Appleがタックスヘイブンにいかに資産を蓄えているのかが「パラダイス文書」から明らかに

by Jakob Esben H.

2016年に流出したパナマ文書に続いて、世界の権力者や富豪たちがタックスヘイブンに多額の資産を置いていることが「パラダイス文書」から明らかになりました。パラダイス文書には、イギリスのエリザベス女王の個人資産、トランプ大統領によって商務長官に任命された投資家のウィルバー・ロス氏の名前が連なっていますが、かねてから租税回避について非難されているAppleの名前も。国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は、Appleがどのようにして納税を逃れているのかを公開しています。

Apple’s Secret Offshore Island Hop Revealed By Paradise Papers Leak - ICIJ
https://www.icij.org/investigations/paradise-papers/apples-secret-offshore-island-hop-revealed-by-paradise-papers-leak-icij/


Paradise Papers: Apple's secret tax bolthole revealed - BBC News
http://www.bbc.com/news/world-us-canada-41889787


「Appleが課税逃れを行っている」という主張は新しいものではなく、2013年にはティム・クックCEOがアメリカ上院公聴会で当時のカール・レビン上院議員に「あなたは金の卵を産むガチョウをアイルランドに移した。3つの会社を税金を払う必要がないアイルランドに移したのです」「正しいことではない」と言われ、「私たちは払うべき税金を1ドルたりとも逃さずに払っています。税金逃れには頼っていません。カリブの島にこっそりと蓄えているわけではありません」と反論しました。


米アップルCEO、上院公聴会で課税逃れの疑い否定
https://jp.reuters.com/article/l3n0e234g-apple-ceo-idJPTYE94K06E20130521

Appleが前々から批判を受けているのは、「ダブルアイリッシュ」という租税回避の方法を取っていたとされていたため。租税回避は脱税とは異なり違法行為ではないのですが、タックスヘイブンと呼ばれる法人税がゼロあるいは極めて低い場所に法人のペーパーカンパニーなどを置くことで、納税額を低くすることができます。

ダブルアイリッシュでは、Appleはアイルランドに2つの法人を作ります。1つ目の会社はペーパーカンパニーで、アメリカ本社の子会社という位置づけにし、ライセンス付与だけの役割を担わせます。この状態だとアイルランド政府に課税されるため、今度は子会社の管理支配部門を国外に移します。アイルランドには法律の抜け穴があり、管理支配部門が国外にあるとアイルランド税法上は課税されなくなります。そして、管理支配部門を移す先をタックスヘイブンにすることで、節税スキームを実現させたわけです。上記のような手法をとることで、Appleの海外利益に対する税率は2%まで下がった年度もあるとのこと。

Appleがアイルランド政府から優遇措置を受けているという声が大きくなってきたのは2014年ごろから。2015年にはクックCEOがアメリカの税制を批判した上で、「Appleは税金を逃れるための洗練された手法を構築している」という指摘について「まったく馬鹿げた政治的な指摘です」とコメントしています

しかし、EUによる調査が進み、2016年にはEUがAppleに2003~2013年にかけての期間について最大130億ユーロ(約1兆7000億円)の追徴課税を命じています。これに対しAppleとアイルランド政府は不服申し立てを行いました。この経緯については、以下の記事に詳細がまとめられています。

Appleがアイルランドで税制優遇を受け1兆6000億円の追徴課税を命じられた経緯とは? - GIGAZINE


新たに流出した「パラダイス文書」は、ジャージー島にある法律事務所「アップルビー」が管理していた資料を、南ドイツ新聞が入手し、BBCやThe Guardianを含む世界中の報道機関が参加する国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)の協力のもと明らかにされたものです。そして流出した資料に含まれる顧客の名前として、Appleが存在しました。

2013年、クックCEOがアメリカ上院公聴会で税金逃れについて否定した数カ月後にアイルランド政府は国内で設立された会社が税制上の無国籍であり続けることは認めないと決定しました。アップルビーの資料によって明らかにされた内容によると、Appleはこの後、アイルランドに変わる租税回避地を探し始めたとされています。

