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任天堂が優れたゲームを生み出す秘密の一端に触れられる「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」の開発秘話がおもしろい


2017年3月3日にNintendo Switchと同時に発売された「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」は、その圧倒的な完成度の高さから多くの賞賛を受けていますが、任天堂がその開発秘話を明かしており、とても興味深い内容となっています。

日本最大のゲーム開発者向けカンファレンスであるCEDEC 2017の中で、任天堂が「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」の開発秘話を語りました。任天堂が行った講演では、ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルドの開発に携わった開発者たちの口から、プロジェクト運営や3Dグラフィックアート、ツール・デバッグ、サウンド、UI、フィールドレベルデザインなど多岐にわたる内容が語られたそうで、これに参加していたカプコンのプロダクションマネージャーであるMatt Walkerさんが、講演についてツイートしており興味深い内容の一端が知れるようになっています。

ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルドではゲームに統合された以下のようなマネジメントツールを用いてタスク管理が行われることで、「同じ場所のチェックを別々の人が行ってしまう」などの作業における無駄が省けるようになった模様。

They managed all of their tasks by integrating their management tools with the game, so you wouldn't get people doing the same work twice. pic.twitter.com/ZZsMNSlSZh

— Matt Walker (@gypsyOtoko)


さらに、ハイラルの大地全体でどこがどれくらいの進捗度で開発が進んでいるのかを目で見て確かめられる「フィールドタスクビュー」なるツールも。これらの開発者向けツールに対して、Walkerさんは「複数の開発者がタスクに関して互いのアイデアをやり取りできる素晴らしいツールだ」と述べています。

could be readily available by clicking on that sign. There's also a "field task view" that was set up for higher level items. pic.twitter.com/Y6jvT7yNSV

— Matt Walker (@gypsyOtoko)


そして、フィールドデザインには「三角形の法則」が隠されています。例えば三角形の山を配置することで、プレイヤーに「山を越える」と「迂回する」という2つのルートの好きな方を選ばせることが可能。

They explain that using triangles carries out 2 objectives- gives players a choice as to whether to go straight over the triangle, or around pic.twitter.com/RPAGk54XGD

— Matt Walker (@gypsyOtoko)


さらに、その山の奥に別の目的地を置くことで、探索の喜びや楽しさを自然にプレイヤーへ提供できるようになります。

and it obscures the player's view, so designers can utilize them to surprise players, make them wonder what they'll find on the other side. pic.twitter.com/0ECKE6oUv6

— Matt Walker (@gypsyOtoko)


加えて、三角形のオブジェクトは先端部分に視線を誘導する効果があるので、コログや祠などゲーム中の重要な要素を配置することで、さらなるプレイヤーの誘導が行えるようになります。

There's also variations that can be more visually interesting, to perk the player's interest. Korok seeds are usually found in these. pic.twitter.com/TEcDFwycBB

— Matt Walker (@gypsyOtoko)


任天堂は異なるサイズの三角形を用途に分けて使いこなしており、山のような大きな三角形をランドマークとし、中くらいのサイズの三角形をランドマークやルートの遮蔽物として使用、そして小さな三角形を冒険のテンポを変える遊びの要素として組み込んだ模様。

They have 3 different scales that they utilize this principle with as shown here - all to achieve different objectives. pic.twitter.com/FjmNvP0w8l

— Matt Walker (@gypsyOtoko)


もちろんフィールド上の要素が全て三角形というわけではなく、四角形のものも使われています。三角形は徐々に目的地などを明かすために使われますが、四角形の場合は視界から何かしらのものを完全に隠すのに有効だそうです。例としてスライドで紹介されているのはフィールド上に無数に存在する「木」で、木の陰でキノコやハチの巣などを見つける際を思い出せば、確かに四角形が「ものを完全に隠すため」に使われていることがわかります。

They also used rectangles as shown here. Instead of gradually revealing something, rects are good for completely hiding something from sight pic.twitter.com/oqSp5oMxwv

— Matt Walker (@gypsyOtoko)


フィールドデザインにおいて三角形と四角形がどれくらい広範囲にわたって適用されているのかわかるのが以下のスライド。

You can get an idea for just how widely this concept was applied in this image. pic.twitter.com/ecGGSBfnDn

— Matt Walker (@gypsyOtoko)


