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アポロ計画で人類を月へ送り届けた管制室を復元するためにNASAがKickstarterで資金集めを実施


1969年7月20日、アポロ11号で打ち上げられた3人の宇宙飛行士が、人類で初めて月面に着陸するという偉業を成し遂げました。その全ての行程を地球から管制していたのが、テキサス州ヒューストンにあるジョンソン宇宙センターの管制室「ミッションコントロール」です。アポロ計画の成功からまもなく50年が経とうとしている中、ジョンソン宇宙センター公式ビジターセンターである「スペースセンター・ヒューストン」が、アポロ計画当時そのままの姿にミッションコントロールを復元するための資金をクラウドファンディングサイトのKickstarterで集めるキャンペーンを実施しています。

Restore Historic Mission Control by Space Center Houston — Kickstarter
https://www.kickstarter.com/projects/589813043/restore-historic-mission-control

今回修復される予定になっているのが、映画「アポロ13」などで見たこともある人が多いはずのミッションコントロール(管制室)。1985年にはアメリカ合衆国国定歴史建造物の1つに指定されています。アポロ計画が終わった後の1970年代にはスペースシャトル計画のために改修されていたこともあり、アポロ計画当時のままの状態ではありません。


アポロ計画当時の様子はこんな感じ。真正面の壁には宇宙船の場所を示す画面がプロジェクターで投影されています。


向かって右側には、宇宙船からの映像を映し出すスクリーンも。


現役を退いたミッションコントロールは現在、スペースセンター・ヒューストンを訪れる来場者に公開されています。しかし、長年の展示による影響と減少傾向にある予算のために、歴史的偉業を成し遂げたこの施設は劣化が進んでおり、アメリカ合衆国国立公園局によって「危機的状況にある」と分類される状況に陥っているとのこと。また、人類の月面到達から50年を迎える2019年までにアポロ計画当時の状態を復元し、人類の英知の結集であるミッションコントロールを元の形に戻し、後世に伝えるための取り組みを進めています。

この取り組みに際し、スペースセンター・ヒューストンは500万ドル(約5億5000万円)の資金を募るキャンペーンを2016年に開始。ジョンソン宇宙センターに隣接し、当時の宇宙開発に携わった関係者が多く住んでいる街「City of Webster」は2017年初頭に310万ドル(約3億5000万円)の寄付を申し出ており、今回はさらにその資金の一部を、Kickstarterのキャンペーンで募ろうというのが狙いというわけです。Kickstarterを含めた今回の取り組みは「Webster Challenge」と名付けられているもので、Kickstarterの参加者から集まった出資額と全く同一の額を、City of Websterが上乗せして資金に充てるというもの。上限額は40万ドル(約4400万円)に設定されており、最大で合計80万ドル(約9000万円)の資金を計画に充てることで、最終目標の500万ドルを目指す起爆剤にしようというもの。


復元されるのは、ミッションコントロールに隣接する4つの部屋を含む施設全体で、特にスペースシャトル用に改装されて新しいテクノロジーを投入されていた管制用のコンソールも、わざわざアポロ計画当時の姿に限りなく近い状態に戻されるとのこと。


コンソールはカンザス州にある宇宙と科学の施設「Cosmosphere」へと送られ、専門家による修復作業が行われる予定。コンソールのボタンやダイヤルは全て当時そのままの状態に戻され、今ではほとんど見ることもなくなった白黒表示のCRTディスプレイも元に戻されるとのこと。


また、当時使われていたマニュアル類のバインダーやヘッドセット、さらには鉛筆や灰皿に至るまでが徹底的に復元され、1969年の状況をそのまま甦らせることになっているとのこと。ここまで徹底した復元を行うのは、当時の最先端技術を集結させたアポロ計画が成し遂げた偉業を後世に残すことが目指されているためです。


Kickstarterのキャンペーンページで公開されたムービーには、飛行主任として複数のアポロ計画を成功に導き、アポロ13号の時には冷静な判断で3名の宇宙飛行士を無事に地球へ帰還させたジーン・クランツ氏本人が登場してキャンペーンへの参加を募っています。


