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将来起こり得る「宇宙戦争」に備えて国際的な法整備が進む

By US Air Force

人工衛星などによる宇宙開発が活発に進められる現代において、宇宙を舞台に武力衝突が起こる可能性はかつてないほど高まっているといわれています。ひとたび宇宙で大規模な戦争が始まると、地上に住む生き物や地球の環境にどのような悪影響が起こるか誰も正確に予測することはできません。そのような事態を防ぐために、宇宙の軍事利用についての法整備を進める国際的な取り組みが進められています。

We're drafting a legal guide to war in space. Hopefully we'll never need to use it
https://theconversation.com/were-drafting-a-legal-guide-to-war-in-space-hopefully-well-never-need-to-use-it-86677

オーストラリア・アデレード大学の法律学教授であるデール・スティーブンス氏と、宇宙における法律と軍事行為の専門家で博士課程にあるダンカン・ブレイク氏らは、オーストラリアやカナダ、アメリカ、ロシア、中国にいる専門家と共同で、宇宙空間における軍事行為に関する最も有効な法の適用方針に関するガイドを作成するためのプロジェクトを推進しています。

このプロジェクトは数年の時間を要するもので、その目的は宇宙での緊張状態および明確な戦争行為が生じた際に適用されるマニュアル「MILAMOS」(Manual on International Law Applicable to Military Uses of Outer Space)を作り上げることにあります。さらに、最終的に目指す究極の目標は、宇宙戦争行為を防止して、今後発達するであろう宇宙旅行分野に関わる当事者間で、高い透明性のある信頼関係を構築する手助けになることとしています。

By Sascha Pohflepp

現代社会は、人工衛星によってもたらされる機能に大きく依存するようになっています。たとえば、GPS衛星によって実現する位置捕捉機能は、スマートフォンやカーナビなどの身近なGPS機能をはじめ、通信、経済、農業、旅行など様々な分野で応用されています。GPSやそれに準ずる機能への依存度は高く、西洋ではGDP(国内総生産)の6~7%がGPS機能の存在によってもたらされているという試算も行われています。

また、通信衛星も現代の社会には欠かせないものとなっています。全地球を結ぶ通信網の一端を担っているほか、大都市から大きく離れた辺境の地では、通信衛星なしでは外との通信手段が確保できないというケースも。さらに、現在では光ファイバー網などによって支えられている高速インターネット通信も、近い将来には人工衛星ベースの仕組みへと移り変わっていくという見方も示されているとのこと。


さらに、気象衛星は天気予報を可能にするほか、生産性の高い農業の実現や、疫病発生の検知、鉱物資源の発見、地球環境の変動の把握など、地球にいるだけではかなえられない質の高い情報を入手することを可能にしています。これらの機能は、全て宇宙空間の平和が保たれていることが前提にあるという、実は微妙で脆いバランスのうえに成り立っているということができます。

宇宙空間の活用は、もちろん軍事分野でも活発に進められてきました。1991年に始まった湾岸戦争は「初の宇宙戦争」と呼ばれることもあるのですが、これは実際に宇宙空間で戦闘が行われたということではなく、人工衛星を活用した諜報活動や情報伝達、作戦遂行などが初めて本格的に行われた戦争だったことを意味しています。2017年6月には、アメリカ合衆国空軍長官のヘザー・ウィルソン氏は、「私たちは、あらゆる形で戦争が宇宙空間へ広がることを予期しなければなりません。そして、そのことについての物の見方をあらため、備える手だてを進めなければなりません」とコメントし、アメリカ軍が宇宙空間の軍事力で優位性を持つことの重要性を説いています。

By Ste Oni

これまでにも、宇宙空間における軍事力に関してはいくつかの合意がなされてきた経緯があるとのこと。その主なものとしては5つの合意があり、その中でも最も重要とされるのが、1967年の「月その他の天体を含む宇宙空間の探査および利用における国家の活動を律する原則に関する条約」、通称「宇宙条約」と呼ばれる合意です。これは、宇宙空間は平和目的にのみ利用するとの義務を課し、かつ宇宙空間における核兵器の設置と実験を禁止するという内容の条約で、その第4条では「平和利用の原則」として、「核兵器など大量破壊兵器を運ぶ物体(ミサイル衛星等)を地球を回る軌道に乗せたり、宇宙空間に配備してはならない」ことが規定されています。しかしこれは、人工衛星そのものに対する攻撃を禁止するものではなく、現代の状況には即していない部分が存在しているという見方が唱えられています。

そのような状況をアップデートしようというのが、MILAMOSプロジェクトの狙いです。前述のアデレード大学、カナダのマギル大学、そしてイギリスのエクセター大学が共同で進めるプロジェクトにはオーストラリアやカナダ政府からの資金援助のほか、個人的な寄付金も寄せられているとのこと。活動は「赤十字国際委員会」や非営利団体「憂慮する科学者同盟」などの組織、そしてアメリカやロシア、中国などの国家からの協力などからもたらされる専門的知識に基づいて行われています。

最終的なマニュアルが決定され、発表されるのは2020年になる見込みとのこと。戦争に関するガイドラインを定める今回のプロジェクトですが、参画するMILAMOSメンバーはこのガイドラインが実際に使われることがないことを、何よりも望んでいるとのことです。

By Pascal

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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