AIを実現する「ニューラルネットワーク」を自動的に構築することが可能なAIが出現

By Chris Searle

自動運転車や音声認識、画像解析など、ディープラーニングにより実現されるAI(人工知能)は社会を大きく変えるコンピューター技術として大きく注目されています。その要となるのが、人間の脳の仕組みをコンピューター上で再現する「ニューラルネットワーク」で、通常は研究者やエンジニアなどの手によって開発されているのですが、アメリカ合衆国エネルギー省のオークリッジ国立研究所(Oak Ridge National Laboratory：ORNL)はAIがニューラルネットワークを自動的に生成するアルゴリズムの開発に成功しています。

An AI for AI: New Algorithm Poised to Fuel Scientific Discovery | The Official NVIDIA Blog
https://blogs.nvidia.com/blog/2018/01/12/an-ai-for-ai-new-algorithm-poised-to-fuel-scientific-discovery/

ORNLはGPUによって性能アップされたスーパーコンピュータ「Titan」を使ってニューラルネットワークを自動的に生成するアルゴリズムを開発しました。Titanは人間の脳の中にある神経のネットワークをモデリングし、「深層学習(ディープラーニング)を学習する」というプロセスを行うことが可能です。

ここで用いられているのが、「Multi-node Evolutionary Neural Networks for Deep Learning」(ディープラーニングのためのマルチノードな進化的ニューラルネットワーク)の略語から名付けられたMENNDLです。科学者が行うようなデータセットの評価とテストを行い、ニューラルネットワークに対して推奨することが可能なニューラルネットワークで、言うなればコンピューターが自らコンピューターを設計する、というプロセスを担うことができます。TitanではGPUアクセラレーションを使用することで処理の時間を大幅に短縮することに成功しており、ORNLのNature Inspired Machine Learningチームの一員である研究科学者Steven Young氏は「MENNDLは人々の時間を節約し、より早く科学的発見にたどり着くことを可能にします」と語っています。

Titanは1万8688台のNVIDIA製GPUアクセラレータ「Tesla」を搭載しており、MENNDLを同時進行処理によりスケーリングすることで数千にも及ぶネットワークを同時にテスト、そしてトレーニングすることで求められるアウトプットに最も適したものを予測することが可能。既にMENNDLは素粒子や宇宙科学など多くの科学分野において活用されており、結果を出し始めています。

Introducing Titan | The World's #1 Open Science Supercomputer

エネルギー省に属する国立高エネルギー物理学研究所のフェルミ国立加速器研究所では、素粒子の一つであるニュートリノの研究を行っています。自然界ではニュートリノを検出することが非常に困難であるため、研究所では高高度のビームを物体に照射した時の反応をみることで研究を行っています。

この時、各種センサーから得られたデータは膨大な量になり、研究者はこのデータを詳細に調査して現象を把握することが必要になります。かつてはこの作業に数か月の時間を要していたのですが、MENNDLは同じ処理をわずか24時間で完了させることができたとのこと。前出のYoung氏は、「これまでは科学者がディープラーニングのフレームワークと数か月にわたって格闘していたのに対し、MENNDLはたった一日で『使える』ネットワークを作ることができました」と語っています。

By Kathryn Grim

このMENNDLがもたらす恩恵は、膨大な量のデータから有用な情報を見いだすデータマイニングの分野で最も活かされることになる様子。まだまだコンピューター技術・AI技術の進化はとどまるところを知らないようです。