ゴジラ造形の第一人者・酒井ゆうじ氏にアニメ映画「GODZILLA 怪獣惑星」のゴジラについてインタビュー


ゴジラシリーズ初のアニメ映画「GODZILLA 怪獣惑星」の公開に合わせて、2017年11月17日(金)から「一番くじ GODZILLA 怪獣惑星 ~怪獣王は進化する~」の展開が始まっています。その「ビッグソフビフィギュア賞」の景品である全高約20cmのアニメゴジラは、ゴジラ造形の第一人者として知られる酒井ゆうじ氏が原型と彩色を担当しています。その酒井さんがいかにしてゴジラに魅了されていったのか、そして今回の圧倒的なゴジラをいかにして生み出したのか、原型を実際に見ながら話をうかがってきました。

アニメーション映画『GODZILLA 怪獣惑星』OFFICIAL SITE
http://godzilla-anime.com/


一番くじ倶楽部 | 一番くじ GODZILLA 怪獣惑星 ~怪獣王は進化する~
http://www.bpnavi.jp/kuji/item/2184

GIGAZINE(以下、G):
酒井さんのブログ「GODZILLA DREAM」を読んでいると「上京」という単語が出てきます。工房が福島県にあるということなので、仕事のたびに東京へ出てこられる形ですか?

酒井ゆうじ(以下、酒井):
はい、基本は福島で造形していて、必要に応じて上京しています。ここ最近はゴジラ展がいくつか続いたので、作品展示でいろいろな場所に行きました。

G:
酒井さんはブログで積極的に情報発信をしておられるので、最近どういったものを作っているのかということもよくわかります。

酒井:
ブログはスタッフが更新しています。基本は年2回のワンダーフェスティバルでガレージキットの新作を発表するので、そこにある程度焦点を合わせています。メーカーの製品が発売される時もお知らせしています。最初はプライベートな部分も出していたのですが、あんまり面白いこともないんで、最近は情報発信のみになってます。

G:
そのワンダーフェスティバルへは、第1回から皆勤だそうですね。

酒井:
最初は「お客さん」側で行っていて、やがて作り手側で出るようになりましたが、自然と毎回参加しています。

G:
ワンフェスには必ずゴジラなどが並ぶ「怪獣エリア」があります。その中でもブームのようなものはあるのでしょうか。

酒井:
平成に入って作られた「VSシリーズ」のころはかなり多かった印象があります。今も「シン・ゴジラ」が大ヒットして、増えているんじゃないでしょうか。いいことですね、ガレージキットは需要がありますから。

G:
酒井さんとゴジラとの出会いは、作品としては1964年に公開された「三大怪獣 地球最大の決戦」で、映画館で見るより前に、子ども向け雑誌に掲載されていたイラストだったと。

酒井:
映画を見るよりも、ゴジラの存在を知るよりも前に、友達の家で子ども向け絵本みたいなもので目にしたんです。モスラの幼虫などがすごく劇画的に描かれていて「一体これはなんだろう?」と思っていたら、まもなく映画が公開になったんです。地元の映画館の行列に並んで、一番前の席で夢中で見ました。それ以降、ゴジラの映画には通うようになったんですが、見たあとに欲求不満が残るんです。

G:
不満?

酒井:
今もはっきり覚えています。「映画の中に出てくるような、リアルなゴジラのおもちゃ、模型があったらいいな」と。それが今の仕事にもつながっているのかなと思います。

G:
粘土をこねて実際にゴジラを作ったりしたのですか?子どものころは「少年忍者風のフジ丸」が好きだったということなので、絵を描いたり?

酒井:
よくご存じですね、もう、大好きで!(笑) 幼稚園のころだったか、オープニングでフジ丸が刀を構えて雷が光るシーン(タイトルロゴが出る直前)が好きで、かっこいいな、と憧れていました。フジ丸のほかには「鉄腕アトム」も大好きでした。それで昔は「アニメーターになりたい」と思ったことがあり、セル画をパラパラ漫画にしてアニメーションを作ってみたりしました。これは中学生のころかな、主に好きだった「巨人の星」を描いていました。

G:
造形物を作るようになったのはいつごろでしたか?

