考えられていたため、見向きもされませんでした。


しかし、andrewgさんが2007年4月に「The Backward Bump Method」と呼ばれる方法を編み出しました。


彼は常にマリオの位置を把握できるようにゲームのロムを改造し、研究を重ねました。その結果、後ろ向きのままで段差をギリギリぶつかるように飛び越えると、マリオの位置が7~10ピクセル分だけ右にずれるということが分かりました。これならば実機でも人間の操作で再現が可能です。


さらに研究した結果、マリオを20ピクセル以上右にずらせばいいということが分かりました。つまり3回は段差に衝突するジャンプを行わなければいけないというわけです。やがて4-2攻略研究の方向は「スタートしてから土管に到着するまで、どのタイミングでマリオをずらすのが効率的か」にシフトします。


さらにここで出てくるのが「21フレームの法則」です。実は「スーパーマリオブラザーズ」はそのプログラムの都合上、ゲーム起動後からのフレーム数が21の倍数にならなければ画面が暗転しないという仕様があります。


1フレームとは60分の1秒のことなので、21フレームというのはおよそ0.35秒になります。どれだけ早くプレイしても、決まったタイミングでしか画面が変わらないので、1000分の1秒単位でタイムを競うスピードランではタイムの伸びしろがないのでは、と4-2を含めた攻略をあきらめるプレイヤーが続出しました。


数年ごとに世界記録はじわじわと更新されているものの、もはや4-2の攻略研究はこれ以上進まないように思われていました。しかしandrewgさんはじめ一部のプレイヤーはあきらめずに4-2の攻略研究を続けていました。


そこでandrewgさんが注目した方法が、2011年にWeirwindleさんがTASプレイムービーの中で披露した、ハテナブロックをすり抜けるやり方でした。


ただしこのアクションは右ボタンと左ボタンを同時に押すという実機では不可能な操作を求められるため、Weirwindleさん本人も人間には無理と思っていました。


andrewgさんは研究を重ねて、ハテナブロックをすり抜けるやり方も理論上再現はできるということを発見しますが、あまりにも難度が高いため断念します。


2017年になってandrewgさんが思い出したのが、10年以上前にTASプレイで発見されていた、「スタート直後のブロックを通り抜ける裏技」でした。ハテナブロックを通り抜ける方法も再現可能なのだからダメ元で試してみようとやってみたところ、見事成功します。しかも何度も再現できてしまったため、andrewgさんも「信じられないよ」と言いながらプレイを続けます。


かつて人間には不可能と思われていた操作も、研究を重ねて技術が向上した結果、可能になってしまったというわけです。このブレイクスルーに乗っかるように、他のプレイヤーもクリアタイム記録を更新していきます。


これにて4-2攻略も完成したかとささやかれたのもつかの間、xx_420_brazit_xxというプレイヤーによって新しい4-2攻略法が発見されます。andrewgさんのやり方では最下段のブロックを通り抜けるのが一般的だったのですが、通り抜けるブロックを下から3段目にしたところ、より早く4-2をクリアできることが分かったのです。


これも難度の高い方法でしたが、同じように4-2を研究しているプレイヤーからも再現できたという報告がなされました。


「30年以上前に作られたゲームの4-2という一見すると普通のステージが、14年以上の歳月をかけて多くのプレイヤーによって研究され続けてきましたが、それでも研究が終わることはないでしょう」というSummoning Saltさんの言葉でムービーは終わります。なお、ゲームのクリアタイムを記録するSpeedrun.comによると、記事作成時点で「スーパーマリオブラザーズ」のクリアタイム世界記録はdarbianさんの4分56秒528でした。darbianさんの世界最速クリアプレイは以下のムービーで見ることできます。

(4:56.528) Super Mario Bros. any% speedrun *World Record* - YouTube

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in 動画,   ゲーム, Posted by log1i_yk

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