委託された荷物を運ぶことで利益を得たり格安で海外に行けたりする「運び屋」はアリなのか?

By Mingo Hagen

アメリカのスタートアップである「Airmule」は、顧客から請け負った荷物を旅行者に預けて運んでもらうことで、荷物を素早く相手に届けることができるという、いわゆる「運び屋」の仲介サービスを提供しています。実際に荷物を運ぶ旅行者は、荷物の数に応じて旅行代金が安くなるというメリットがあるのですが、そこにはもちろん「値段なり」の交換条件が存在しているようです。

$99 Beijing Flights – With A Dangerous Catch – Seat 31B
http://www.seat31b.com/2017/08/99-beijing-flights-with-a-dangerous-catch/

日本でも「運び屋」などの名称で知られるこの手の行為は非常にリスクが高いことで知られており、違法な物品や薬物を輸出入した場合にはその責任を全て負う責任が課せられます。特に中国に麻薬などを持ち込んで発覚した場合、どんな理由であっても即「死刑」の判決を受けることになる非常にハイリスクな行為です。しかし、よく言われる「運び屋=即違法」ということではなく、実際には「違法薬物の運び屋は犯罪行為」というのが正確なところ。とはいえ、安易に見知らぬ人物から頼まれた荷物を運んでしまうと、間違いなくとんでもない事態に巻き込まれることにつながるので、常識的には関わり合いを持たない方がベターなのは言うまでもありません。

不正薬物の「運び屋」は重大な犯罪です : 税関 Japan Customs
http://www.customs.go.jp/mizugiwa/smuggler/

しかし、実際のビジネスの世界には、緊急性の高い書類やサンプル品などの違法性のない物品を、可能な限りの手を尽くしてでも一刻も早く相手に届けないといけないというケースが生じます。このような場合に、物品を貨物ではなく人の手荷物として運び、貨物に比べてシンプルな通関手続きを経て相手にいち早く届けるという仕事が存在しています。

Airmuleはそのようなニーズをネットを使ってマッチングさせるというサービスを提供しています。同社が提供するのは、アメリカの西海岸と中国の上海と北京をターゲットエリアに絞ったサービスで、双方の地域を発着する旅行者に急ぎの荷物を預けてハンドキャリーしてもらうというものです。もちろん、日本でもよく利用されているFedExやDHL、UPSなどの国際クーリエサービスは利用できるのですが、ハンドキャリーで持ち込むことで通関の手続きが簡素化され、空港に到着すればすぐに荷物を相手に渡すことができるというのが最大のメリットとなっています。

Airmuleがどのような仕組みでサービスを提供しているのかは、以下のムービーを見ればわかります。

How Airmule Works - YouTube


Airmuleは、アメリカの運輸保安庁(TSA)によって認証された輸送業者とパートナー関係を結び、一般の旅行者の手を借りて貨物を輸送するサービスを提供しています。


すでに飛行機を予約している場合は、Airmuleのサイトにログインしてフライトスケジュールを登録しておけば、その日程に合った荷物があった時に仕事が舞い込んできます。そしてその報酬は、登録しておいた銀行の口座に振り込まれる仕組み。


逆に、まだフライトを予約していない場合は、Airmuleのサイトでチケットを購入することも可能。この場合は、輸送の報酬を差し引いた金額でチケットを購入することが可能です。


フライト当日は、出発地の空港でAirmuleのスタッフから荷物を受け取り……


到着地にもAirmuleのスタッフがいるので、その人物に荷物を手渡せばOK。


輸送する荷物は全て事前の検査が行われているので、違法な荷物を運ばされてしまうことはないとのこと。また、輸送する荷物を事前に自分の目で確認する権利も保障されているので、納得のうえで荷物を運ぶことができるというわけです。


実際にAirmuleのサイトでロサンゼルスから上海までのチケットを見積もってみたのが以下の画面。1人で旅行し、荷物を1個請け負った場合のチケット価格は399ドル(約4万4000円)という非常に安いものになっています。


