クジラやイルカは溺れずにどうやって眠るのか?

By Jennifer C.

一生を海で過ごすクジラやイルカなどの海洋哺乳類は、水中で生きているとはいっても哺乳類なので、水中で呼吸することはできず水面に出て呼吸をする必要があります。海洋哺乳類の中には呼吸をしないまま1時間近くも潜水し続けることができる種もいるほどですが、それでも睡眠をとる必要はあるわけで、「一体全体溺れずにどうやって睡眠しているのか?」という疑問が湧き上がってきます。そんな海洋哺乳類の睡眠について、Scientific Americanがまとめています。

How do Whales and Dolphins Sleep Without Drowning? - Scientific American
https://www.scientificamerican.com/article/how-do-whales-and-dolphin/


水族館や動物園におけるハンドウイルカの観察や、野生のクジラやイルカの観察の中で、海洋哺乳類の睡眠方法は大まかに分けると2つに分類できるそうです。ひとつは「水中で垂直または水平に伸びて休息する」というもので、もうひとつは「別の動物の側でゆっくり泳ぎながら眠る」というものです。イルカは主に夜間により深い睡眠形態に入るのですが、この状態のイルカは水面に浮かんだ丸太(ログ)のように見えるため、「ロギング」と呼ばれています。

By Jennifer C.

海洋哺乳類が眠ったり泳いだりの動作を同時にすることは、人間で言うところの「昼寝」の状態に近いと言えます。クジラやイルカの子どもは、生まれてから数週間の間は「脂肪の量が十分でない」などの理由から上手く浮くことができない場合があります。それではどうやって子どものクジラやイルカが泳いでいるのかというと、母親が泳いでいる後ろをスリップストリームを利用するように泳ぐそうです。つまり、子どものクジラやイルカは母親にフォローしてもらって、食事や睡眠をとっているというわけ。もちろんその間、母親は泳ぎを止めることはできないので、泳ぎながら食事や睡眠をとります。

あまりたくさん泳ぎすぎると、幼い海洋哺乳類は弱ってしまいます。そのため、大人の雄イルカは通常はペアで泳ぎ、睡眠時は並んでゆっくり泳ぐそうです。それに対して、雌または若いイルカの場合は、群れで移動しながら一般的には同じエリアで休憩をとり、泳ぎながら睡眠するためにイルカ同士でペアになることもあるそうです。

睡眠時、ハンドウイルカは脳の半分を眠らせるのですが、もう片方は低いレベルの覚醒状態にあります。これは捕食者や障害物から自分の身を守ったり、いつ呼吸のために水面に浮上する必要があるのかを判断したりするために行われているものです。この半分眠った状態は約2時間でスイッチされることとなり、最初に右側の脳が眠っていた場合は、2時間後に左側の脳が眠ることとなります。なお、この眠り方は「半球睡眠」と呼ばれるもので、イルカやクジラなどの海洋哺乳類の他、渡り鳥などの一部の動物でも見られるそうです。

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イルカは一般的に夜に寝ますが、1度に数時間の睡眠しかとりません。これは、イルカが深夜に起きる魚やイカを食料としているためです。しかし、ハンドウイルカの脳波(EEG)によれば、1日平均でなんと33.4%もの時間眠っているそうです。また、クジラが夢を見るのかどうかは定かではありませんが、1晩で6分のレム睡眠が確認されたという報告もあります。

睡眠中に溺れることを避けるため、海洋哺乳類は呼吸・発声に使用する「噴気孔(潮吹き穴)」をコントロールすることが重要になります。この噴気孔は動物の自発的な制御下で開閉すると考えられています。人間は眠っている間、つまりは無意識下でも呼吸が可能ですが、クジラやイルカは自発的な呼吸器系を持っているため意識しなければ呼吸をすることができないというわけ。議論の余地はあるものの、多くの科学者は呼吸のためにイルカやクジラは睡眠時も意識を保っているのではと推察しています。

さらに、海洋哺乳類は他の哺乳類よりも長く息を止められるという特性を持っています。これは海洋哺乳類の肺が他の動物のものよりも大きいからで、1度の呼吸でより多くの空気を取り込むことが可能だからです。また、1度の呼吸で多くの空気を交換できるため、多くの酸素を体中に運ぶことができます。そして、潜水する海洋哺乳類の血液は、心臓・脳・泳ぐ際に使用する筋肉という「潜水時に酸素を必要とする体の部位」にだけ運べるようになっているため、頻繁に呼吸をしなくても効率的に泳ぐことができるとのことです。

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加えて、海洋哺乳類は二酸化炭素に対してより高い耐性を持っています。クジラやイルカの脳は二酸化炭素レベルが人間が許容できるものよりもはるかに高いそうです。このメカニズムは海洋哺乳類の潜水反応の一部であり、水の中で暮らすことにおける適応の結果であるとも言えます。これは特に睡眠中に役立ち、クジラもイルカも睡眠中は息をする回数が減ります。

これらの仕組みから、海洋生物が水中で溺死することは非常にまれですが、代わりに水中で空気不足から窒息することはあるとのこと。生まれたばかりのイルカやクジラにとって「初めての呼吸」はとても重要なものであり、死体を解剖してみると、空気を吸ったことのない子どもがしばしば発見されるそうです。また、海洋哺乳類が漁網にかかった場合も、水面に出られなくなり窒息死してしまっている場合があるようです。

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in サイエンス,  生き物, Posted by logu_ii