働かなくてもお金がもらえる「ベーシックインカム」を導入すると何が起こるのかをアニメでわかりやすく解説

by Alain Pham

ロボットやAIによって近い将来、多くの人が職業を失ったり職の変更を強いられると予想されています。そんな中で各国は「ベーシックインカムの導入を迫られる」とイーロンマスク氏は発言。実際にフィンランドでは2017年1月から大規模実験が行われ、2018年にはアメリカ・カリフォルニア州でもベーシックインカム制度がテスト導入されることとなっています。ベーシックインカム制度が導入されることの問題点や、実際に導入されると何が起こるのか?ということについて、アニメーションムービーで解説されています。

Universal Basic Income Explained – Free Money for Everybody? UBI - YouTube


もし国や地域があなたの生活を保障してくれるとしたら、あなたは働き続けますか?


それとも学校で勉強しなおしますか?


……もしくは働かず、勉強もせずに過ごすでしょうか?


このようなコンセプトはユニバーサルベーシックインカム(UBI)と呼ばれています。


「働かなくてもお金が手に入る」という夢のような構想ですが、2017年現在においてベーシックインカムを導入している地域は実際に複数存在します。


初期の段階で実験的にベーシックインカムを導入した国に続いて、福祉制度と置き換える形でベーシックインカムの導入を検討している国も。


一口にベーシックインカムといってもその形はさまざまで、「ベーシックインカムとはこうあるべき」という内容はまだ議論されている最中です。


「現行の福祉制度の代わりにベーシックインカムを導入する」という案もあれば「現行の福祉制度に加えてベーシックインカムを導入する」という案も。現行制度はそのままに、オプションとしてベーシックインカムを使えるようにすべき、と考える人もいます。


このムービーで語られるのは最低限所得保障としてのベーシックインカム。貧困ラインを超える程度の所得を保障するものです。


アメリカでいうと、これは月1000ドル(約11万円)あるいは年1万2000ドル(約136万円)にあたります。


上記の金額で与えられたベーシックインカムは課税されず、使用目的が限定されず、何に対しても使えます。このようなベーシックインカムの制度は自由市場を維持しつつも富を社会に還元できるものと考えられています。


ベーシックインカムの導入に関しては「人々が働くのをやめ、酒びたりになる人もいるのでは?」という懸念ももちろんあります。


しかし2013年に行われた調査で、「貧しい人々は現金を与えられるとお金やタバコにお金をつぎ込むのでは?」ということが調べられたところ、間逆の事実が明らかになりました。


別の調査では、人は裕福になればなるほど薬物やタバコの消費が多くなることもわかっています。


「貧しい人は怠けものでお酒ばかり飲んでいる」とイメージは現実のものではなく、ただのステレオタイプに過ぎません。


実際に1970年代にカナダでベーシックインカムが実施されたところ、ベーシックインカムの導入で働くことをやめたのは1%にすぎず、しかもその1%の理由は「子どもの世話をするため」というのが大部分でした。


この時、人々の労働時間の縮小は平均して10%以内。余裕ができた時間で人々は学校に通ったり、よりよい仕事を探すことが可能になりました。


人が怠惰になることや薬物の使用は大きな問題となりませんでした。


現行のアメリカの福祉制度や失業者向けのプログラムには多くの制限が存在します。決まったコースに参加しなければいけなかったり……


毎月決まった数の働き口に応募しなければいけなかったり、望んでいない職業を引き受けなければならなかったり。個人の自由が大きく損なわれてしまい、時間のむだを生み出すばかりか、失業者率を上げることに貢献してしまっています。


ベーシックインカムはこのような縛りがないので、ゆっくりと時間をかけて自分に向いた職業を探したり、勉強をしなおしたり、自分で起業することも可能になります。


また、現行の福祉制度の問題に、人を受身にして貧困状態にとどめてしまうという点が存在します。


多くのプログラムは、収入がない人をサポートするものなので、少しでも収入があると……


サポートが受けられなくなります。


また、仕事を得て大きな収入を得ても税金やその他コストがかさんで実際に使えるお金は激減してしまうという結果を引き起こしかねません。


結果として、国からのサポートを受けて働かない人の方が、働いている人よりも多くの収入を得てしまうことも。そのため、より多くの収入を得るために「働かない」という選択肢を選んでしまう人が増えてしまいます。


