Googleを批判した研究者が追放され、「巨大企業によって研究が危険にさらされている」と波紋が広がる


2017年6月、GoogleはEU競争法(独占禁止法)に違反したとして約3000億円の制裁金を科せられることとなりました。この一件に関して、経済・外交・環境などの問題に取り組む非営利のシンクタンク「New America Foundation(NAF)」のメンバーである研究者のバリー・リン氏がEU欧州委員会の行動をたたえる文章をシンクタンクのウェブサイトに掲載したところ、シンクタンクを解雇されたとのこと。

Googleの元CEOでありAlphabetの会長であるエリック・シュミット氏は、2008年から2016年まで、リン氏が勤めていたシンクタンクであるNAFの会長を務めました。また、NAFは創設にあたってGoogleから2100万ドル(約23億円)以上を受け取っていたことから、資金提供がなくなるのを恐れたNAFがリン氏を解雇したのではないか?と波紋が広がっています。

Google Critic Ousted From Think Tank Funded by the Tech Giant - The New York Times
https://www.nytimes.com/2017/08/30/us/politics/eric-schmidt-google-new-america.html


I criticized Google. It got me fired. That’s how corporate power works. - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/news/posteverything/wp/2017/08/31/i-criticized-google-it-got-me-fired-thats-how-corporate-power-works/

Google-Funded Think Tank Fires Scholar Who Criticized Tech Giant : NPR
http://www.npr.org/2017/08/31/547491063/google-funded-think-tank-fires-scholar-who-criticized-tech-giant

Scholar says Google criticism cost him job: 'People are waking up to its power' | Technology | The Guardian
https://www.theguardian.com/technology/2017/aug/31/google-new-america-foundation-criticism-job-barry-lynn

リン氏はNAFの中で、通信やテクノロジー業界における企業の独占を批評する「Open Markets」と呼ばれるプロジェクトを率いていた人物で、批評対象の中にGoogleも含まれていました。そんなリン氏が前述の記事を掲載すると、数時間後にはNAFの代表であるアン・マリー・スローター氏から「エリック・シュミット氏やGoogleの関係者が記事に対して怒っている」という内容を告げる電話を受け取ったとのこと。そして、記事掲載から2日後にはスローター氏のオフィスに呼ばれ、Open Marketsのチーム全員がNAFを離れなければならないと告げられたそうです。

リン氏はスローター氏からメールを受け取っており、その中には、決定が「あなたが生み出したコンテンツのせいではない」ということが記されていました。また、NAFの上級副社長のTyra Mariani氏も、「バリーのOpen Marketsプログラムがスピンアウトすることは双方による話しあいの末の決定」であり、Googleやシュミット氏の影響があるものではないとしています。問題となった記事は掲載されると一時的に取り下げられたのですが、このことについてMariani氏は「意図的ではなく、内部の問題によるもの」と述べており、シュミット氏やGoogleとの関連性はないとしています。

しかし、リン氏はスローター氏がシュミット氏やGoogleからの圧力に屈したと批判。「Googleはワシントンやブリュッセルの色んなところに資金を提供し、裏で糸を引こうとすることに積極的です。今や人々はGoogleを恐れています」と語っています。

なお、スローター氏はThe New York Timesの記事に対して「This story is false(この話はうそです)」とTwitter上でつぶやいていますが、どの部分が間違っているのかについては具体的に引用しておらず、また、スローター氏をインタビューすることもできない状態にある、とNew York Timesはつづっています。


一方で、NAFからもNew York Timesの記事についてコメントが出されています。文書の中でスローター氏は、Open Marketsは10年にわたって続けられてきたプロジェクトであり、Googleにとって目新しい存在ではなかったと言及。リン氏はNAFの柔軟性や協力性に関するスタンダードに従うことを繰り返し拒否しており、これ以上同じ組織の一部として共に働いていくことはできないと判断されたため、解雇となったとしています。

New America's Response to the New York Times
https://www.newamerica.org/new-america/press-releases/new-americas-response-new-york-times/


また、Open Marketsは2016年に企業の独占に関してカンファレンスを主催しており、アメリカ上院議員のエリザベス・ウォーレン氏らによって大手テクノロジー企業が経済を統合・集中させているという内容が講演されました。このカンファレンスについてシュミット氏らGoogle側が大きな懸念を示しているとして、スローター氏はリン氏にメールを送っています。このメールの中に記された「We are in the process of trying to expand our relationship with Google on some absolutely key points,(いくつかのキーポイントで、私たちはGoogleとの関係を拡大しようとしています)」「just THINK about how you are imperiling funding for others(あなたが他のもののために出資をどのくらい危うくしているのか、考えてください)」という言葉がNew York Timesによって取り上げられたところ、スローター氏は「一部だけを抜き出すことで印象が変わってしまう」ということで、メール全文を公開しています。

In the Interest of Transparency, New America Releases Email Correspondence with Barry Lynn
https://www.newamerica.org/new-america/press-releases/interest-transparency-new-america-releases-email-correspondence-barry-lynn/


公開されたメールには「just THINK about how you are imperiling funding for others」という文章の前に「We work so hard with you to get you 11th hour funding(私たちはあなたと共に、あなたが土壇場の資金を得るために努力しています)」と記されており、確かに少し印象が変わります。

しかし、リン氏は今回の一件を、Googleなどの企業が大きな力を持ったことによって独立した研究が脅かされるという事態だと見ているようです。NAFは慣例的に専門家たちに対して信頼に基づく自治を与えており、「専門家らは言いたいことを言えた」とのこと。しかし、Open Marketsが政治家たちの注目を浴びるようになってきたことと、特にヨーロッパにおいて規制する側が行動を起こすようになってきたことを理由に、Googleは態度を変えたのだとリン氏は考えています。

「Googleは非常に洗練された人々からなるチームです。彼らはどのようにお金を使い、どのように影響力を与えることで、望みをかなえることができるのかを知っています」「研究者に関して言えば、独占全般についてやGoogleについて書いたり、研究したりすること、そしてアメリカの公共の利益のために行うべきことが、行われない危険性があります」とリン氏は語りました。

なお、リン氏はOpen Marketsの活動を続けるべく、独立した非営利組織を創設しようとしているとのこと。この団体はまだ名前を持ちませんが、Citizens Against Monopolyというウェブサイトを立ち上げ、資金提供者を募っています。

Tell Google: Stop Killing Monopoly Research
https://citizensagainstmonopoly.org/

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