リチウムイオン電池よりも高性能で安価な「空気亜鉛電池」の充放電劣化を抑える触媒をありふれた金属で生成することに成功


ありふれた金属の「亜鉛」と空気中の「酸素」を反応させることで電力を取り出す「空気亜鉛電池」は、軽量・安価・高エネルギー密度という三拍子そろった電池ですが、充電には向かないため用途が限られていました。オーストラリアの研究者が、充放電による空気亜鉛電池の劣化を最小限に抑える触媒を鉄やニッケルなどのありふれた安価な金属で生成することに成功しています。

Amorphous Bimetallic Oxide–Graphene Hybrids as Bifunctional Oxygen Electrocatalysts for Rechargeable Zn–Air Batteries - Wei - 2017 - Advanced Materials - Wiley Online Library
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/adma.201701410/abstract

University of Sydney charges ahead on zinc-air batteries - The University of Sydney
http://sydney.edu.au/news-opinion/news/2017/08/15/university-of-sydney-charges-ahead-on-zinc-air-batteries.html

正極に酸素、負極に亜鉛を使った空気亜鉛電池は、1.3kWh/kgという高い理論エネルギー密度をもつ電池で、実用化されているリチウムイオン電池の約2倍という高いエネルギー密度から、リチウムイオン電池の代替電池として期待されています。高いエネルギー密度だけでなく、正極に空気中の酸素を使うため正極活物質が不要でバッテリーセルの小型化・軽量化に有利な上に、世界に偏在するリチウムと違いどこでも取れる亜鉛が材料ということで、供給やコストの面でもリチウムイオン電池よりもはるかに優れた電池と言えます。

しかし、空気亜鉛電池は充放電を繰り返すと亜鉛電極に樹枝状晶(デンドライト)を析出してしまうため充電が可能な二次電池として使うのが難しく、補聴器用やフィルムカメラの露出計などに使い捨てが前提の一次電池として実用化されているにとどまっていました。


オーストラリアのシドニー大学のヤン・チェン教授らの研究チームは、空気亜鉛電池の充放電を繰り返し行っても化学的に安定性を保てる新しい触媒を開発することに成功しました。チェン教授らの開発した触媒は、鉄・コバルト・ニッケルという容易に手に入る一般的な金属から成り立っており、リチウムイオン電池のようなレアメタルを一切使わずに、エネルギー密度の高い充電可能な電池を実現しています。


従来は空気亜鉛二次電池の触媒には白金や酸化イリジウムなどの高価な金属が使われていたのに対して、組成・サイズ・結晶化の制御の3つのパラメーターを変化させることでありふれた安価な金属から触媒を作ることに成功したとのこと。電池の主な材料の亜鉛を含めて、安価でエネルギー密度の高い二次電池を作ることが期待されています。

なお、チェン教授らの研究チームは、120時間の充放電を60回繰り返した後でもバッテリー容量は10%しか低下していないことを確認しているとのこと。今後、さらなる改良によって、リチウムイオン電池と代替可能な性能を、より安価に安定供給できる空気亜鉛電池の実現に期待がかかります。

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