サイエンス

アンコウはオスがメスに融合する「性的寄生」により深海で繁栄したことが研究で判明

by OpenCage

太陽の光がほとんど届かない海の漸深層、いわゆる「ミッドナイトゾーン(midnight zone)」に生息するアンコウは、生物発光ルアーで獲物を誘う珍しい狩猟方法など、深海の脊椎動物の中で最も多様な生態を持つグループです。遺伝子解析でアンコウの進化の歴史をたどる研究により、アンコウの繁栄には小さなオスがメスの体に取りついて一体化する奇妙な生態である「性的寄生」が大きな役割を果たしていたことが突き止められました。

Reproductive innovation enabled radiation in the deep sea during an ecological crisis | bioRxiv
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2024.01.12.575380v1.full

Anglerfish entered the midnight zone 55 million years ago and thrived by becoming sexual parasites | Live Science
https://www.livescience.com/animals/fish/anglerfish-entered-the-midnight-zone-55-million-years-ago-and-thrived-by-becoming-sexual-parasites

Weird anglerfish mating strategy may have helped them evolve | New Scientist
https://www.newscientist.com/article/2415180-weird-anglerfish-mating-strategy-may-have-helped-them-evolve/

イェール大学の進化生物学者であるチェイス・ブラウンスタイン氏らの研究チームは、2024年1月にプレプリントサーバー・bioRxivで発表した今回の研究で、深海に住むチョウチンアンコウの仲間160種以上のゲノムを解析してアンコウの進化の家系図を作成しました。

その結果、海の底を胸びれで歩いていたチョウチンアンコウの祖先が、今から約5500万年前に深海のミッドナイトゾーンに進出した後、わずか500万年の間に多様な進化を遂げたことがわかりました。


当時の地球では、火山活動によりメタンが大量に大気中に放出されて温暖化が進み、熱帯の海水温は36度にまで達したとされており、この出来事で深海の多くの生物が絶滅したことでチョウチンアンコウの祖先が繁栄する舞台となる生態学的地位、つまり「ニッチ」が生まれたと考えられています。

ブラウンスタイン氏は、「私たちが発見したのは、陸を歩いていたクジラの祖先が海に戻ったように、海底を歩いていたアンコウが海の底から水中に戻ったということです」と話しました。


海のミッドナイトゾーンには岩礁や洞窟、海藻といった、定着できる生息環境がありません。こうした領域に住む生き物は、つがいとなる相手を探すのに苦労しますが、チョウチンアンコウの祖先は新しい繁殖戦略を手に入れることで、めったに異性と出会えない深海の暗闇を克服しました。

アンコウが交尾相手を探すのに使っている武器のひとつは、優れた嗅覚です。チョウチンアンコウのオスは、ブラウンスタイン氏が「非常にSF的」と形容するほど大きな鼻孔を持っており、これによりメスが発するフェロモンを感知しているとのこと。

そして、メスと出会ったチョウチンアンコウのオスは、時には自分の100倍もある大きなメスの体に食らいついて、交尾の準備が整うまで過ごします。さらに、一部の種ではオスの体がメスと融合し、血管や循環系を共有する「性的寄生」に発展することもあります。

by Robbie N. Cada

深海に進出する以前から、チョウチンアンコウの祖先はオスがメスより極端に小さい矮雄(わいゆう)という形態や、オスがメスの体から攻撃されずに済むような免疫の弱さを持っており、チョウチンアンコウはこの免疫の欠陥を逆手に取ることで、一度の出会いを永遠のつながりにする手段を手に入れたと考えられています。

ブラウンスタイン氏は「私はこれを、いわゆる外適応の一例だと考えています。つまり、明確な適応的役割を持たなかった形質が新しい環境の中で発現し、適応的な役割を獲得したということです」と話しました。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1l_ks

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