他店に先んじるためにレストランはビッグデータを使って厳しい競争に勝ち抜く時代

By Corinne Moncelli

IT技術の発展により、レストランなどのフード業界にもビッグデータ活用の波が押し寄せています。膨大な量のデータや顧客情報から客の好みの料理やサービスの方法をはじき出すことで、他店を出し抜いて厳しい競争に生き残ろうという取り組みなのですが、必ずしもレストラン業界全体がその活用を進めているというわけではなさそうです。

To Survive in Tough Times, Restaurants Turn to Data-Mining - The New York Times
https://www.nytimes.com/2017/08/25/dining/restaurant-software-analytics-data-mining.html

いまやフード業界ではPOSシステムやデータベースを使った管理が当たり前になりつつあります。客がインターネットを通じて店に予約を入れ、注文は店員が持つハンディ端末に入力され、支払いはクレジットカードで行われるという時代においては、全ての情報はトラッキング可能な状態でひも付けられ、膨大な量のデータを蓄積することで従来にはなかった新しいサービスが生まれてきています。

ロサンゼルスに拠点を置くクイックサービス型フードチェーンTender Greensを立ち上げたErik Oberholtzer氏は、「シリコンバレーは世の中の非効率な部分を見つけ出すことを仕事にしています。そして彼らがいま視線を送っているのがフード業界です」と語ります。

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かつて、レストランで売り上げをトラッキングするためには、帳簿や客ごとの好みやアレルギーの有無などを記録したメモが使われていました。その後、オーダーシステムはコンピューター化され、従来よりも有用で洗練されたデータが手に入るようになってきましたが、予約から注文、売り上げや顧客管理など、全てを統合したシステムが存在していないのが問題でした。

1999年にマンハッタンで起業したAveroは、そのようなニーズを満たした次世代のデータ解析を提供できるシステムとのこと。Averoソフトウェアは数々のデータを理解しやすい形に「翻訳」し、外部データを取得することで在庫高や材料費、売り上げ、顧客管理、予約管理や顧客の動向などを一元管理できるというものです。そして現在では、そのような「翻訳」の必要がなく、レストランの運営を1つの分析ソフトで把握できるSalidoのようなシステムが誕生しています。

これらのツールが提供しようとしているものは、「レストランがまだ小さく、今のように大きくはなかった時代に戻る」というもの。やや矛盾しているようにも聞こえるこの狙いですが、これはつまり顧客を効率よく把握することで、きめ細かなサービスを提供できるようにするということ。Tender GreensのOberholtzer氏は、「目指しているのは、『もし小さなレストランを一軒運営していて、全てのお客さんの名前を知っているような店だったらどんなことをしたいのか』ということを実現するために、テクノロジーを活用することです」と語っています。

約30店舗を運営しているOberholtzer氏は、レジ管理にはBrink、モバイルからのネット注文の受け付けと配達にはOlo、そして顧客アカウントと注文履歴の管理にはPunchhという風に、3つのシステムを組み合わせてデータの管理を行っているとのこと。これらのシステムを導入することでOberholtzer氏は、「どの顧客が定期的に利用しているのか、逆に来店していないのは誰か、そして顧客ごとの好みを把握することができます」と語ります。いつもニース風サラダをオーダーする客には、魚のハリバットを使った特別メニューを提案し、ベジタリアンの客には決して羊のローストのプロモーションを行わない、そういった顧客ごとのニーズを踏まえた特別オファーを、相手から言われる前にこちらから提供したいと語っています。

By Boris Tassev

シカゴにあるミシュランの星付きレストランOrioleでは、Upserveシステムを導入することで来店回数や支払額でトップ100の顧客を割り出しています。さらにこのシステムでは、初回予約の顧客に対しても顧客アカウントを作成しているとのこと。通常、誰が固定客になってくれるかわからないレストランの場合、必ずしも新規客ごとにアカウントを作成するわけではありませんが、この店ではシステムがそれを担ってくれています。

さらに、支払時に割り勘をした利用客の場合は、同行者についてもアカウントが作成されます。Upserveは顧客のクレジットカード情報や来店日、食べた料理などを店舗に提供し、それらの情報をもとにGoogleやFacebook、LinkedInなどのアカウントからその人のプロファイルを作成することが可能。そうすることで、次回来店時には、たとえ本人が予約を入れていなくても、来店客を名前で呼ぶことが可能になり、顧客にサプライズを提供することができるというわけです。

クレジットカードの種類でさえも、重要な手がかりになります。航空会社のカードで支払っていた場合だと、この顧客は旅行が多いのではと判断して情報が生成されます。また、スポーツ関係のカードの場合も同様に顧客の好みがデータ化されます。


顧客管理に限らず、料理の面でも同じようなデータ化が行われます。Upserveは、店舗が提供しているメニューを「Greatest Hits」(大ヒット作)、「Underperformers」(予想外れ)、「Hidden Gems」(隠れた宝石)、「One Hit Wonders」(一発屋)の4つに分類する「Magic Quadrant」(魔法の4分割)という機能を備えています。これにより、「固定客には人気だが一見さんは頼まないHidden Gems」や「最初は多くの人が頼むがリピートされないOne Hit Wonders」といった隠れた特性によって料理を分類することで、店側がメニューの管理をしやすくなるというものです。

非常に詳細なデータ管理ができるというわけですが、このシステムを気持ち悪いと感じる利用客がいることも事実といえます。そういう場合は、支払いはキャッシュで済ませ、予約は入れずに来店する、という方法をとることでオプトアウトすることも可能。一方、システムを受け入れた利用客には、より多くの情報が提供されることになります。

2015年1月から、世界中のレストランの予約ができるOpenTableでは、利用者ごとにカスタマイズされた「おすすめ」を提供するようになっています。これは、AmazonやApple Musicで自分の好みに応じた商品やコンテンツが表示されるのと同じようなもので、ユーザーがOpenTableにログインすると、アプリがユーザーの位置情報を取得し、近くにあってユーザーの好みに合いそうなレストランを提案することができるというもの。これは、ユーザーがレストランを見つけられるだけでなく、レストランが新しい客を見つけることにもつながっています。

レストランの情報とオンライン予約 | OpenTable [オープンテーブル]


しかし、システムに頼りすぎると実際のオペレーションとの乖離が出てくることもある模様。そんな時は「危険を承知でデータを無視してください」とAveroのMogavero氏は語ります。このようなシステムは、大量の顧客を抱えて大量の注文をさばくタイプの店舗に合っているといえますが、顧客の数を絞り、ハイエンドな料理とサービスを提供するタイプの店には利用価値はあまりないとのこと。ニューヨークでミシュランハイクラスのレストランを運営しているWill Guidara氏は、「お客さんと顔を合わせてサービスするような場合、そのようなシステムは必要ありません。それは我々のアプローチとは異なるものです」と語ります。

北カリフォルニアでミシュランの星月レストランManresaを運営するDavid Kinch氏の店舗では、客から予約が入った際にはGoogleなどを使って顧客の職業や関心事などのリサーチを行うとのことですが、そこから先は高いスキルを持つコンシェルジュやソムリエなどのスタッフによるサービスが最も重要とのこと。「定期的にそのようなシステムの提案を受けることはあります。誰もが『お客様のために』と言って持ってきますが、それは事実とはまるでかけ離れていると思います。私の店では、お客様とのアイコンタクトと笑顔に重きを置いています」とKinch氏は語っています。

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