伝説のタツノコヒーローたちが集う「Infini-T Force(インフィニティフォース)」について笹川ひろし&大河原邦男が語る


2017年10月から、タツノコプロ55周年記念作品として「Infini-T Force(インフィニティフォース)」の放送が始まります。ガッチャマン、テッカマン、ポリマー、キャシャーンという往年の4大ヒーローが登場する作品だということで、タツノコプロ創立にも関わった笹川ひろしさんと、デザイン面に関わった大河原邦男さんが、作品を中心とした対談を行いました。

TVアニメ「infini-T Force(インフィニティ フォース)」公式サイト
http://www.infini-tforce.com/

対談が行われたのはタツノコプロ。


入口には人気作品のキャラクターやメカが描かれたパネルが設置されていました。55年の間に、誰もが知るような作品がいくつも生み出されてきました。


笹川ひろしさん(以下、笹川):
私はタツノコプロには創立時から関わっていました。国分寺市のかなり奥まった、当時雑木林だったようなところにスタジオを作って新人を募集し、だんだんと大勢の人が集まってくれて作り上げたという会社です。55周年と聞いて「えっ?もうそんなに経ってしまったのか?」という思いと、「よくここまで伸びたな」という感激があり、加えて、常々考えていることですが「今後はどうなっていくのかな」という思いもあります。

笹川:
そんなこんなで55年経って、タツノコはどう変わるだろうかと思っていた矢先に出たのがこの「Infini-T Force」です。私はタッチしていなくて、「やってるな」みたいな感じで製作の様子を見ていましたが、本当に大変そうでした。できあがったものを見せてもらいましたが、「とうとう時代は変わったんだな」とびっくりしました。アニメ制作にコンピューターが取り入れられて、部分的に変わってきてはいましたが、テレビシリーズでこれを作れたというのは相当インパクトがあるんじゃないかなと。タツノコも、次のステップにとうとうたどり着いたなという感じがします。協力を得つつ、テレビシリーズでこれだけの作品を作り上げられたということに、僕は本当に満足しています。

大河原邦男さん(以下、大河原):
私はタツノコ10周年のときに入社して「美術課」に配属されました。昔は背景をポスターカラーで描いていましたが、ポスターカラーで風景画や背景を描くにはテクニックが必要で、普通は描けないんです。そこで、上司の中村光毅さんが、新入社員にはまずは3ヶ月そういう練習をさせていました。私も入社してまずは背景の練習をしていたんですが、10月から始まる新作、のちに「科学忍者隊ガッチャマン」という名前になった作品のデザインの仕事を与えられました。まずはタイトルロゴのデザインで「鳥が飛んでいるようなロゴにしてくれ」という要望を受けて作ったものを提出したら、それがすぐOKになって「なんだか面白い仕事だな」と思いました。

はじめはガッチャマンが終わったらまた背景に戻るという話だったんですけど、ガッチャマンは幸いにも2年間、105話続きました。その後の「破裏拳ポリマー」は2クールで終わって、次の「宇宙の騎士テッカマン」の準備にも入りました。このテッカマンまでは上司の中村光毅さんがメインでデザインを担当されていましたが、「ゴワッパー5 ゴーダム」では「これは全部1人でやってみろ」ということで、
メインも含めて全て私がやりました。キャシャーンもクレジットはされていませんけれど、私の机の隣りにいた方が抜擢されて、その手伝いを結構やったので「全然絡んでない」というわけでもないです。

MC:
ちょうど今名前の挙がったガッチャマン、キャシャーン、テッカマン、ポリマーの4人が「Infini-T Force」に登場します。笹川さん、大河原さんが命を吹き込んだキャラクターが復活することになりますが、作品についてはどんな印象を受けられましたか?

大河原:
私はこれらの作品にはどっぷりで、この業界に入って、いわばタマゴから生まれてすぐにこの作品を作ったようなものです。それを3DCGでやるというのは、最初は無謀だなと思っていました。それで、できあがった1話から3話を2度見せてもらって、これをテレビシリーズでやるというのはちょっと、とんでもないことだぞと感じました。いま、メカCGはみんないいものができていますが、人物をフルCGでということになるとすごく違和感がありますよね。その点で「Infini-T Force」のCGのクオリティに関しては何の問題もないと思いました。昔からアニメが好きな人も、今の子どもさんも楽しんで見られるだろうと。なので、どういうお話に持って行くかというところが一番の難関かな。ちょっと、格好いいやつが多すぎるので(笑)