酒井:
ゴジラ好きはずっと続いていて公開されるたびに見に行きましたが、ゴジラ映画は「メカゴジラの逆襲」でいったん終わりました。その後、美大に進学したんですが、大学3年の時、新宿で開催された「ゴジラオールナイト」というイベントで「モスラ対ゴジラ」と「キングコング対ゴジラ」を久しぶりに観て熱が再燃し、ゴジラのムック本を買ったりするようになりました。大学卒業後、広告代理店に勤めていたころに存在を知ったのが「ガレージキット」です。たくさん買って作ったのですが「自分の中のイメージとちょっと違う」と思うことがあり、そのうち原型を自分で作るようになりました。それで「キングコング対ゴジラ」のキンゴジで海洋堂の「第1回アートプラ大賞」に応募して入賞し、次の年に1メートルのビオゴジ(ゴジラVSビオランテ)で応募して大賞をいただきました。キンゴジあたりからセミプロみたいに仕事と兼業でやっていました。

G:
その後2年ほどは会社と造形活動を兼業されたとのことですが、造形に専念するきっかけは何だったのでしょう?

酒井:
日曜日の朝に雑誌の写真撮影で東京に行き、夜中に福島に帰ってきて次の日には会社という生活に限界を感じたのが1つです。もう1つは、ある日、有名な画家の絵を飾る仕事をしていたときに、「なぜ俺は人の作品を展示しているのだろう?」と思ったことです。「自分が本当にしたい仕事をしよう」と。それで決心して、35歳で13年勤めた代理店を辞め、「酒井ゆうじ造型工房」を設立しました。

G:
「違う怪獣を作るくらいならゴジラを作りたい」と仰ったというエピソードがありますが、本当ですか?

酒井:
確かにそういうことを言ったこともあります(笑) でも、改めて最新作から追ってみると他の怪獣も結構造っていますよ。作品を振り返ってみると、9割はゴジラですけど、1割くらいはキングギドラだったりガメラだったりします。機会があれば、いろんなことにチャレンジしたいとも思いますね。まぁ、基本はゴジラですけれど(笑)

G:
ゴジラシリーズは「メカゴジラの逆襲」で昭和シリーズが終わった後、1984年に復活して1995年までVSシリーズがあり、1999年から2004年までミレニアムシリーズ、と断続的に続いていますが、すべて追いかけられているのですか?

酒井:
もちろんです。やっぱり、ゴジラは映画館で見ないと。

G:
映画を見ている途中で「このシーン、この姿を作ってみたい」と思いつかれるのですか?

酒井:
ゴジラの映画を見ている中で「監督になりたい」「映像を作りたい」と感じる人は少なくないと思います。でも私の場合は、劇中で格好いいシーンや有名なシーンを見たときに「このシーンが欲しいな」「作りたいな」という想いがまずありますね。

G:
酒井さんは歴代のゴジラの中では「モスラ対ゴジラ」のモスゴジがお気に入りだとのことですが、こうして約40年にわたって様々なゴジラをご覧になってきて、最新の「GODZILLA 怪獣惑星」のゴジラを見た時の印象はいかがでしたか?

酒井:
歴代のゴジラは、それぞれの映画でそれぞれの監督が新しいゴジラを追求されているのだと思います。「怪獣惑星」のゴジラも、デザインや基本資料を拝見して、率直に「新しいゴジラだな」という印象を受けました。アニメは日本が世界に誇る文化ですから、ゴジラがアニメという形で世に出ることで、ゴジラをあまり知らない、あまり見ていないというアニメファンの方々にもゴジラを知ってもらい、今までのゴジラシリーズに触れてもらう機会になるといいなと楽しみにしています。

G:
今回は酒井さんに「GODZILLA 怪獣惑星」のゴジラだけではなく、シン・ゴジラやビオゴジまで並べて見せていただいたことで、改めてそのスタイルの違い、表情の違いなどをはっきり感じています。

酒井:
ゴジラシリーズは「シン・ゴジラ」が29作目で、この「GODZILLA 怪獣惑星」で30作目になります。それだけの数の中で、ゴジラはそれぞれに顔も違うしスタイルも違います。時には前の設定を使っていることもありますが、それぞれの映画にかっこよさがあり、モスゴジにはモスゴジの、シン・ゴジラにはシン・ゴジラの良さがありますね。「GODZILLA 怪獣惑星」のフィギュアもかっこよさを追求して作りたいという思いがありました。

