テクノロジーの進歩で次々と誕生している改造人間「トランスヒューマン」の最前線


人体を改造して力を得るという「サイボーグ」への探求心は昔からありましたが、テクノロジーの進歩によって、近年、実際に自分の体を改造するというハックが、世界中のハッカーたちによって行われています。The Guardianが人体改造ハックによりサイボーグ「トランスヒューマン」になったハッカーたちを取材することで、トランスヒューマンの最前線に迫っています。

When man meets metal: rise of the transhumans | Technology | The Guardian
https://www.theguardian.com/technology/2017/oct/29/transhuman-bodyhacking-transspecies-cyborg

Transhuman - David Vintiner
http://davidvintiner.com/projects/transhuman/

テクノロジーの進化にともなって人間をサイボーグへと改造する技術者の欲求は高まる一方で、人体をハックする技術を披露する開発者会議「BodyHacking Con」が開催されています。技術の進化によって、SFの世界が現実のものになろうとしつつあり、人間の能力を拡張するべく改造された人を示す「Transhuman(トランスヒューマン)」という用語が生まれています。なお、トランスヒューマンを探求する人はトランスヒューマニストやボディ・ハッカーと呼ばれることがあるようです。

◆Kevin Warwick
イギリスの写真家デイビッド・ヴィンティナー氏は、トランスヒューマンというサブカルチャーを2年間追い続け、撮影し続けてきました。

ヴィンティナー氏がトランスヒューマンに興味をもつきっかけとなったのは、コヴェントリー大学で副学長を務めるケヴィン・ワーウィック教授だったとのこと。ワーウィック教授は、1998年に皮膚の下にシリコンチップトランスポンダを埋め込むことで、ドアに触れるだけでロックを解除したり、移動するたびに部屋のライトが自動点灯したりできる機能を手に入れた、元祖トランスヒューマンというべき人物です。


ワーウィック教授は妻にも改造を施して、遠隔でコミュニケーションをとるインプラントなどのアイデアを次々と実現しましたが、医学、商業、アカデミックなどいずれの世界からも受け入れられることはありませんでした。発表した論文が多数引用されたワーウィック教授でしたが、世界で最も古く権威のある科学学会のロイヤル・ソサエティの会員になることを拒否したそうです。

そのワーウィック教授は、多くの若いハッカーたちがトランスヒューマンの分野を推進していると感じているとのこと。ただし、「彼らの舞台は実験室ではなくもっぱらガレージで、時には多くの危険を冒しているのですけれど」と述べているとおり、トランスヒューマンへの取り組みは、学術的な研究ではなく好奇心・探求心に基づく実験という色合いが強い模様。現代医療において、糖尿病や心臓病を解決するための人工臓器の移植や整形外科手術のについては一般的になっていますが、「自分の生まれ持った感覚や能力を外科的手術によって増強する」という考え方に対しては倫理的問題が投げかけられることを、若いトランスヒューマニストたちは疑問に感じているようです。

Rin Räuber
ドイツ・ベルリン在住のリン・ローバー氏は、指に磁場を操る装置を埋め込んで、「スプーンを拾い上げる」という能力を手に入れています。ローバー氏は何か使命感のようなものからトランスヒューマンを研究しているというわけではないとのこと。「単に面白いからやる、クールだと思うからやる」という根っからのハッカー気質で、好奇心から自分の体を改造しています。


◆Rob Spence
10歳のときに事故で目を失ったロブ・スペンス氏は、録画した映像をリアルタイムで送信できるビデオカメラを目に埋め込むというハックによって「Eyeborg(アイボーグ)」として一躍、有名になったハッカーで、トランスヒューマンの可能性を追及する一人です。


スペンス氏については以下の記事を見ればよく分かります。

右目にカメラを埋め込んだサイボーグならぬアイボーグ - GIGAZINE


スペンス氏は、「テクノロジーには明確な進展があります。コンピューターは最初は『大きな部屋』でしたが、デスクトップPC、ノートPC、タブレット、スマートフォンと来て、次は体の一部になるでしょう。問題は、腕を切り落として人工的なものに置き換えるときがいつ来るかということ。必ずや到来するその世界は、そう遠くはないはずです」と述べており、テクノロジーが人体に統合されることは避けられないと考えています。

◆James Young
スペンス氏が述べた「腕を人工的なものに変える」という試みを実践している一人が、ジェームス・ヤング氏です。ヤング氏は22歳のころ、電車のホームから転落して腕と足を失いました。その後、「メタルギア・ソリッドのバイオニックアームを作る」というプロジェクトに選ばれたヤング氏は、巨大な人工アームを装着して、義手開発プロジェクトを進めています。


とはいえ、「人間の腕のように良いものでは決してない」とヤング氏が述べる通り、トランスヒューマン実現への道のりは険しいようです。そこでヤング氏は、脳からの信号を使って自然にコントロールできるよう骨に埋め込むタイプの人工アームの開発を検討しており、開発資金をクラウドファンディングGofoundmeで調達中です。

Fundraiser by James Alexander Hepworth Young : Titanium Implants for James' Limbs
https://www.gofundme.com/titaniumjames


◆Neil Harbisson
生まれつき白黒しか色を認識できないスペイン在住のニール・ハービソン氏は、光のスペクトルを検出して振動に変換する特殊なアンテナを頭骨に埋め込むことで、「色を"聞く"」ことに成功しています。


ハービソン氏は「最初は私が聞いていたものは『混とん』でしたが、ゆっくりと理解できる『情報』なり、ついに『知覚』になりました。その後、私はさまざまな感情を持ち始めました。私が好きな色は赤外線で、普通の人間には見えません。それはとても低い周波数をもち、穏やかです」と述べ、新しい感覚を創造すれば、脳はそれを理解する知性を生み出すと主張しています。「もはや『人間』の定義には自分は含まれていない」と述べるハービソン氏は、すべての人に「新しい感覚」が芽生えることはすばらしいことだと考えています。

「人は既存の感覚や、既存の身体パーツを再現することは倫理的だと感じます。しかし、新しい感覚や新しい身体のパーツに対しては不必要だと感じます。しかし、この考えは変わると思います。人間が地球をよりよくする最良の方法は、自分自身を設計し改良することだと気づき始めるでしょう。例えば、暗闇でも見える暗視力があれば、夜に明かりをつける必要はありません。街灯で照らす必要はありません。私たちが持つ感覚が増せば増すほど、必要となるエネルギーは少なくなります」と述べています。

自らの考えをより発展させるために、ハービソン氏は世界中のボディ・ハッカーやトランスヒューマニストとともに、「Cyborg Foundation(サイボーグ財団)」を設立して、研究に努めています。

・関連記事
「考えるだけ」でロボットアームを自在に操る女性がステルス戦闘機F-35を飛ばすことにも成功 - GIGAZINE

人間に第3・第4の腕を作りだすロボット・アームの開発が進行中 - GIGAZINE

小指の隣に「第三の親指」を追加してしまうという創作プロジェクト「The Third Thumb Project」 - GIGAZINE

DIYで自分の脳をハッキングして脳のパフォーマンスを上げる試み - GIGAZINE

脳に電流を流してハッキングしようとする人が急増中、科学者が警鐘をならす - GIGAZINE

下半身不随のアスリートたちがロボットスーツを身にまとい過酷な障害物をクリアする世界初の大会「Cybathlon」が開催される - GIGAZINE

頭に付けて念じるだけで動くパソコンをロシアが開発中 - GIGAZINE

282

in ハードウェア,  サイエンス, Posted by logv_to