MC:
ありがとうございます。アニメは10月から放送なので、ファンの皆様にも楽しみにいただければと思います。タツノコプロからはちょっと離れた話になりますが、2017年がアニメ100周年だと言われる中で、お二人が今の100年から次の100年でアニメはどう変わると考えておられるか、あるいはどうなってほしいかということについて一言いただければと思います。

笹川:
手描きではなく機械で映像を作るということがますます盛んになると思います。そうするとどういう現象が起きてくるかというと、実写みたいだけど「ええ!これが絵なの!?」とびっくりするような重い作品と、人間の感性じゃない動きをする、たとえばギャグアニメとか極端な作品と、そういう二極に分かれるんじゃないかなと思っています。実写作品だと、役者さんに演じてもらいながらそれをなぞるモーションキャプチャを取り入れて、でもその部分がCGだと分からないように作ったりしますが、やがては役者さんすら不要になるかもしれません。それがどんどん発展していくと……どういう世界になるんでしょうね。人間味がだんだん薄れて、冷たい、人間なんだけれど人間じゃないみたいな、そういうものになってしまうのではないかということがちょっと不安で、そうなって欲しくはないなと思います。やはり映像でも、内面のドラマというのか、そういうところから人間の温かい血やいろんなものを感じられればいいなと。そのうち、昔みたいに手で描いたものをトレスして色を塗って撮影してコマ撮りをして、そういうアニメがいいなということになるかもしれないね。一周回って、そっちのほうが価値が出たりして(笑)

MC:
それはありえるかもしれないですね。ありがとうございます。大河原さんはどうですか?

大河原:
想像もつきません。私が入社した1972年のガッチャマンのとき、腕につけた小さなモニターでテレビが見られるなんてできないだろうと思っていたし、ロボットの二足歩行もできないと思っていました。この仕事を45年やってきたのですが、それは「たった45年」です。たとえば携帯電話は初期は肩にかけるショルダーフォンでしたが、今のスマートフォンなんてPCを持っているのと同じです。これは想像がつかないぐらいの速度の進化で、「今後どうなる」というのは想像もつかないです。

ただ、だんだんとアニメーションを見てくれる、見てもらいたい対象が上がってるような気がしています。子どもが幼児期、心を育てる時期に見るアニメって、昔は各局地上波で全局、午後6時から7時までやっていましたが、今はそういう環境ではないので、共通の話題を子どもたちが持てるような作品の発信の仕方や、テレビに限らずそれを見る媒体、その存在価値が今問われていうのではないだろうかと思います。私がこの業界に入って一番気にしてきたことは「お子様に夢を持ってもらいたい」ということです。子どもの脳裏に夢の種をまくような、そういうメカの仕事を45年やってきましたから。ちなみに、スケジュールに関しては、決められたスケジュールは45年間、落としたことはありません。これだけは他のメカデザイナーに自慢できると思っています。

MC:
一度も落とさないというのはすごいですね。

大河原:
必ず1日前、2日前には仕上げています。その代わり、クオリティはわかんないんですよ(笑)

MC:
とんでもない、ありがとうございます。

GIGAZINE(以下、G)
もうちょっとだけ質問させていただければと思います。笹川さん、大河原さんの仰ったとおり、この「Infini-T Force」のような映像でテレビシリーズをやるなんて大変なことだと感じました。これも映像技術の進歩が影響していると思いますが、何か「これはすごい技術がやってきているな」と感じた作品やモノはありますか?

大河原:
私はアニメやマンガにはあまり興味がないですからそちら方面はないですが、最近だとこんな手乗りサイズのちっちゃなドローンを買って、「これでも映像が撮れるんだ」とびっくりしました。まるでハチを操縦しているような感じなんですが、今はそこまで来ちゃっているんだなと。

G:
ご自身で操縦されているんですか?

大河原:
家の中で飛ばすようなちっちゃいやつです。スマートフォンで操縦できて、ネットで気になったので手に入れました。そうしたら、ちゃんと動画が撮れるんですよ。もう、我々には想像のつかない世界に入ったようです。

笹川:
アニメのほうだと、今は個人の人がひとりでもアニメを作っていますね。

大河原:
そうですね。私は完全に商業アニメの人間なので、今までに自分がやってきた作品より売れるものが出てくるとライバル視して燃えるのですが、「君の名は。」は私が担当する作品とは異なる方向なので、今は穴場なのかもしれないと感じています。いまいいものを作れば、男の子たちが食いついてくるんじゃないだろうかと。「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」では安彦さんが映像を作っていて、私に送ってくるんですけどまだ見ていません。それよりも今は仕事が面白いんです。

G:
仕事というとどういったものですか?

