セキュリティ

空港での顔認証は法的根拠があいまいだとして批判が噴出


空港から出国する人を顔認証で識別する試みがアメリカの一部の空港で行われており、2018年には同システムを全国規模で展開する予定です。しかし、出国者を顔認証するシステムは議会の承認を得ておらず法的な根拠があいまいであるのに加え、技術的にも問題があるとするという報告書が公開されました。

Face Scans at Airport Departure Gates: An Investigation
https://www.airportfacescans.com/

Homeland Security’s controversial airport face-scanners could be inaccurate or unlawful, report says - The Verge
https://www.theverge.com/2017/12/21/16805266/dhs-face-scanning-biometric-exit-report

Face Scanners Don't Belong in Airports
https://www.forbes.com/sites/matthewfeeney2/2017/12/21/face-scanners-dont-belong-in-airports/

アメリカでは2017年12月現在9つの空港で出国する搭乗者の顔認証を行っています。アメリカ合衆国国土安全保障省(DHS)は試験的に顔認証を導入した理由を「他人のパスポートを使って出国しようとする試みを防ぐため」と説明しており、2018年以降は顔認証システムの導入を他の空港にも広げていく意向です。

これが空港の顔認証システム。


飛行機に搭乗する前にスキャナーの前に立ち、認証を待っている男性。


しかし、ジョージアタウンのCenter on Privacy & Technologyは空港での顔認証について批判する報告を提出。DHSが議会の承認なしに顔認証を導入できるかについては疑問の残るところであり、法的な根拠が不明確だと指摘しました。また、当局がプログラムを作成する際に適切な連邦の手続きを踏んでいない点についても明らかにしました。

また、顔認証技術の正確性は完璧ではなく、人種や性別によって異なるエラー率を示すことがわかっています。過去の研究によると、白人・特に白人男性を誤って拒否する確率と、女性・特に黒人女性を誤って受け入れる確率が高いとのこと。そのため、適切なパスポートを持っている人が搭乗を拒否されることや、逆に偽のパスポートを持っているにも関わらず搭乗が可能になることも考えられます。


この点、報告書はDHSが顔認証導入の効果を正しく測定しているか疑問視されることにも言及。DHSはプログラムによって正しい搭乗者を96%の正確性で認識していると述べていますが、「間違った搭乗者を捕まえることができる確率」については公開されていません。

「正しい搭乗者であっても拒絶される」というリスクを負っているということだけではなく、もちろんプライバシーの観点からも懸念されています。

UPDATE 1-U.S. senators seek to stop expansion of airport facial scans
https://in.reuters.com/article/usa-airports-security/update-1-u-s-senators-seek-to-stop-expansion-of-airport-facial-scans-idINL1N1OL1VF

Sen. Mike Lee seeks to halt face scans at U.S. airports | Deseret News
https://www.deseretnews.com/article/900006156/sen-mike-lee-seeks-to-halt-face-scans-at-us-airports.html

DHSは「顔認証に使用された画像は2週間以上保存されない」と説明していますが、共和党の上院議員マイク・リー氏と民主党の上院議員エドワード・マーキー氏はDHS長官のキルスティン ・ニールセン大統領次席補佐官に対して、プライバシーと法律の問題が解決するまでプログラムを全国規模に拡大すべきでないという書状を送りました。2人の議員は顔認証に使われたデータが第三者や外国の政府に渡るのを防ぐ方法がないということに加え、多くのアメリカ国民が顔認証システムの誤認証によって不便を被ることへの懸念と、そもそも、なぜアメリカ人の出国に際して顔認証が必要なのかという疑問を書状で投げかけたとのことです。

なお、出国の際に顔認証や指紋認証といった技術を導入する動きはオーストラリアでも進んでいます。

顔認証&指紋スキャンをパスポートの代わりにする計画をオーストラリアが推進中 - GIGAZINE

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in セキュリティ, Posted by darkhorse_log

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