一方でベーシックインカムがあれば、生活の保障が得られた上でよい仕事を探し、余剰のお金が得られるので、「頑張った分だけ収入がよくなる」仕組みになるわけです。


ただし経済的な面では、インフレが起こり、物価が上がってしまうのでは?という懸念もされています。しかし、ベーシックインカムのお金は「生み出される」のではなく、「一方から他方への資金の流れ」をコントロールするものなので、インフレは起こらないという見方がムービーでは示されています。


では、資金源をどうするのか?というと、国によって裕福さや価値観といった要素が異なるので、それこそ答えは多岐に渡ります。


高い税率を課すことが可能か、国防の費用を削れるか、現行の福祉制度はどれほど充実しているかによって、それぞれの国が別々のプロセスを要するのです。


「既存の福祉制度を全て廃止してベーシックインカムで一本化する」という方法は非常にシンプルで、複数の政府機関が不要になり、多くの官僚に対する給与も削減できます。ただし、この方法では以前よりも困窮した状況に追い込まれる人が多くなる可能性もあり、やはりベーシックインカム以外の福祉が必要になるとのこと。


また、特に収入が多い人々に対して税金を多く課すという方法も考えられます。アメリカでは経済成長の利益を得られているのは最も裕福な数%の人々だと言われています。


経済格差が大きくなりすぎてしまった現在において、社会的な平和のためには、利益をもっと均等に分配すべきだと主張する人も存在します。


お金の移動や土地、二酸化炭素の排出、ロボットに対しても課税が行われる可能性が議論されています。


このようなベーシックインカムは、何も高額な保障を必要とするものではありません。月11万円のベーシックインカムでもGDPを8年で12%も上げることができるという調査結果が発表されています。


貧しい人々がより消費活動を行うようになり、全体としての需要が増すためです。


また、人が嫌がる仕事を自分の意思に反して行っている人も、ベーシックインカムで生活が保障されれば、雇用主に対して給与額や仕事の環境を向上させる交渉が行えるようになります。


ある調査では、アメリカの被雇用者に対して追加で1ドル(約113円)の給与が支払われれば、国内経済には1人あたり1.21ドル(約137円)の経済効果が現れると計算されています。一方で、高収入の人に支払われる1ドルは、国内経済にわずか39セント(44円)しか寄与しないとのこと。


ベーシックインカムが導入しても、裕福な人と貧しい人は存在し続けます。


しかし、多くの人々をとりまく不安や苦しみ、パニックなどは……


貧しい市民の生活をよくすることで解決可能。ベーシックインカムは賢い経済戦略でもあるわけです。


一方で、「最低限の生活保障」にとどまらず、中流家庭並みの生活をベーシックインカムに望む人も存在します。金融的な障害を除外して考えると、このアイデアは「私たちがどのように社会を作るのか」ということへの挑戦でもあります。


お金を稼ぐことによって人は社会に参加するとともに、稼いだ金額によってあなたの社会的地位などが決まります。しかし、お金をたくさん稼ぐために人は多くの時間を興味のないことに費やすことも。


2016年の調査によると、アメリカの被雇用者のうち、仕事に情熱を注いでいる人はおよそ33%で、16%はみじめさを感じていて、残りの51%は「ただ肉体を仕事場に置いているだけ」という状態にあったそうです。


しかし、仕事は私たちに「すべきこと」を与えてくれ、モチベーションを高めて、新しい友人やパートナーと出会い、社会的地位を高めてくれるものでもあります。


多くの人々が仕事によって意味を与えられているのです。この状況がベーシックインカムの導入によってどのように変化するのかは、懸念されている1つの点です。


また、ベーシックインカムで福祉制度を1本化してしまうと、複数の制度が存在している時よりも簡単に資金がカットされてしまうことも懸念されています。さらに、ポピュリストが権力を得るためにベーシックインカムの制度を利用することも考えられます。


そして、ベーシックインカムは全ての状況において平等をもたらすものではないことも覚えておくべき点。地方では1000ドルあれば良い部屋が借りられますが、家賃や物価の高い都会だと1000ドルあっても十分な生活が送れないこともあります。


そのため、裕福な人々だけが都会に残って貧しい人々は地方に行くことになり、貧富の差が拡大することも考えられています。


もちろん「仕事は生き残るために必要なことではない」というコンセプト自体を脅威に感じる人もいるはず。


ベーシックインカムというアイデアが優れているかどうかは、2017年現在においてまだ結論が出ておらず、調査や大規模な実験を必要とするところ。そして、どのような形のベーシックインカムが必要なのか、そのために何を切り詰めるべきなのかも考えていく必要があります。ただし、その潜在的可能性は非常に大きく、貧困を撲滅し、人々がよりよい生活を送れるようになることも考えられるとのことです。

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