格安モバイルバッテリーの代名詞「Anker(アンカー)」の誕生秘話

By Arwen_7

2011年の夏、スティーブン・ヤンはGoogleを退職し、AppleやSamsungといった一流メーカーのものよりも安価で優れたスマートフォン向けアクセサリーという、当時世界が一番必要としていた製品たちを作るためにAnker(アンカー)を立ち上げました。バッテリーやケーブル、充電器といった付属品はスマートフォンを使うのに欠かせないものですが、ヤンさんがGoogleを退職した当時、会社を設立したり家電製品を製造したり製品を販売したりするためのノウハウは一切持っていなかったそうです。

How Anker is beating Apple and Samsung at their own accessory game - The Verge
https://www.theverge.com/2017/5/22/15673712/anker-battery-charger-amazon-empire-steven-yang-interview

ヤンさんはAnkerを立ち上げたばかりの頃を回想しながら、「私はGoogleのソフトウェアエンジニアでした。なので、私は家電製造業界にひとりの知り合いもいませんでした」と話しています。そんなAnkerは、Amazonマーケットプレイスで顧客に直接商品を売り込むほんとうに小さなチームからスタートしました。「Anker」という社名は、ドイツ語での意味を持つ「アンカー」からつけたそうです。

それから数年が経過し、Ankerは今ではAmazonのモバイルバッテリー部門で最も人気の高いブランドにまで成長しました。2016年の7月にポケモンGOがリリースされた後、世界的に需要が高まったことで大きな注目を集めたモバイルバッテリーですが、それ以前から標準的なスマートフォンはフル充電していても丸1日バッテリーがもたないことも多く、一部で重宝されていました。モバイルバッテリー市場はアメリカだけでも2017年3月までの12か月でなんと3億6000万ドル(約400億円)を生み出す巨大市場に成長しており、その市場をKmashi、Jackery、iMutoなどと牽引するのが「Anker」です。

Anker | ホーム


ここ10年間でスマートフォンは劇的な進歩を遂げてきましたが、それでもバッテリーが長く続くことはありません。 携帯電話、特にスマートフォンは画面が大きく、優れたカメラを搭載しており、さらに薄くて高速で動作するため、バッテリーは最高でも36時間程度しかもちません。この原因はリチウムイオン電池の基本的な部分にあり、限られたサイズでは容量も制約されてしまうからです。

コーネル大学の化学工学科で教授を務めるリンデン・アーチャーさんによると、今日のリチウムイオン電池は潜在的な貯蔵能力の約5分の1しか発揮していないそうです。しかし、それでも今日のバッテリー技術はその約90%の性能を発揮しているとのこと。The Wall Street Journalの技術コラムニストであるジョアンナ・スターン氏が、「Ankerの成功の大部分は、バッテリーが長持ちしないという事実にこそあります」と語るように、バッテリー技術の停滞こそがAnkerの繁栄を可能にした1番の要因と言えます。

Ankerはユーザーの「苦痛」に対処するためにモバイルバッテリーを作る必要があることを知っていたのです。しかし、Ankerにとってはモバイルバッテリーの製造は起業当初の目的ではありませんでした。ヤンさんは、「2009年に購入したDellやHPのラップトップを持っていると仮定して、2011年にはバッテリーがダメになり、新しいものを購入したいと思うようになるでしょう。しかし、当時はDellやHPといったメーカーから直接バッテリーを購入するか、安価なので性能的には不十分なバッテリーを購入するかの2つの選択肢しかありませんでした」と、2000年代後半にAnkerを起業するきっかけとなった出来事について語っています。

ヤンさんはより高性能なアクセサリー、つまりは元のメーカーで交換するよりもコストがかからず、それでいて消費者の信頼を得るには十分な品質の高いものを提供したいと考えたそうです。しかし、実際にそういった製品を売り出す前に、ヤンさんたちはそういった「安価で高性能なサードパーティー製アクセサリー」を作るための方法を見つけ出す必要がありました。


2011年7月にヤンさんがGoogleを退職した後、最初のノートパソコンのバッテリーを試作するためになんと12か月もかかったそうです。さらに、信頼できる製造パートナーを見つけるためにチームは中国・深センへ移ります。試作の後にすぐに中国へ渡った理由についてヤンさんは、「カリフォルニアに滞在し、試作品ができたらFedExで送ってもらうという方法をとったとしてもうまくいかないであろうことはわかっていたから」と語っています。

