光の99.95%を吸収して真っ黒にしか見えない羽を持つ「スーパーブラックバード」の秘密が明らかに


太陽光など受けた光のほぼ全てを羽根で吸収してしまうことで、周りからは体の大部分が完全に真っ黒に見えてしまうという「スーパーブラックバード」がパプアニューギニアに生息しています。あまりに黒すぎるためにその表面の模様や凹凸はほとんど見ることができず、ぽっかりと黒い空間が存在するようにしか見えないほどという鳥なのですが、どんな仕組みで光を吸収しているのか、そして何のためにそのような「進化」を遂げてきたのかが研究によって明らかにされています。

Structural absorption by barbule microstructures of super black bird of paradise feathers | Nature Communications
https://www.nature.com/articles/s41467-017-02088-w

How Birds of Paradise Produce Super-Black Feathers - The Atlantic
https://www.theatlantic.com/science/archive/2018/01/super-black-is-the-new-black/549869/

この不思議な特徴を持つのは、フウチョウ科に属するおよそ40種類の鳥たちです。「ゴクラクチョウ (極楽鳥)」とも呼ばれるフウチョウは、オスの成鳥が非常に美しい飾り羽を持ち、繁殖期にはその羽をいかした求愛ダンスを行うことでよく知られています。

Bird Of Paradise Courtship Spectacle - Planet Earth - BBC Earth - YouTube


フウチョウ科の仲間でも「スーパーブラックバード」と呼べる種とそうでない種が存在します。下図のaとbは「普通の」黒い羽を持つカラスフウチョウ(a)とクロチメドリ(b)ですが、それ以外のシロジクオナガフウチョウ(c)、シロジクオナガフウチョウ(d)、ウロコフウチョウ(e)、オナガカンザシフウチョウ(f)、カタカケフウチョウ(g)は真っ黒な羽と、それとの対比が見事な美しい色の羽を持っています。


研究を進めてきたハーバード大学の大学院生、ダコタ・マッコイさんによると、フウチョウの仲間の羽が真っ黒に見えるのは、その特殊な構造にあるとのこと。カラスフウチョウの羽(下図a)は、軸の周りに木の枝のように羽枝が生えているのに対し、真っ黒な羽と美しい飾り羽を持つオナガカンザシフウチョウの羽は(b)、羽枝がさらに細かく分岐する非常に複雑な構造になっていることがわかります。この構造が光の反射のしかたを変え、羽に当たった光を吸収してしまうことで、真っ黒な見た目を作りだしているとのこと。素材に金をスパッタコーティングして皮膜を作り、走査顕微鏡(SEM)で観察した写真(cとd)を見ると、カラスフウチョウの羽(c)は光を反射しているのに対し、オナガカンザシフウチョウの羽(d)は真っ黒なままになっています。


光が吸収されて真っ暗になる理由は、複雑に入りくんだ羽毛の隙間で光が反射を繰り返す間に吸収され(a)、再び外部へと飛び出せなくなってしまうため。オナガカンザシフウチョウの場合、その吸収率はなんと99.95%にも達しており、光はほぼ完全に羽の間に吸収されてしまいます。これはつまり表面が「光らない」ことを意味し、人やカメラにはその表面の様子を観察することができません。そのため、その部分は完全に「真っ暗闇」の状態になり、空間の中にブラックホールのような漆黒の部分が浮かんでいるように見えるそうです。


この吸収率を唯一超えているのは、イギリスのSurrey Nanosystemsによって生産されるベンタブラックで、入射光の99.965%を吸収することができます。

黒色を超越した「世界で最も黒い物質」が誕生、コーティングされたものの凹凸は目視では判別不能に - GIGAZINE


ベンタブラックはありとあらゆる光を吸収するので、以下のように赤いレーザー光を照射してもベンタブラックの部分だけは全く反射されないという不思議な状況が生まれます。

Blacker than original Vantablack! - YouTube


ベンタブラックは、セ氏約400度の高温下で「成長」させた小さなカーボンナノチューブの集合体で、光を吸収する仕組みはオナガカンザシフウチョウの羽と同じ原理。つまり、人間が最新のカーボンナノテクノロジーで実現した「真っ黒」とほぼ同じものをオナガカンザシフウチョウは生まれつき備えているというわけです。

フウチョウ科の鳥の仲間がこのような特徴を備えている理由は、「飾り羽」をより美しく見せるためだとのこと。目に見えないほどの漆黒の中に、鮮やかなブルーやイエローの飾り羽を持つことで美しさを際立たせることで、メスを引きつけて自分の子孫を残すために進化してきた結果、あるいはそのような特徴を持つ個体が生き残ってきた結果、このような特殊な構造の羽を持つ鳥がこの世に存在しているというわけです。

・関連記事
黒色を超越した「世界で最も黒い物質」が誕生、コーティングされたものの凹凸は目視では判別不能に - GIGAZINE

チョウの輝く羽は一体どのような構造になっているのか? - GIGAZINE

生物のオスがカラフルなのはメスをひきつけるためだけではない - GIGAZINE

鮮やかなピンク色の体をした蛾 - GIGAZINE

3110

in サイエンス,   生き物, Posted by logx_tm