大河原:
いま、私はアニメの仕事をほとんどやっていないんです。タツノコさんのタイムボカンと、サンライズさんでガンダムぐらいです。それ以外で、我々のアニメを見て育ってきたような男子女子がいま大人になって「一緒に仕事をしましょう」と声をかけてくれます。それがすごく面白い。まだ発表できないものが4本、5本ぐらいあるほかに、中国からのアプローチもすごく多いです。

G:
中国!

大河原:
中国政府がバックアップして日本の技術者とコラボしたりというのも多いし、中国のキッチン道具メーカーがマスコットキャラクターをデザインしてくれと言ってくることもあります。消防車みたいなキャラクターとか、警視庁のとか、もう仕事の7割ぐらいはアニメ以外です。でも、仕事は全然アニメと関係ないものでも、すべて面白がってやっています。台湾のチャリティ企画では、ヘルメットに私がキャラクターを描いて、それをチャリティオークションにかけるというものもありました。

G:
幅広いお仕事をされているんですね。

大河原:
もう私はご奉仕しなければならない年齢になっているので、ボランティア関係が結構多いです。それでも、新たなオファーがあるとワクワクします。本当にアニメが好きでこの業界に入った人はずっとアニメの仕事を追いかけるところなんですが、私の場合はキャラクターを作って世の中にばらまいていくということを一生やっていこうと思っているので、どんな会社でも声をかけてくれれば面白いものは全部やるぞというスタンスです。先ほど、昔のタツノコさんは給料が安かったと言いましたが、こうして45年やっているとどうにか暮らせるようになりましたので、ギャランティーではなく、キャラクターをばらまく方を中心にしようと、そんな心境です。昔は50歳、60歳でおじいさんだと思っていましたが、私は今年で70歳です。でも、こうして私より先輩の笹川さんも頑張っておられますから……。

笹川:
何を言っているんです、まだ大河原アニメも健在ですよ。何か作りましょう。

大河原:
年寄りが集まって1本作ったら、すごくいいものが出来るだろうなという感じはありますね。まだ、昔やっていた人たちが現役にもいっぱいいますよ。でも、プロデューサーが若いから、そういうところには仕事を持ってこないんですよね。引退はしていないんだけれど、仕事を頼みに来てくれないと聞きます。

笹川:
恐れ多くて行けないんじゃないですか?大河原さんにお願いに行ったら、すごいギャラを要求されるんじゃないだろうかと思っていたり(笑)

大河原:
そう考えてるみたいですね。私はこの45年間言い値ですから。相手が払うと言った値段で仕事をやることにしております。それは大丈夫なんですけど(笑)

笹川:
大河原さんはすごい才能の持ち主ですから、やっぱりアニメでも活躍してほしいですね。

大河原:
仕事があれば、ぜひ!

笹川:
私は、大河原さんにはずっと助けられています。タイムボカンシリーズでは、タイトルが変わるたびにメカがみんな変わるでしょう。あれを決めるのは大変なんです。そんなときに、大河原さんは木型まで作ってくれて「ここがこうなって、こうなるんですよ」って言ってくれます。「こんなメカはどうかな」と提案しただけで、そこまでやってくれるから、相手方にも「なるほど、じゃあこれで行きましょう」と言っていただけるんです。そんな場面が何回もありました。「大河原」という名前だけで、もう安心度100%です。

G:
お二人が組んだ新しい作品、見られるならすごく楽しみですね。

大河原:
笹川さんがお元気なうちにやらなければいけませんね!

G:
本日はいろいろと楽しいお話をありがとうございました。


笹川さんや大河原さんが生みだした「科学忍者隊ガッチャマン」「宇宙の騎士テッカマン」「破裏拳ポリマー」「新造人間キャシャーン」に最大限のリスペクトを払いつつ、リデザインされた姿でヒーローたちが集うタツノコプロ55周年記念作品「Infini-T Force」。「アニメエキスポ2017」では世界最速プレミア上映が行われました。


作品についての情報はこれからどんどんと明かされていくので、どうぞお楽しみに。現在公開されているティザーPVはこんな感じです。

「Infini-T Force(インフィニティ フォース)」ティザーPV - YouTube

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