Airmuleを設立した3人のメンバーも、そんなニーズに目を付けた人たちです。オーストラリア出身のロリー・フェルトン氏は、上記のような海外から荷物を迅速に持ち込むニーズの多さを目の当たりにしたことから起業するに至ったとのこと。ちなみにフェルトン氏は、アメリカ人ラッパーであるグッチ・メインのバックダンサーを務めた経歴の持ち主であるとのこと。


ここでポイントとなるのが、FedExなどの大手業者とAirmuleなどの小規模業者の違いです。大手の業者は「Common Carrier」(一般運送業者)と呼ばれる業態をとっており、この場合は荷物に関する責任は運送業者ではなく荷物を発送または受領する者が負うことになっています。

つまり、業務として貨物の輸送を請け負って政府当局による認可を受けている場合は荷物に対する責任が課せられることはないのですが、Airmuleなどの業者から仕事を請け負っている場合だと、一般の旅行者として荷物を運んでいることになり、その責任は旅行者本人に課せられることになります。言い換えると、もし荷物が違法性のあるものだった場合、そのことが発覚した際にはAirmuleから仕事を請け負った旅行者が全て責任を負担することになる、というわけです。

Airmuleはこの件に対して対策をとっているとしています。同社が請け負う貨物は、TSAの調査プログラムに沿ったチェックを行っている、と公表していますが、これも客観的に確認できるものではありません。そこで、ブログ「Seat 31B」を運営するTProphet氏はAirmule氏に対して「Yes/Noで答えられるシンプルな質問をします。Airmuleは、FedExやUPSのように一般輸送業者として設立されていますか?」という質問を投げかけました。すると、フェルトン氏からは「別のOn Board Courier(OBC)サービスとして設立されています」という旨の回答が帰ってきたとのこと。OBCとはつまり、「運び屋」のこと。


ここでTProphet氏はさらに「ちょっとちょっと、簡単な質問ですよ。Airmuleは、一般輸送業者のような法的な保護を受けることはできますか?できませんか?」という質問を投げかけます。するとフェルトン氏は「ほかのOBCと同じ」と回答しています。


TProphet氏はこの対応について「きちんと答えられていない」という印象を受けたとのこと。北京に3年間住んだ経験があり、運び屋関連の現状もつぶさに目にしてきたTProphet氏からすれば、運び屋ビジネスは非常にリスクが高いものであり、一般の旅行者が少し安いチケットを得るためにそのリスクをとるのはとても理にかなわないと語っています。いくら事前のチェックがあったとしても、例えば中国に書籍を送った場合、その本の内容が中国政府の体勢を批判するものなどの「発禁本」であった場合、その責任は全て旅行者が負うことになります。そのため、TProphet氏はこのような形で格安チケットを手に入れようとしている人に対し、「やめておくべき。安いがその価値はない」と結論づけています。

その後、TProphet氏がブログを掲載したところ、フェルトン氏から抗議のメッセージがTwitterで寄せられたとのこと。「なぜ記事を掲載する前に相談してくれなかった」「OBCビジネスについてもっと説明できたのに」というコメントを寄せていますが、その中には「Unprofessional(プロじゃない)」や「Absurd(ふざけている)」など、明らかにいら立ちを感じさせる言葉も含まれています。


TProphet氏はその後も数回のやりとりを交わしたものの、フェルトン氏から明快な答えを得られていないと記しています。これはあくまでTProphet氏側の目線であることに留意する必要はあります。一方のAirmuleも、一般輸送業者とは異なる形態でビジネスを展開しており、可能な範囲で事前に安全性を高める措置はとっていることを明らかにしています。つまり、両者の言い分は「一般輸送業者に認められた免責条項」をめぐって微妙にすれ違った状態であることがわかります。運び屋ビジネスそのものは今に始まったものではありませんが、このようなリスクが存在することは十分に理解しておく必要があります。

なお、税関では「他人から不審な荷物は絶対に預からないようにして下さい」「他人から預かった荷物でも、携行した荷物については責任を問われます」と自分の持ち物以外の持ち運びに対して注意を促しています。実例を挙げた税関の資料は以下から見ることができます。

海外旅行者の皆様へ 通関案内
(PDF)http://www.customs.go.jp/zeikan/pamphlet/tsukan.pdf

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