特にアメリカでは多くのハードウェア企業が激しい競争を繰り広げており、締め切りを逃したり、数か月の遅れを招いています。 堅実なサプライチェーンはハードウェア企業の存続にとって非常に重要な要素で、コンサルティング業界全体がベンチャーに優れたサプライヤーを割り当てられるように支援を行っているそうです。

こういった落とし穴を避けるために白羽の矢が立ったのが、Googleの中国でのセールス部門を担当していたDongpong Zhaoさん。Zhaoさんは2012年の初めにAnkerに加わり、ヤンさんが同社のサプライチェーンを構築する手助けを行いました。この頃のAnkerは約10人ほどで構成されており、「実際の会社のようなものではなく、小さな家族経営のようなものでした」とヤンさん。Zhaoさんの協力のもとAnkerは最初の年にサプライチェーンを構築し、Amazonで直接製品を販売するためのテストを開始しています。


そこからAnkerはHTC製スマートフォンの「HTC Sensation」用の交換バッテリーの開発に取り組みます。当時についてヤンさんは、「携帯電話のバッテリーセルをわずかですが上回る容量にすることができました。初期の段階で、パナソニックとアノードのサプライヤーであるBTRを含むアジアのサプライヤーと密接な関係を構築でき、新しい電池のテストと迅速な開発が可能となりました」と述べています。

そして、「スマートデバイスの爆発的な増加を絶好の機会として見たことは間違いありません」とヤンさんが語るように、そこからAnkerはモバイルバッテリーや充電器、ケーブルなどスマートフォン関連アクセサリー市場に積極的に進出していきます。そして2012年末までにモバイルバッテリーに多くのリソースをつぎ込むようになり、この頃には1日あたり100個から1000個の製品が売れていたそうです。

しかし、「挑戦は製品を売ることではなかった」とヤンさんは語ります。「製品を作り、それらが高品質であることを確認していました。だからこそ我々は研究開発と製品開発に多くの資金を費やしているんです」とのこと。ヤンさんが語るように、Amazonのマーケットプレイスでは、レビュー・価格・検索ランキングを工夫することで、Ankerの製品は収益性の高いものに変化していったそうです。

家電製品の動向が浮き彫りになるアクセサリー市場にとって、真のブレークスルーはまれです。 しかし、Ankerは「バッテリー自体は改善していないかもしれないが、充電時間は改善傾向にある」という認識のもと、モバイルバッテリーに注力してきました。実際、PhoneArenaの調査によると、2013年はデバイスを100%充電するのに平均2時間以上かかっていたそうですが、2017年時点ではその約半分の時間で充電が完了するようになっています。


そんな中でAnkerがリリースしたのが、5つのUSBポートを備えたカードサイズのUSB急速充電器「PowerPort 5」。2015年にリリースされた当初は5つのデバイスを同時に最適速度で充電可能な唯一のUSB急速充電器でした。また、Ankerのモバイルバッテリーシリーズのスタンダードである「PowerCore」シリーズでは、クレジットカードサイズで厚さは1インチ(約2.54cm)ほどの容量10000mAhのモバイルバッテリーも登場しています。これはバッテリーが空っぽのiPhone 7を約60分でフル充電可能で、これを約4回繰り返し行うことができるとのことです。

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技術的な利点の他、Anker製品は外見にもこだわりを持っています。ブランドマネージャのElisa Lu氏は、ユーザーが製品を受け取りパッケージを開いて使用する瞬間までを楽しめるように、各製品のパッケージングにこだわりを持っていることを明かしています。Anker製品は白と水色の箱に入っており、「Anker」というブランドロゴが箱の正面に印字されています。

他にもAnkerは赤色のケーブルや赤色の電池パックなどを販売しており、これらはすべてビジネス面での戦略的な目的を持っているとのこと。「消費者は製品を購入するとき、信頼できる会社から製品を入手していることを知りたいと思います」とLu氏は語っており、パッケージの細部にまでこだわることでスマートフォンのアクセサリーなのにまるでスマートフォンなどの製品を開封しているかのような特別感を演出しているそうです。

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in ハードウェア, Posted by logu_ii