いま見ていただいているゴジラは、2016年のシン・ゴジラの一番くじに続く、バンプレストの一番くじ第2弾の原型です。2017年2月に資料をお預かりして、ポージングデザインを2案作って瀬下寛之監督と造形監督の片塰満則さん、そしてスタッフの方々に見ていただき、ある程度の方向性を決めました。


G:
なるほど。

酒井:
この段階でラフ原型を見てもらって、いろんなキーワードをいただけるようやり取りを繰り返しました。私は原型を作るときには、どんな情報でもたくさん欲しいので、実際の現物を目の前で見てもらって、顔や手の表情から「こういう風なのがいい」というような情報を引き出していきます。たとえば、今回のゴジラの顔でいうと、当初は大きく口を開けて造形したのですが、「絶叫はしない」という情報をもらいました。悲痛な、苦悩の表情で何かを訴えかけているようなイメージだということでした。そこで、口を半開きにして、表情もそういうイメージに合ったものにしました。手も、提出したイラスト通り脇に構えるような手だったのですが、「何かを訴えかけているような感じ」「オペラ歌手のようなイメージ」というお話と、片塰さんにイラストを描いていただき、造り直しました。


G:
ラフ原型を作られるときは、設定資料から作られるのですか?先ほど、2月に資料を預かったというお話でしたが、その段階だとまだ特報映像も公開される前ですよね……。

酒井:
はい、映像は見ておらず、「こういうゴジラのデザインです」という資料をいただいて、それをもとに最初にポージングラフを描きました。ラフは2案あって、1つは今の姿の基となったもの、もう1つはもうちょっと派手な動きをしているものでした。

G:
先ほどおっしゃられたように、ポージングラフはこの原型に比べると口が大きく開いていますね。


酒井:
そうなんです。それでラフ原型を作って、スタッフの方から「口はこのほうが」などの情報をもらって、細かいところを監督たちの頭の中にあるイメージに合わせていきました。どのように仕上げていったのかは、作っている途中の写真を撮ってあるので、ぜひ見ていただきたいです。私は「作る人」であって「喋る人」ではないですから(笑)

G:
それはぜひ見たいです!

造型中の酒井さん


酒井:
原型を造り込んでいくにあたっては、外観についてはデータはいただいていますが、内面も探りたいですから、直接足を運んで監督やスタッフの方々とコミュニケーションを重ね監督達のイメージを具現化していきました。その結果出来上がったのが、いま見ていただいているこのゴジラです。背びれの流れが途中で大きくうねっていますが、これは片塰さんからの「もう少しうねらせられないか」という要望を受けて動きを出した部分です。筋肉質な体型はイメージとしては「金剛像」という事でした。

G:
今回のゴジラは「植物が起源」という設定だということを最初に聞いたとき、ゴジラが植物とは一体どういうことなんだろうかと思いましたが、さらに「金剛像」のイメージもあったとは……。

酒井:
動物ではなく、植物が進化した姿ということでした。頭の先からしっぽの先まで、コンセプトがぎっちり詰まっていますよ。皮膚も背びれも葉脈が血管のように見えるし、体表は木のイメージ、しっぽは木の根っこのイメージだということなので、それを具現化しています。やりとりは半年くらいかかったので非常に苦労はしましたが、持参するたび監督達の目が輝いているのが分かってとてもやりがいを感じていました。彩色は初めに提示された色で塗装した後、違う設定に変わってしまい塗り直しました。2万年という年月を経たゴジラなので体の表面は苔がついているということで、緑系統の色をベースに所々苔をメタリックで表現して細かく「再現」しています。監修していただきできあがったものを見て「まさにこのイメージです」と言っていただいたので、苦労しましたが頑張った甲斐があったという思いがあります。


G:
ゴジラというと「黒」のイメージがあるので、やや異色ですね。

酒井:
確かに黒というイメージがオーソドックスですが、今回のゴジラは植物起源だという設定から考えると自然だと思います。

G:
しかし、色としては黒より明るいのに、すごい重量感ですね。なにか見ている人に重量感を与える作りというのがあるのでしょうか。

酒井:
ゴジラそのものが重量感のあるデザインだというのが理由の1つだと思いますが、この後の動きが連想されるようなポーズにしているというのも関係していると思います。

G:
木の根のイメージだという尻尾は、この太さと力強い動きが相まって、歴代ゴジラでも特に強い武器になりそうな印象を受けます。先がピッと尖っているのも武器っぽい……。


酒井:
尻尾と爪はかなり尖っていますが、これは「棘」のイメージです。あまり尖っていると危険なので、残念ですが製品版では原型ほどは尖らないと思います。ちなみに、爪を見ていただくと、これまでのゴジラとは違って腕の部分と同じ色で塗っているのがわかりますか?