ゲーム中に登場する「シーカータワー(塔)」は、マップをゲットするための建物で、見かけたなら登らずにはいられないほど重要なもの。その塔へプレイヤーが向かう際の道の中にも多くの三角形が巧みに使用されているのがわかるのが以下のスライド。

岩や山肌でその奥にある建造物を巧みに隠し、徐々にその姿が見えてきます。

They give an example of how the design was applied in action in these images. Note how the structure in the distance is slowly revealed. pic.twitter.com/hyOFHg7v76

— Matt Walker (@gypsyOtoko)


さらに近づいていくと、四角形の建造物の奥からひょっこり塔が姿を現わします。

Finally, the structure hides the tower in the back, so there's this chain of interest - hill -> bridge structure -> tower. pic.twitter.com/E3lTOKWYrD

— Matt Walker (@gypsyOtoko)


他にも、プレイヤーを巧みに誘導するための施策がゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルドには施されています。

以下の画像はゲームのマップ上にテストプレイ参加者が実際に移動したルートを加えたヒートマップ。何かしらの施策を施す前は、フィールド上の道に沿った移動が多く、ほとんどのプレイヤーが同じようなルートでハイラルの大地を冒険しているのがわかりますが、多くの土地を訪れていないこともわかります。対して、施策を加えたあとのヒートマップを見ると、プレイヤーごとの冒険ルートがかなりバラバラになり、フィールドの隅々まで踏破されていることがわかります。

The first map images show 2 heat maps - showing what paths players originally traversed in playthroughs, and then the second map showing.. pic.twitter.com/Bp1X11Gd7H

— Matt Walker (@gypsyOtoko)


施策前の段階を改善するため、フィールド上の塔を点として、点と点の間にゲームイベントを配置すれば「ちょうど良い塩梅になるハズ!」と任天堂は考えた模様。

how much more well distributed that became after they made this specific change.Their initial assumption was that they could spread the.. pic.twitter.com/sNcF0bxp71

— Matt Walker (@gypsyOtoko)


しかし、これだと「やらされている感が強い」「一本道感が否めない」「悪い意味で体験が人によってバラバラ」という問題点が出てきてしまったそうです。

Players felt they were being guided, that the game was too linear, and people were having completely different experiences, in a bad way. pic.twitter.com/jEJG4tspWM

— Matt Walker (@gypsyOtoko)


そこで、開発陣はプレイヤーを引きつけるような「引力」を持った物体を点と点(塔と塔)の間に配置。この「引力」を持った物体というのは、祠や魔物の巣、馬宿などのプレイヤーの益になるようなものを指す模様。

placing structures of varying visibility/importance in dffrnt places,leading players in different directions and allowing to get sidetracked pic.twitter.com/5HKLpUosOe

— Matt Walker (@gypsyOtoko)


この要素ごとのプレイヤーを引きつける力の強さは、サイズや目的により異なってくるようです。

You can see in this image how the different structures rank in visibility - naturally drawing player's attention, and in "objective". pic.twitter.com/xlTargVRHf

— Matt Walker (@gypsyOtoko)


他にも、ゲームのUIデザインにおいての「情報を捉えやすく、悪目立ちさせない」施策や……

Coallescing information so there aren't as many places players would have to look. pic.twitter.com/YfIrPgNRjK

— Matt Walker (@gypsyOtoko)


タイトル画面のデザインにおいて注意したポイントなどもまとめられています。

For the title menu they chose to make proper use of empty space instead of making the selections large. pic.twitter.com/EZDtLnAszG

— Matt Walker (@gypsyOtoko)


さらに、通常の白色よりも少しだけ黄色味がかった「ゼルダホワイト」を、ゲームのUIだけでなくパッケージにまで採用することで統一感を出しています。

To help unify the UI they adopted a color they called "Zelda White", which has a bit of yellow. Used in the package and logo as well! pic.twitter.com/anoF4wYrqN

— Matt Walker (@gypsyOtoko)


加えて、ゲーム内の祠などで表示される日本語フォントには、カタカナでは視覚デザイン研究所の「ロゴGブラック」、漢字ではフォントワークスの「ラグランパンチ」が採用されています。

Font - they prioritized borderless, simply colored text with zero frills. The overseas fonts were custom made, but for Japanese they used pic.twitter.com/2hXI92HMSd

— Matt Walker (@gypsyOtoko)


他にも、UIデザインでは常に見なくてもいい情報は必要な時にだけ表示されるように配慮しており……

UI Design - direction was to only display information when necessary, which gives the screen more breathing room. pic.twitter.com/psuGrb3GTL

