「インターネット」出現より以前からフランスでは「Minitel(ミニテル)」がオンラインネットワークを構築していた

by kevin

「インターネット」とは、通信プロトコルとしてインターネット・プロトコル(IP)を利用して接続されたコンピューターネットワークのことで、今や日常の中に溶け込んだ存在となっています。しかし、フランスではこの「インターネット」普及以前から「Minitel(ミニテル)」と呼ばれるシステムが隆盛を誇り、2012年まで存在していました。

Minitel: The Online World France Built Before the Web - IEEE Spectrum
http://spectrum.ieee.org/computing/networks/minitel-the-online-world-france-built-before-the-web


1970年代、フランスの電話回線網事情は4700万のフランス市民を700万未満の電話線で支えるという、先進国の中でも特にひどい状態にありました。このままではやがてアメリカの技術に負けてしまうと危惧した官僚のシモン・ノラと政府のアドバイザーを務めていたアラン・マンクは1978年、「The Computerization of Society」と題した報告書をヴァレリー・ジスカール・デスタン大統領のもとに提出しました。

電話帳の印刷費用やテレホンオペレーターの人件費を削りたいという郵政電信電話省(PTT)の目論見もあって「ミニテル」が誕生。1978年のうちに試験運用がはじまり、1982年には正式サービスが始まったとのこと。「ミニテル」という名前はフランス語の「Médiuminteractif parnumérisationd'informationtéléphonique(電話情報をデジタル化するインタラクティブメディア)」の略称だそうです。

by Frédéric BISSON

「ミニテル」ではオンラインでの購入、列車予約、株価チェック、電話帳検索、メールボックス作成、チャットなどをすることができました。PTTは早くサービスを普及させるために、何百万台もの端末の制作を命じ、電話加入者に無償貸与しました。「ミニテル」はテレビでも盛んに宣伝を行っていて、郵便局でミニテル端末をもらってきた人は電話線をプラグに接続し、ローカルゲートウェイにダイヤルすればすぐにネットワークに接続ができました。この当時のインターネットは、高価なコンピューターを入手し、ややこしいソフトウェアをインストールして、高額の長距離電話料金を支払った上で、さらに利用したいサービスごとにサービス提供者に費用を前払いする必要があったとのことなので、「ミニテル」はかなり先を行く存在であったことが分かります。

先進性については、ヒーターやVHSレコーダー(ビデオ)、セキュリティアラーム、スプリンクラーなどの操作を遠隔で行える「モノのインターネット(Internet of Things:IoT)」を取り入れていたという点も挙げられます。

また、たとえばCortanaやSiriのように自然言語インターフェースを利用して個別化された情報を提供するサービスとして「クレア」と「ソフィー」、チケット販売の「Ticketmaster」より前に同種のサービスとして「Billetel」、テレバンキング以前に「Minitel banking」と、現代を先取りしたようなサービスの数々が存在しました。

需要の増大と共にサービス提供者側のハードウェア市場も拡大。フランスでは国内生産量の拡大につなげたいところでしたが、ハッカー起業家からのUNIXサポート要求の声に、フランスのコンピューター企業であるグループ・ブルなどがノーを突きつけた結果、サービスをホストするマシンはAT&T、ヒューレット・パッカード、テキサス・インスツルメンツなど、アメリカ企業のシェアを増やす結果となりました。

「ミニテル」の利用が最高潮に達したのは1993年で、その利用時間は9000万時間にも達し、利用可能なサービスは2万6000種類、売上高は約10億ユーロ(約1000億円)にも上りました。この年がピークとなったのは、翌1994年からインターネットの普及が始まったため。フランス語以外への拒絶反応から「ミニテル」を使い続ける人も少なからずいましたが、移行の流れは止まらず、2010年にはサービス売上高が3000万ユーロ(約30億円)まで減少。売上高のうち85%はサービス提供会社の取り分となるため、ネットワーク維持費用のことも考えて、フランステレコム(元PTT)は2012年6月30日をもってサービスを終了させました。

AFP通信によると、高速インターネット回線が利用できない遠隔地では末期まで「ミニテル」が活用され、特に、番号を打つだけでアクセスできることから、農家が急ぎの知らせでよく利用していたとのこと。

日本でもインターネットとは別のネットワークだった「パソコン通信」が1980年代から2000年代にかけて隆盛を誇りましたが、2006年3月末で商用最大手のNIFTY-Serve(ニフティサーブ)がサービス提供を終えて、事実上終了を迎えています。

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