G:
ビオゴジにしてもシン・ゴジラにしても、皮膚とは別に爪は白系で塗り分けられていますね。

酒井:
これはあえて塗り分けをしていないんです。爪の形状はしているけれども、「植物の棘」のイメージなので、爪の色ではなく全体と同じ色調です。

G:
なるほど、それで……!木をイメージしているという体表の凸凹は、同じような凸凹というのがあまりないですね。

酒井:
ドライブラシという製法でかなり細かくこすって、全部ランダムに仕上げています。このモールドについても、資料をもとに密度などをやりとりして調整しています。振り返ると、本当に大変でした(笑)


G:
この表情、この姿のゴジラを生み出すにはそれだけのやりとりが必要だったということが納得です。改めて顔を見ても、ゴジラというと初代ならギョロッとこちらをにらむようなイメージ、ビオゴジなら正面をぐわっと見据えるイメージがありますが、このゴジラは目が小さく、口も先ほどおっしゃったように半開きで、これまでのゴジラとはかなり印象が異なります。

酒井:
目はクリアのブルーで、すごい綺麗ですよね。優しい目をしていて、苦悶しているようでもある。でも、体つきは強そうですから、映画はまだ見ていませんが「優しくて強い」という印象ですね。

G:
ぜひこの表情は実物を見て欲しいですが、一番くじのページでもいい表情の写真が掲載されています。ちなみに、こうした写真の撮影をするときには、酒井さんは必ず立ち会うそうですね。

酒井:
やはりゴジラの「かっこよさ」や「魅力」を最大限に表現するということがテーマですから、原型にしてもそうですし、撮影も自分でアングルをとって撮影して、それをカメラマンに渡して一緒に見ながらライティングの希望も伝えられるように、基本は立ち会うようにしています。バンプレストのサイトに掲載されている写真も、アングルを確認して細かいところまでこだわったものです。私の頭の中にあるアングルをそのまま撮影して欲しいので、カメラマンの方は大変だと思います(笑)

G:
ライティングの違いは、最終的な見栄えの違いにかなり差が出ますもんね……。

酒井:
ゴジラは「陰影」が大事なんですよ。スクリーンのゴジラを再現するにはライティングが大きく影響しますから。それに、角度も大事です。ワンフェスでは展示をするにあたって展示台の位置を高めにして、目線が下から見上げる形になるようにしています。怪獣は見下ろすと映えないですから。

G:
確かに、怪獣を見上げたときの力強さ、かっこよさはたまらないですね。酒井さんは常々、ゴジラの造形で大事なことは「カッコよく」と仰っていますが、今回のゴジラで「ここを見てほしい!」というポイントはありますか?

酒井:
基本的に「全部」です(笑)。わたしの思いも全部込めて、監督たちの意向も全部含んで再現していますから、頭の先からしっぽの先まで、じっくりと見てほしいです。


G:
お話をうかがって、酒井さんと映画のスタッフとの間でキャッチボールが行われたことで、このゴジラの内面が掘り下げられ、魂が入ってこういう表情になったのかなという気がしてきます。

酒井:
そうですね、可能な限り内面の情報をいただくようにしたので、それが形になってできあがったと思います。

G:
そうすると、酒井さんがキャッチボールで情報を得ていくのと同様に、キャッチボールの中で培われたものが映像に反映されたという部分があるかもしれませんね。

酒井:
そうだと嬉しいですが。色に関しても、監修していただき、できあがったものを見て「まさにこのイメージです」と言っていただいたので、よかったなという思いがあります。映画が完成したら見に行きますので、「これを作りたい」というシーンが展開されることを待ち望んでいます。

G:
お話、ありがとうございました。

この日は「アニゴジ」のほか、酒井さんの手による歴代のゴジラたちを見せてもらうことができましたが、どのゴジラもそれぞれに魅力がたっぷり。「GODZILLA 怪獣惑星」はもちろん、過去のゴジラシリーズも振り返りたくなります。


酒井さんによる迫力ある造形と同じように力強いゴジラが活躍する映画「GODZILLA 怪獣惑星」は2017年11月17日(金)から絶賛公開中です。

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