NetflixやYouTubeに無断で通信帯域を絞るテストをベライゾンが行ったことが発覚し騒ぎに

by Mike Mozart

「通信帯域が絞られる」ということはすなわち通信速度の低下を意味していて、YouTubeやNetflixのような映像配信を行っているサービスにとってはユーザーの快適度が下がるためあまり好ましいものではありません。ところが、アメリカの大手通信キャリアであるベライゾンが実際にYouTubeやNetflixを対象に、黙って通信帯域を絞るテストをしていたことが発覚、騒ぎになっています。

Is Verizon throttling Netflix data now? : verizon
https://www.reddit.com/r/verizon/comments/6o9l4x/is_verizon_throttling_netflix_data_now/


Verizon Throttles Netflix Subscribers In 'Test' It Doesn't Inform Customers About | Techdirt
https://www.techdirt.com/blog/netneutrality/articles/20170722/03252237838/verizon-throttles-netflix-subscribers-test-it-doesnt-inform-customers-about.shtml

この点を初期に指摘したのはソーシャルサイト・redditのユーザー、IBen95111氏です。

IBen95111氏が、LTEバンド13を利用して通信速度測定サイト・Speedtest.net by Ooklaで出した結果がコレ。下りは67.22Mbps、上りは20.31Mbps。


一方、同じくLTEバンド13を利用してFast.comで通信速度を測定すると11Mbps。Fast.comはNetflixの運営する測定サイトです。


この差は、測定を3度繰り返しても埋まることはなく、端末を再起動してすら同じ結果だったそうです。

念のために、LTEバンド4で接続した結果がコレ。Speedtest.netでは下り80.58Mbps、上り31.90Mbps。


Fast.comでは9.1Mbps。


測定方法になにか問題があるのかもしれないと、IBen95111氏は基地局のそばへ移動し、6mという距離で測定を行いました。すると、Speedtest.netでは下りが155.92Mbpsになるなど、大きな効果が現れましたが……


Fast.comはまたも11Mbpsで、速度に改善なし。


他にも要因があるのでは?という指摘に、IBen95111氏はFast.comにWi-Fiで接続すると300Mbpsだったと測定結果を公開し、なにかネットワークに問題があるのではないかと考えました。


モバイル関連フォーラム「Howard Forums」でも話題になり、GusHerb94というユーザーからは、YouTubeもNetflixと同様、10Mbpsに絞られていて、VPNを利用すると速度が3倍になるという情報が寄せられました。

Verizon Is Throttling Netflix?
http://www.howardforums.com/showthread.php/1898889-Verizon-Is-Throttling-Netflix

追及を受けたベライゾンは、ニュースサイトのArs TechnicaとThe Vergeに対して「新しいビデオ最適化システムのテストを行っていたが、一時的なテストであり、実際のビデオの映像には影響を与えるものではない」と、帯域制限を行っていたことを認める声明を送付しました。

Verizon accused of throttling Netflix and YouTube, admits to “video optimization” | Ars Technica
https://arstechnica.com/information-technology/2017/07/verizon-wireless-apparently-throttles-streaming-video-to-10mbps/


Verizon admits to throttling video in apparent violation of net neutrality - The Verge
https://www.theverge.com/2017/7/21/16010766/verizon-netflix-throttling-statement-net-neutrality-title-ii


ここで出てくる問題が「ネットワーク中立性」です。ネットワーク中立性とは、Wikipediaの記事冒頭から引用すると「ユーザー、コンテンツ、サイト、プラットフォーム、アプリケーション、接続している装置、通信モードによって差別あるいは区別することなく、インターネットサービスプロバイダ(インターネット接続業者)や各国政府が、インターネット上の全てのデータを平等に扱うべきだとする考え方」のこと。つまり「ビデオだから通信速度を落とそう」だとか、あるいは「特定のサービスだけは通信速度を速くしよう」だとか、そういう施策はしないようにしようという話です。

アメリカの連邦通信委員会(FCC)は2015年にネットワーク中立性の新しいルールを採択していますが、一方で「自由競争こそがインターネットの活力である」という意見も存在しており、ベライゾンはコムキャストなど他の大手ISPとともに反対派の立場を取っていました。

そして今回、このビデオ最適化の問題についてベライゾンは、2015年の新ルールで例外だとされた「合理的なネットワーク管理」だという主張を行っています。ベライゾンによると「ビデオ最適化システム」なので、「映像コンテンツ」という特定コンテンツに絞った管理ではあるものの、NetflixとYouTubeだけではなく、すべての映像コンテンツに対して制限はかけられていたというわけです。

The Vergeではこの一件について、ネットワーク中立性に「反している可能性はある」ものの「絶対・確実に反している」とは言い切れず、「合理的なネットワーク管理」と見なすかどうかもFCC次第であると、ベライゾン有利の見方をしています。2017年1月にトランプ大統領によって指名されたFCC委員長のアジット・V・パイ氏は、2015年の新ルール採択に反対した「ネット中立性批判派」であり、2010年に発表されたFCC Open Internet Order 2010を潰そうとしている人物。今後、アメリカのネット界隈は消費者の求める形ではなく、事業者の有利な形に展開していく可能性が危惧されます。

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