生き物

なぜ私たちは「動物は言葉を理解しない」と思いつつも話しかけてしまうのか?

by Cristian Bortes www.eyeem.com/bortescristian

「猫に愛してるって1日に何回も伝えるのって変なことなのだろうか?」と妹から尋ねられた愛猫家であり編集者のArianna Reboliniさんが、「考えたことがなかったけれど、確かになぜペットに話しかけてしまうのだろう?」と疑問に思ったことから、動物と人間との関わりを研究する科学者にインタビューを敢行。なぜ私たちは「動物は人間の言葉を理解しない」と思いつつも話かけてしまうのか?ということをまとめています。

Why Do Humans Talk to Animals If They Can't Understand? - The Atlantic
https://www.theatlantic.com/health/archive/2017/08/talking-to-pets/537225/


ウェスタン・キャロライナ大学のHal Herzog氏によると、「人間には生来的に擬人観という性質が備わっているため、『ペットに話しかける』という行為は極めて自然なこと」とのこと。擬人観とは人間以外の動植物や無生物、神仏、概念などに対し人間と同様の姿形・性質を見いだすことを言います。

私たちは自分でも意識しないうちに擬人化を行っており、たとえば1度も使わなかった色鉛筆に対して申し訳ない気持ちになったり、充電できていないスマートフォンに対して怒りを感じたり、ヒッチハイクを行うロボットが破壊されたというニュースを聞いて悲しみを覚えたりするのも、人間が人間以外のものを擬人化しているがためです。

EXCLUSIVE PHOTO: evidence of vandalized hitchhiking robot in #philly. #hitchBOTinUSA trip is over.... pic.twitter.com/VAjvGQzF3u

— AndreaWBZ (@AndreaWBZ)


特に動物やAIなど、「命が感じられる」ものに対して、人は強い擬人化の衝動を持ちます。そしてペットは家族の一員として考えられていることも多いため、言葉が通じないと理解しつつも話しかけてしまうわけです。


しかし、これまでの研究によって、人が人に話しかけるのと、人がペットに話しかけるのとでは、その方法が大きく異なるということがわかっています。

動物と人間との関わりについての研究は、歴史の長さや治療効果への関心から、多くが犬を対象しています。そして、犬と人間の言葉のやり取りについて研究が行われたところ、人間が犬に対して話しかける時は短く、簡潔で、文法的に正しい言葉が投げかけられる傾向があるとのこと。そして、自由回答を求めるような「今日はどんな一日だった?」という質問が行われることは少なく、「楽しかった?」というような「はい」「いいえ」で答えられる質問の形を取り、声の高さも上がるそうです。これらの特徴は人間が赤ちゃんに話しかけるときと同様であり、大きな目や小さな鼻といった特徴が赤ん坊と動物とで共通してるためではないかと考えられています。

では、「擬人化」が人間の生来的な性質だとして、なぜ人によって程度に差があるのでしょうか。このことについては2008年に研究が行われました。この研究は「社会との関わりがなく、人との交流を『作り出す』必要がある」被験者と、「不確かな環境では不安を感じるために生活のコントロールをしたがる」被験者を対象としたものでした。上記のような2つのタイプに当てはまる人は、より動物を擬人化しやすいのでは?と研究者らは考えたわけです。

研究の結果、慢性的に孤独である被験者は、社会との関わりが多い人に比べてペットのことを「思いやりがある」「思慮深い」といった言葉で表現することが多く、ペットが自分を感情的に支えてくれていることを示しました。また、日常生活を自分でコントロールしたがる被験者も、そうでない人に比べて犬に感情や意識を投影させる傾向にあったとのこと。これは、動物とのやりとりを人間ベースで捉えることで、動物の行動を予測しようとするためだと見られています。

これは「友だちがいない人はペットを人間のように扱う」という意味ではありませんが、「動物が言葉を理解している」と信じたがっているからこそ人はペットに話しかけるということが言えそうです。まったく考えが読めず、何をするか分からないものと生活を一緒にするということは、ある意味で恐怖なのかもしれません。

一方で、Herzog氏は「私たちがペットに話しかけるとき、彼らは反応を返してくれます。犬は顔をあげてこっちを見るでしょう?私が飼っている猫に『外に出たい?』と聞くと彼女は近寄ってきてにゃあと鳴きます。彼女が私と同じ方法で言葉を処理しているとは思いませんが、それでもコミュニケーション・システムの基盤は言語なのです」と語っており、人間が動物に話しかけるという行為が単に一方通行ではないことを主張しています。

by Jonas Vincent

また、犬を対象とした2016年の研究で犬をfMRIにかけたところ、よく知っている言葉に対し、犬の脳が人間と同じように言葉を左半球で処理して右半球で詠唱していることがわかったとのこと。これをもって直ちに「犬は言語を理解している」と言えるわけではありませんが、少なくと認識しているとは言えるとのこと。

ただし、人間は生き物なら何にでも話しかけたくなるというわけではありません。Herzog氏は過去にヘビを飼っていたそうですが、ヘビに対しては話しかけるのが難しかったとしています。このことからも、やはり人間が人間に対するようにペットに話しかけるか否かは、大きな目や丸い鼻など「何か人間的なものをペットが持っているのか」や、「かわいさ」「反応」などが大きく関わっていると見られています。

2008年の研究に関わった行動科学者のNicholas Epley氏は、ペットと会話するという行為は、人間が他人における意識を認識することと同じ心理学的プロセスによるものだとしており、「それがどんなペットであれ、知能の表れ」だと語っています。ペットに話しかけるという行為をバカっぽいとみなす人がいるかもしれませんが、「我々のおろかさではなく、脳の素晴らしい能力による反応なのです」とのことです。

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in サイエンス,   生き物, Posted by darkhorse_log

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