クラウドファンディングのKickstarterでのキャンペーンということで、出資者にはその額に応じたリワードが設定されています。記事作成時点で出資可能なプランは以下のようになっています。

・10ドル(約1100円):日系アメリカ人のグラフィックデザイナーで「スタートレック」シリーズに携わったマイケル・オクダ氏が今回のキャンペーンのために作成した特製「ミッションエンブレム」と解説のダウンロード権
・15ドル(約1700円):NASAが用いている「ミートボールロゴ」のステッカー (青い丸の中に「NASA」のロゴと星が描かれ、赤いV字の矢印がレイアウトされたロゴ)
・35ドル(約3900円):記念Tシャツ+ミートボールロゴのステッカー
・55ドル(約6100円):マイケル・オクダ氏によるミッションエンブレムの実物+ミートボールロゴのステッカー
・75ドル(約8300円):厚紙を切り抜いて作るアポロ司令船「コロンビア」の模型キット+ミッションエンブレム+ミートボールロゴのステッカー
・75ドル(約8300円):厚紙を切り抜いて作る「サターンVロケット」の模型キット+ミッションエンブレム+ミートボールロゴのステッカー
・100ドル(約1万1000円):ミッションコントロールを追ったドキュメンタリー映像「Mission Control: The Unsung Heroes of Apollo」のダウンロード権+ミッションエンブレム+ミートボールロゴのステッカー
・100ドル(約1万1000円):記念Tシャツ+ミッションエンブレム+ミートボールロゴのステッカー
・150ドル(約1万7000円):マイケル・オクダ氏のサイン入りミッションエンブレムのボード(掲示用)+ミートボールロゴのステッカー
・200ドル(約2万2000円):切り抜き済みのメタル製ボードを折り曲げて作るモデル「Metal Earth」のアポロ月着陸船月面車+厚紙を切り抜いて作るアポロ司令船「コロンビア」と「サターンVロケット」の模型キットのセット+ミッションエンブレム+ミートボールロゴのステッカー
・700ドル(約7万7000円):ミッションコントロールの状況を記した書籍「Go, Flight!: The Unsung Heroes of Mission Control」にジーン・クランツ氏および当時の管制メンバーがサインしたもの+ミッションコントロールを追ったドキュメンタリー映像「Mission Control: The Unsung Heroes of Apollo」のダウンロード権+ミッションエンブレム+ミートボールロゴのステッカー
・1000ドル(約11万円):スペースセンター・ヒューストンの全ての施設を見学できるメンバーシップ×2人分(34.95ドル×2相当)+ジョンソン宇宙センターの裏側を見ることができるバックステージツアー参加権+ミッションコントロールを追ったドキュメンタリー映像「Mission Control: The Unsung Heroes of Apollo」のダウンロード権+ミッションエンブレム+ミートボールロゴのステッカー
・1500ドル(約17万円):映画「オデッセイ」原作者であるアンディ・ウィアー氏とのミート&グリート参加権2人分+著書「Artemis」のサイン入り本2冊+ミッションエンブレム+ミートボールロゴのステッカー
・2500ドル(約28万円):アポロ管制官によるミッションコントロール解説ツアー参加+ランチに招待+新展示企画「Destination Moon」へのVIPチケット4人分+ミッションエンブレム
・5000ドル(約55万円):新展示企画「Destination Moon」へのVIPチケット4人分+スペースセンター・ヒューストンの「パトロン」クラスのメンバーシップ取得(1000ドル相当)+ジョンソン宇宙センターの裏側を見ることができるバックステージツアー参加権+ミッションコントロールを追ったドキュメンタリー映像「Mission Control: The Unsung Heroes of Apollo」のダウンロード権+ミッションエンブレム+
・1万ドル(約110万円):ジーン・クランツ氏との面会権(最大4人まで)+復元されるミッションコントロール施設に協力者として名前が刻まれる


キャンペーンでの目標額はひとまず25万ドル(約2800万円)が設定されていますが、記事作成時点で2000人近くの出資者が参加済みでこの金額はすでにクリア済み。出資の締め切りは日本時間で2017年8月19日(土)21時12分となっています。

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in メモ,   ハードウェア,   サイエンス, Posted by darkhorse_log

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