2014年3月にはAppleの法律顧問であるベーカー&マッケンジーは、アップルビーに対してケイマン諸島やイギリス領ヴァージン諸島、バミューダ諸島などについての14の質問をメールで送信。質問の1つには「アイルランドの会社がマネージメント活動をできるのかを確認してください……あなたの管轄で課税されることなしに」といった内容も含まれていました。またApple側は、現地で「あまり遠くない未来に、法律が不都合な方法で変更されることはありそうか」ということを知りたがったとのこと。

最終的に、Appleは多くの法人の利益に対して課税のないジャージー島を利用することに決めました。

流出した資料の中にはアップルビー法人部門の役員であるキャメロン・アダリー氏が同僚に送ったメールが含まれており、メールには「Appleが世間の目に対して非常に敏感であることを知らない人々へ……。彼らは彼らのために行われる仕事が『それを知る必要がある人』の間でだけ議論されることを望んでいます」という内容が記されていました。また、アダリー氏は、ベーカー&マッケンジーの依頼を受けることについて「国際基準で我々が輝くための大きな機会」と表現していました。


2014年中頃には、アイルランド政府は国際的な圧力を受け、ダブルアイリッシュを禁止する法律についての検討を始めます。Appleがジャージー島を利用したのはダブルアイリッシュを行うためでしたが、この動きに対してAppleが表だって反対の意を示すことはもちろんできません。しかし、反対を表明した人も多く、アイルランドの財務大臣であるミシェル・ヌーナン氏は2014年7月に「ダブル・アイリッシュの構造の禁止は慎重にならなければならない」と警告しています。

そして2014年10月に、ヌーナン氏はダブルアイリッシュのスキームを2015年1月から新規参入企業には適用しない事を発表。ただし、既にダブル・アイリッシュを適用している企業については、2020年までの適用が認められるとしました。

時間的な猶予ができたAppleは、2015年からアイルランドにある「Apple Sales International(ASI)」や「Apple Operations International(AOI)」を含めて租税回避の仕組みを再構成しだしました。実は、メディアには注目されていませんでしたが、2014年のヌーナン氏の発表の中には「無形資産をアイルランドに持ち込む会社に対する寛大な税制」という内容が含まれていました。これは、アイルランドの企業が高価な無形資産を購入すると資本控除が認められるというもの。この仕組みを使えば、アイルランド企業が国外のタックスヘイブンにあるグループ会社から無形資産を購入することで、節税スキームの利用が可能になります。

Appleが上記のスキームを利用したかどうかは、定かではありません。しかし、ICIJはAppleは未課税の海外利益である2520億ドル(約28兆7000億円)の大半をジャージー島にため込んでいるとしています。また、2015年のアイルランドのGDPは26%増となっており、報道各社は国外からアイルランド国内に企業に対して無形資産が売却されたことが、この理由であると指摘しています。アイルランドの無形資産は同年、270億ドル(約3兆円)の増加があったとのこと。

なお、Appleは2017年11月6日に税金の支払いについての声明を発表しています。

The facts about Apple’s tax payments - Apple
https://www.apple.com/newsroom/2017/11/the-facts-about-apple-tax-payments/


発表の内容は以下の通り。

・Appleが企業の構造を2015年に変更したのは、アメリカへの税金の支払いを保つためであり、そのほかの場所での税金を減らすためではありません。アイルランドから操作や投資があったという事実はありません。
・アメリカから離れ、Appleは数十億ドルの税金を、資産収益上で法定されている35%の税率でイギリスに支払っています。
・海外収益についてのAppleの実効税率は21%です。これは一般公開されている資料から簡単に計算することができます。この税率は何年間も一貫しています。

上記の内容に加えて、Appleは過去3年間に350億ドル(約4兆円)以上を支払った世界最大の納税者であること、Apple製品の大部分は設計・開発・エンジニアリングがアメリカで行われており、アメリカに大半の税金が支払われていること、Appleは1980年代にスティーブ・ジョブズが海外の拠点としてアイルランドを選んだ時から、アイルランドでのオペレーションが行われていることなどが記されています。

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