ネオジム磁石の力でHDDに復元できなくなるほどのダメージを与えることは可能か?

by Patrick Lindenberg

削除したはずのデータを復元できるフリーソフトやサービスなどはさまざまあり、中にはわずか3クリックで削除したファイルを復元できるものも存在します。そんなソフトウェアでも復元不可能なレベルに完璧にファイルを削除すべく、ネオジム磁石を使った実験を行ったユーザーがその詳細を記しています。

Hard Drive Destruction
https://www.kjmagnetics.com/blog.asp?p=hard-drive-destruction


永久磁石の中でも特に強力なネオジム磁石は、クレジットカードに近づけると磁気不良の原因になり、VHSのデータにもダメージを与えます。「それほどの力があれば、VHSと同じく磁気メディアであるHDD内のデータを破損させることも可能ではないか?」という疑問を、ネオジム磁石を販売する「K&J Magnetics」が実験を行って解決してくれました。

K&J Magneticsでは、ネオジム磁石がHDD内のデータにどのように影響を与えるのかをリアルタイムに調べるために、CDブート可能なOSのDamn Small Linuxを使うことでHDDに影響があっても問題がない環境を用意。

そして、IBM製のHDD(30GB 7200RPM IDE)の中に、「K&J Magnetics is your source for the world's strongest magnets.」と1000回繰り返し書かれたテキストファイルを何千個も保存し、HDD自体をネオジム磁石で挟み込むことで、テキストファイルがどれだけ破損するかを調べました。

検証時は以下のようにHDDの両面にネオジム磁石が貼り付けられました。実験ではさまざまなサイズのネオジム磁石を使用し、HDDを稼働させた状態でネオジム磁石をHDDの回転ヘッドの上端付近に近づけています。


実験の結果は意外なもので、ネオジム磁石を使ってもHDD内のデータを破損させることは一切できなかったとのこと。以下の画像はHDDの両面にネオジム磁石をくっつけた際のイメージ画像で、HDD内のどこに最も強い磁場が形成されるのかを示しています。K&J Magneticsは「内側が遮蔽されていたとしても、最も外側のディスクには何らかの影響を及ぼすはず」と予測し、HDDのプラッタは毎分7200回転の勢いでネオジム磁石の下を通過したはずですが、エラーを起こすことはありませんでした。


ただし、RY04Y0DIAのような強力な磁石をくっつけると、内部のプラッタが傾くことで生じたと考えられる機械的な摩擦音がしていたとのこと。しかし、K&J Magneticsの目的はHDDを物理的に破壊することではなかったため、磁石を動かしてHDDを積極的に破壊するようなことはしなかったそうです。

VHSやクレジットカードなどの古いタイプの磁気記録媒体はネオジム磁石で破壊することができますが、これらの持つ保磁力は磁石が作る磁場よりも低く、大体500~1000エルステッド(Oe)程度とのこと。それに対して、HDDの保磁力は1250Oeから2500Oeと高いそうで、最新のものになればなるほど高い保磁力を持っているそうです。

HDDのデータ消去サービスなどは、強力な消磁装置を用いたり、物理的にHDDを破壊することでデータを消去しているとのこと。そして、HDDの保磁力が高まるにつれて、HDDを物理的に破壊することが一般的な方法になりつつあるそうです。

機密情報満載のHDDを復元できないようにドリルや研磨機で徹底的に破壊するムービー - GIGAZINE


K&J Magneticsは磁石を用いたあらゆる組み合わせを試したわけではないものの、ネオジム磁石を用いてもファイルの中の1文字すら変更できなかったそうで、「ネオジム磁石を用いればすべてのデータを消去できる」という考えは間違いであるという結論に行き着いたそうです。

これらの結果から、まだ動作可能なHDDを破棄する場合は、ランダムデータを複数回書き込むHDD内データ消去ソフトウェアの使用が推奨されています。推奨されているのは、「Darik's Boot and Nuke」「Eraser」「KillDisk」の3つ。また、HDDが動作しない場合はこれらのソフトウェアを実行することができないため、HDDを物理的に破壊するのが一番の方法であるとされています。

なお、今回の調査は「ネオジム磁石でHDD内のデータを完全に消去できるかどうか」について調べたものであり、それは叶わなかったものの、ネオジム磁石がHDDの側にあればHDDがダメージを受けることは間違いないので、「HDDからネオジム磁石は離して置いておくべき」とK&J Magneticsは注意喚起しています。

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in ハードウェア, Posted by logu_ii