時間がたっても茶色くならないリンゴが「遺伝子組み換え」表記なしで販売されている


遺伝子を組み換えることで狙った利点を発現させることができる遺伝子組み換え技術は安全性が疑問視されることも多く、2016年7月にはノーベル賞受賞者100人以上が遺伝子組み換え食物に反対するグリーンピースを非難する書簡に署名しています。そんななか、「切った後に時間がたっても茶色く変色しないリンゴ」が遺伝子組み換えによって開発され、パッケージへの「GMO」という表記なしでアメリカの食品店に並び始めています。

Genetically modified apple reaches US stores, but will consumers bite? : Nature News & Comment
http://www.nature.com/news/genetically-modified-apple-reaches-us-stores-but-will-consumers-bite-1.22969

Shhhh. The “Gene Silenced” Apple Is Coming. – Mother Jones
http://www.motherjones.com/food/2018/01/shhhh-the-gene-silenced-apple-is-coming/

カナダを拠点とするオカナガン・スペシャルティ・フルーツは切った後に放置しても変色しない遺伝子組み換えリンゴを開発し、2015年に「遺伝子組み換えリンゴが米国内の農業や他の植物に危険を及ぼすことはなく、規制撤廃によって人間環境に重大な影響が及ぶこともない」とアメリカ合衆国農務省(USDA)から承認を得ました。オカナガンが開発したリンゴには「Arctic Golden」「Arctic Granny」「Arctic Fuji」があり、Arctic Goldenに関しては2017年11月からアメリカ中西部のスーパーなどでの販売が開始されています。

Arctic® apples - Distinctly nonbrowning apples
https://www.arcticapples.com/


変色しないリンゴは遺伝子サイレンシングによって褐色を引き起こすポリフェノールオキシダーゼという酵素の生成を抑えることで作られています。これまで、カットリンゴは変色を防ぐ処理をしてパッキングされていましたが、オカナガンのリンゴなら、あらかじめカットしても変色せず防腐剤なしで提供できるので、風味が損なわれることはなく、子ども向けに安全もアピールできます。

なお、日本でもパック入りリンゴが自動販売機で扱われていますが、変色防止にビタミンC溶液が使われています。

自販機で売っているりんご「アップルスイーツ」がどんな味なのか食べてみました - GIGAZINE


アップルスイーツ|アップルスイーツ|フレッシュリンゴの自動販売機【エム・ヴイ・エム商事株式会社】
http://www.mvm.co.jp/product/apple_sa.html#technology

りんごのプロが目利きをして選別した新鮮なりんごだけを使って作るアップルスイーツは、安心安全。その理由は、ビタミンCの入った溶液が、リンゴが茶色くなる原因であるリンゴポリフェノールの酸化を防ぐため、漂白剤や防腐剤、着色料なども一切不使用だから。すぐに変色してしまうりんごを、いつまでも美味しくパッケージングするための保存技術の開発により、安全でヘルシーなアップルスイーツを実現したのです


また、アメリカ合衆国環境保護庁によると、毎年、世界中で生産された野菜や果物の半分は廃棄されているとのこと。国際連合食糧農業機関の調査から、リンゴの廃棄量は3兆7000億個だということもわかっており、変色しないリンゴはこのような食料廃棄に対してもポジティブな影響を与えるものと見られています。ただし、パッケージが多くなる分、ゴミが増えるのでは?という指摘ももちろんあります。この点についてオカナガンは「プラスチックバッグはリサイクル可能です」と説明していますが、実際にどれほどのゴミがリサイクルされるかは疑問が残るところです。

さらに、オカナガンのリンゴにはパッケージに「遺伝子組み換え」と表記されていないことも議論を呼んでいます。2016年から施行された法律によって企業は製品が遺伝子組み換えされているかいないかを表明する必要があると規定されたのですが、「パッケージに」とは指定されていないためです。オカナガンのウェブサイトには遺伝子組み換えであることが表記されており、また、パッケージのQRコードの読み取り先でも商品の情報についての詳細が明記されていますが、「商品のQRコードを読み取って情報を得る人は少ないはず」と指摘されています。

一方で、アメリカでは消費者のうち57%が「遺伝子組み換え食品は危険」と考えているのに対し、科学者のうちこのような考えを持っている人は11%です。このことから、科学者の中には遺伝子組み換えリンゴが「遺伝子組み換え食品を消費者に慣れさせてくれる」と考えている人もいるとのこと。

リンゴの他にも肉を使わないハンバーガーやゲノム編集技術CRISPRを使った黒ずまないマッシュルームなどが2018年現在開発されていますが、その多くが市場に到達するところまで至っていません。そんな中で遺伝子組み換えリンゴが消費者に浸透すれば、他の多くの製品についての道を開くことになるだろうとペンシルバニア州立大学の植物病理学者であるYinong Yang氏は語りました。

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in サイエンス,   , Posted by logq_fa