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新幹線の先頭車両は「トンネルドン」対策のために変わった形状になっている


新幹線の先頭車両は、JR各線や私鉄の車両と比べて大きく異なるデザインになっています。鼻が尖った姿はいかにもスピードが出そうな印象を受けますが、あの形状は単に速度を追求してたどり着いたものではなく、高速運転に伴って生じる微気圧波、通称「トンネルドン」への対策であり、生物模倣(バイオミメティクス)が取り入れられていることを、YouTubeのVoxチャンネルが取り上げています。

The world is poorly designed. But copying nature helps. - YouTube


1989年、新幹線は1つの問題に直面していました。


東海道・山陽新幹線のメインで運用されていたのは100系。しかし、さらなる高速化のためには「問題解決」が必要でした。


列車が高速でトンネルに突入すると、トンネル内には「圧縮波」が生み出されます。


図では列車が圧縮波を押しているかのようですが、実際には圧縮波は音速(時速1225km)で伝播し、トンネルの出口から放射されます。この、放射された圧力波は「微気圧波」と呼ばれ、「ドン」という大きな騒音を生み出します。このため「トンネルドン」とも表現されます。


問題に立ち向かったのが、JR西日本の試験実施部長で、日本野鳥の会のメンバーでもあった仲津英治氏です。


問題を解決したのは500系でのこと。


まずは、トンネル以外でも問題となっていた「パンタグラフの風切り音」です。


鳥好きだった仲津氏は、飛ぶときに音を立てないフクロウの羽には独特の風切り羽根があるということを知り、パンタグラフにその仕組みを取り入れました。下記図だと、T字形のパンタグラフへの改良はすでに行われていましたが、その支柱部分に凹凸を設けたのが仲津氏の改良で、これにより騒音を30%軽減させることができたとのこと。


また、パンタグラフの付け根の部分は、大きく動かなくても滑らかに泳げるアデリーペンギンを参考に作られました。


そして、微気圧波への対策として、先頭車両の形状を変更しました。仲津氏が何種類かの先頭車両の形状サンプルを作って水に落としたとき、最も静かに着水したのは、獲物を掴まえるために川へ飛び込むカワセミを模した形状でした。


仲津氏の成果を反映して作られた500系は1997年にデビュー。従来より10%高速で、電力消費量は15%少なく、騒音は75dB制限を守ることができました。


ちなみに、日本野鳥の会のサイトには、仲津氏自身によって書かれたコラムが掲載されていて、どのように研究を進めたのかなどが詳らかにされています。

カワセミと500系新幹線電車 | 野鳥を楽しむポータルサイト BIRD FAN | 日本野鳥の会
https://www.birdfan.net/fun/etc/shinkansen/index.html


トンネル微気圧波の対策については、鉄道総合技術研究所のサイトにも情報がまとめられています。

トンネル微気圧波低減対策 | 研究開発 | 公益財団法人 鉄道総合技術研究所
http://www.rtri.or.jp/rd/division/rd51/rd5120/rd51200101.html

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in 乗り物,   動画, Posted by logc_nt

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