飛行機の中で人の感情・認知能力・体は変化し、地上とは異なる反応を見せるようになる

by Ross Parmly

格安航空券が登場し、海外旅行がより身近になっていますが、近年の研究によって飛行機でのフライトによって人の体の状態や認知能力、不安、感情が変化することが分かってきています。健康な人々でも飛行機によって何らかの影響を受ける可能性があることを、BBCが解説しています。

BBC - Future - How flying seriously messes with your mind
http://www.bbc.com/future/story/20170919-how-flying-seriously-messes-with-your-mind


ヴァージン・アトランティック航空がFacebook上でアンケートを行ったところ、41%の男性が「他の乗客に涙を見られないようにブランケットにくるまった」経験があり、「目に何かが入ったフリをした」女性の数も多かったことが判明しました。全体として乗客の55%が飛行機に乗っている最中に感情の高まりを経験していたことから、ヴァージン・アトランティック航空は、いくつかの映画の選択前に乗客に対して「ティッシュを用意し、もし寄りかかる人が必要な場合は乗務員呼び出しボタンを押してください」と表示させているとのこと。客室乗務員のCarly Swaineさんによると、涙を流している乗客の姿は飛行機の中でよく見られるもので、「多くのお客様は新婚旅行や遠くの親戚に会いに行くためといった冒険のために世界を横断するので、映画が強い感情を生み出しても不思議ではありません」と語っています

「飛行機の中で感情が高ぶる」という人の存在は珍しいことではなく、物理学者のBrian Cox氏も飛行機の中で映画を見たときに感情的になるということに同意しており、ガトウィック空港の調査でも、男性の15%、女性の6%が家で映画を見る時よりも飛行機で見る時の方が涙を流しやすいと答えています。The German Society of Aerospace Medicine(ドイツ航空医学会/DGLRM)の代表であるJochen Hinkelbein氏は、「これまで、健康な人々を対象とした航空医学の研究は十分に行われてきませんでした。しかし、飛行機での旅行が安く、人気を集めるようになるにつれ、空の旅に適合しない人々やお年寄りも飛行機を利用するようになってきました」として、航空医学の必要性を説いています。

飛行機の中は標高2.4kmの山地と同じような環境であり、湿度は砂漠よりも低く、キャビンの過熱を防ぐために外から入ってくる空気は10度前後に調整されます。また、気圧の調整が行われることで、乗客の血中の酸素量は6~25%ほど減少しますが、これは病院の患者であれば医師が呼ばれる状況とのこと。健康な乗客であれば問題が生じないことがほとんどですが、お年寄りや呼吸に問題がある人々であれば、空の旅が与える影響は大きくなります。

by SuperJet International

過去に行われた研究では、標高3.6kmの酸素レベルになると、健康的な大人であっても、測定可能なほどに記憶力・計算能力・決断力が変化すると報告されています。そのため、パイロットは高度3.8km以上を飛ぶ時には酸素マスクの装着が必要であると航空規則で定められています。一方で、高度2.1kmを越えるとなぜか物事に反応するまでの時間が短くなることも判明しています。Hinkelbein氏によると、健康な人々であれば認識能力の低下などは現れないものの、「飛行機に適合しない人々や、インフルエンザにかかっているなど健康上の問題を抱えている人の場合は低酸素症によって酸素の循環が悪くなることで、認知能力の低下が目に見えて現れる」とのこと。また、飛行機に乗っているとすぐに疲れて眠くなってくるのも、低酸素状態の影響であるとHinkelbein氏。

このほか、高度1.5km以上になると人間の暗視能力は5~10%低下すること、湿度と気圧の低下によって甘みや塩気に対する感度が最大30%下がり味覚が変化することなども報告されています。湿度の低下によって味覚だけでなく嗅覚も低下するので、機内食にはより多くのシーズが加えられることに。さらに気圧と湿度の低下はアルコールの影響力を増大し、翌日、二日酔いになりやすくなることにも注意が必要です。

by Kevin Briody

そして、高所は人のネガティブな感情を増大させ、緊張が強まったり、人に対してフレンドリーでなくなったり、エネルギーレベルが低下しストレスに対処する能力が影響されたりするということがこれまでの研究で示されています。キング・カレッジ・ロンドンの航空医学会代表である Valerie Martindale氏は「低酸素症によって不安レベルが増大する」とも語っています。

一方で、高所が人々を幸福にするということを示す研究結果も発表されており、ワシントン大学のStephen Groening教授は「退屈なフライト中に、ヘッドフォンと小さなスクリーンを用いて映画を見てホッとすることは、悲しみではなく喜びの涙に結びつく可能性がある」と語っています。

by Jason Ilagan

また、Hinkelbein氏によると、ケルン大学が行っている未発表の研究では、民間用の飛行機と同じ環境を被験者に30分にわたって体験させたところ、被験者の血中の免疫系に関わる分子のバランスが変化したということも確認されているとのこと。これは低気圧の環境が免疫系の働きに影響を与える可能性を示しており、「これまで人は環境が変化するから旅行中に病気にかかりやすいと思ってきましたが、フライト中に免疫系の反応が変化することが原因かもしれません。これはより詳しい研究を必要とする分野です」とHinkelbein氏。また、免疫系の反応によって炎症が増加することがうつと関連していると見られているため、フライトが人の気分に影響を与えていることを示す可能性の1つとも見られています。

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