— Matt Walker (@gypsyOtoko)


常時UIが表示されていると起きる「画面の圧迫感」を減らすことに成功しています。

The Pro HUD was actually created because (presumably) NoA/NoE asked to clean up the screen and get rid of even more UI elements - pic.twitter.com/ra1Jk6THhq

— Matt Walker (@gypsyOtoko)


さらに、古代シーカー技術に関しては、世界観の構築と差別化のために他のアイテムとは異なるデザインになっています。

which lead to more immersion. They designed the Sheikah Slate in tandem with the artists and chose to differentiate its design and give an pic.twitter.com/B115VgdWSM

— Matt Walker (@gypsyOtoko)


細かなチュートリアルもなく、画面上に表示される要素も少ないですが、UI本来の「情報を伝える」という点をおろそかにしているわけではなく、重要な要素はわかりやすく目に付くようにデザイン。その例のひとつがリンクがダメージを受けた際にハートが白く光る点で、「シンプルなUIで高品質に見えるように」デザインされているとのこと

decreasing noticeability by making UI and fonts smaller. pic.twitter.com/2tHegPsGAi

— Matt Walker (@gypsyOtoko)


また、ゲームオーバー時の画面表示は、文字をキャプチャーしてゆがみテクスチャを加え、さらにゆがみアニメーションを加えることで表現している模様。

They created a tool they could use to capture textures and modify as necessary for this. pic.twitter.com/pr1FjsRk4x

— Matt Walker (@gypsyOtoko)


他にも、アイテムを収納する「ポーチ」画面は、ゲーム背景をキャプチャーし、保存した背景の左半分をマスク処理し、そこにポーチ画面を追加することで表現しているそうです。

to add filters & color adjustments to create UI. Image shows how they composed the gear slct scrn, capturing the env, masking and redrawing. pic.twitter.com/nNZDrgw0Le

— Matt Walker (@gypsyOtoko)


さらに、UIデザイナーがわずか2人しかいなかったため、プログラマーと協力して「LayoutEditor」なるツールを作成。

Expanding on NCL's proprietary "LayoutEditor" tool in a "data driven" fashion, allowing designers to place and animate screen nodes, and pic.twitter.com/s99i8OAeaz

— Matt Walker (@gypsyOtoko)


通常、UIデザイナーはゲームにデータを実装するためにプログラマーの仕事を待つ必要がありますが、実装前にゲームビュアー上で作成したデータを確認できるようになりました。

was changed so that the game screens could be previewed on top of each other, over the running game. The game map was split into pic.twitter.com/xsRLw6P7AZ

— Matt Walker (@gypsyOtoko)


また、ゲームのマップは動的にロードできる120のエリアに分割されており、4段階のズームが可能で、さらに未オープンエリアとも組み合わせる必要があるので、2344枚ものマップを作る必要がありました。しかし、手書きでは非現実的であったため、自動生成で作成したそうです。

they needed to create 2,344 different screens, which would have been impossible manually, so the map was procedurally generated, pic.twitter.com/MnCrxWsPeT

— Matt Walker (@gypsyOtoko)


CEDEC 2017でのゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルドに関する講演については、国内ゲームメディアも取り上げています。

【CEDEC2017】「ゼルダの伝説」作成を裏から支えたエンジニアたち - GAME Watch
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/1078888.html

[CEDEC 2017]「ゼルダの伝説BotW」の完璧なゲーム世界は,任天堂の開発スタイルが変わったからこそ生まれた - 4Gamer.net
http://www.4gamer.net/games/341/G034168/20170901120/

「ゼルダの伝説 BotW」にバグが少ない理由 - CEDEC 2017
http://jp.ign.com/cedec-2017/16963/news/botw

【CEDEC 2017】「オープンエア」の世界はこうして作られた―「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」におけるフィールドレベルデザインの講演をレポート|Gamer
https://www.gamer.ne.jp/news/201709010048/

なお、「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」についてはGIGAZINEでも既にレビュー済み。圧倒的完成度の本作について「よく知らない」という人は、以下の記事を見れば何となくどんなゲームになっているのかわかるはずです。

「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」の圧倒的自由度&完成度にこれまで培われてきたゲーム観をぶち壊された - GIGAZINE

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in ゲーム,   デザイン, Posted by logu_ii

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