サイエンス

MicrosoftはDNAストレージをクラウドサービスに活用する計画を持っている

By Thomas Wensing

Microsoftが1グラムのDNAに10億テラバイト=1ゼタバイトものデータを保存可能な「DNAメモリ」技術に投資していることが2016年4月に明らかになりましたが、Microsoftはこれをクラウドストレージに活用する計画を練っているようです。

Microsoft Has a Plan to Add DNA Data Storage to Its Cloud - MIT Technology Review
https://www.technologyreview.com/s/607880/microsoft-has-a-plan-to-add-dna-data-storage-to-its-cloud/


Microsoftの研究機関であるMicrosoft Researchで働くコンピューターアーキテクトが、「データセンター内で使用可能なDNAに基づくストレージシステムの構築」をMicrosoftが計画していることを明かしています。Microsoft ResearchのパートナーアーキテクトであるDoug Carmean氏は、「3年間の商用プロトタイプシステムで、データセンター内のDNAストレージに一定量のデータを保存してきました」と語っています。

DNAストレージについては、「情報のアーカイブに用いる一般的なフォーマットに取って代わるものにする」という野心的な目標をMicrosoftは掲げており、Carmean氏は「我々は『アナタのためのDNAによるストレージ』といったようなブランドになることを望んでいます」とコメントしています。


Microsoft以外にも複数のハイテク企業がムービーや写真、ドキュメントなどをDNAを用いたストレージの中に保存しようという一見奇抜なアイデアに取り組んでいます。DNAストレージがどのようなものなのかは以下の記事を読むとわかります。

ハードディスクを上回る超大容量・低維持コストで全世界データの保存も可能な「DNAストレージ」とは? - GIGAZINE


多くのハイテク企業がDNAストレージの開発に取り組む現状について、半導体関連の調査企業でチーフサイエンティストを務めるビクター・チルノフ氏は、「コンピューターのメモリを縮小する取り組みは物理的な限界に差しかかっていますが、DNAは信じられないほどの密度でデータを保存できます」とその有用性について語っています。実際にDNAストレージが実現すれば、現代までに作成されてきたすべての映画が角砂糖サイズよりも小さなストレージに保存できてしまうとのこと。

2016年7月、Microsoftはミュージックビデオを含む200メガバイトのデータをDNAに保存したことを発表しており、2017年3月には論文も公表されています。

ただし、実用的なストレージシステムとするには、デジタルビットをDNAコードに変換する際の手間とコストがかかりすぎるという問題が残っています。実験プロジェクトではMicrosoftは1344万8372個のDNAを用いたそうですが、専門家はこれだけの材料を揃えるには80万ドル(約8900万円)程度かかったのではとコメントしています。同じように、コロンビア大学のYaniv Erlich教授も、「DNAストレージの主な問題はコストだ」と発言しています。なお、MicrosoftはDNAストレージについて、「普及する前にコストを1万分の1にまで下げる必要がある」としており、多くの専門家は賛同していないものの、コンピューター産業が望むことでこのコスト削減は可能であるとみています。

By University of Michigan School of Natural Resources & Environment

また、デジタルデータをDNAに書き込むプロセスを自動化することも重要です。現時点では実験を実施するために数週間を要しており、DNAストレージへのデータ書き込み速度は毎秒400バイト程度しかないとCarmean氏は見積もっています。なお、Microsoftはこの書き込み速度は毎秒100メガバイト程度にまで高速化する必要があるとしています。

ただし、チルノフ氏によればコンピューターチップメーカーは従来メディアには物理的な限界が存在するため、DNAストレージの開発を真剣に検討していると指摘。実際、チルノフ氏が関わる組織は応用研究を行うためにMicrosoftやIntelなどから資金提供を受けているとのこと。DNAについては「柔らかすぎる」という指摘もあったそうですが、その寿命はシリコンデバイスよりも100~1000倍も長く、その証拠にマンモスの骨や古代の人間の遺体などからDNAは頻繁に回収されています。しかし、DNAの最も重要な特徴は密度であり、1京バイトの情報を一辺1mmの立方体の中に保持できる点にあります。

なお、Microsoft Researchの広報担当者は、現時点で製品計画の詳細はないと述べていますが、社内でもDNAストレージというアプローチに対する理解者が増加しているとしています。

By Caroline Davis2010

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
ハードディスクを上回る超大容量・低維持コストで全世界データの保存も可能な「DNAストレージ」とは? - GIGAZINE

Microsoftが1グラムのDNAに10億テラバイト=1ゼタバイトものデータを保存する「DNAメモリ」技術に出資 - GIGAZINE

人類の記憶を塩の岩盤の中に保存する壮大な計画「Memory Of Mankind」では、個人の記憶も保存が可能 - GIGAZINE

ハードディスクが物理的にデータを記録している仕組みがわかるムービー「How do hard drives work?」 - GIGAZINE

ハードディスクの寿命傾向がストレージ会社が集めたデータから明らかに - GIGAZINE

in ハードウェア,   サイエンス, Posted by logu_ii

You can read the machine translated English article here.