極小のロボットを「服用」して病気を治すという研究が進行中

by Natty

血中を移動して正確にがん腫瘍を攻撃できるナノロボットなど、近年、ロボットを体内で移動させて病気を治療するというナノバイオテクノロジーの研究が進んでいます。そした新たに、カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究者らは、人間の髪の毛の太さほどしかない極小のロボットを飲み込んで病気を治療する方法を研究しており、マウスを使った実験で、通常の服用方法よりも効果的であることを証明しました。

Micromotor-enabled active drug delivery for in vivo treatment of stomach infection | Nature Communications
https://www.nature.com/articles/s41467-017-00309-w

Tiny robots crawl through mouse's stomach to heal ulcers | New Scientist
https://www.newscientist.com/article/2144050-tiny-robots-crawl-through-mouses-stomach-to-heal-ulcers/


このロボットは体内を自律的に移動するマイクロモーターとなっており、マグネシウム製の球状のコアを複数のレイヤーで覆うという仕組みになっています。複数のレイヤーにはそれぞれ別の働きがあり、薬剤としての治療を行うレイヤーもあれば、胃腸壁にくっつく働きをしたり、マイクロモーターが球体の形状を維持できるようにするためのものもあります。マグネシウムのコアはマウスの体内に入ると胃酸に反応して水素の泡を生成し、これがモーターを動かす動力となりますが、同時に、このプロセスによって胃の中の酸性度はたちまち低くなるとのこと。抗生物質は胃酸によって効果が弱まってしまう場合があるので、胃の中の酸性度が低くなってはじめて、薬剤が放出されるよう設計されているわけです。


研究者らは、胃腸内が細菌感染した状態にあるマウスに対して、抗生物質を届けるマイクロモーターを5日にわたって毎日服用させました。その結果、通常の形で薬を服用するよりもマイクロモーターを使った方が効果がでやすいと判明したとのこと。

胃酸によって抗生物質の効果が弱まる場合があるため、これまで抗生物質やプロテインベースの薬を服用する際には、胃酸の分泌を弱める働きをする薬を服用する必要がありました。しかし、このようなプロトンポンプ阻害薬を長期的にとり続けていると頭痛・下痢・疲労・不安・憂うつといった副作用が現れることも。そのため、小型のロボットによって効果的に抗生物質を届けるという方法は、今後の治療を大きく変える一歩となると言えます。

by Jamie

なお、ロボットの服用後24時間以内にマウスの胃酸レベルは通常通りに戻ったとのこと。マイクロモーターは微生物によって分解できる物質で作られているので、体内に有害な物質を残すこともありません。

今回の研究結果を受けて、ペンシルバニア州立大学のThomas Mallouk教授は「これは非常に巧みで、すばらしい薬です。マイクロモーターは新しいアプローチですが、これが人々に与えるインパクトは大きなものになるでしょう」とコメント。マックス・プランク研究所のSamuel Sanchez氏も「マイクロモーター分野を前進させた研究だ」と延べ、これまでのアプローチよりも大きな利益が得られると示しました。

今後は、臨床試験を視野に入れ、より大型の動物を使った実験を行っていく予定とのことです。

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in サイエンス, Posted by logq_fa