取材

「EVのフェラーリ」を目指す京大発ベンチャーGLMと旭化成によるカタチだけでなく本当に走れる次世代EVコンセプトカー「AKXY」発表


2017年5月17日、京都大学発のEV(電気自動車)メーカー・GLMと旭化成が共同で開発した次世代EVコンセプトカー「AKXY(アクシー)」が発表されました。このコンセプトカーは、旭化成グループの自動車関連部材を使用しながら、内部はGLMのスポーツEV「トミーカイラZZ」のプラットフォーム部分を活用して開発したものということで、構想だけで走行できない「コンセプトカー」とは大きく異なって「実際に走る」というのが大きな特長。実際に走行する様子も含めた発表会が開催されたので実車を見に行ってきました。

走るコンセプトカー「AKXY(アクシー)」の完成について | プレスリリース | 旭化成株式会社
https://www.asahi-kasei.co.jp/asahi/jp/news/2017/ze170517.html

AKXYが実際に走行して登場する様子はこんな感じでした。いわゆる「コンセプトカー」のほとんどが実際には走行できない「モックアップ」状態であるのに比べ、この車体は実際に走行できるという特長をを備えています。

旭化成×GLMの走るコンセプトカー「AKXY (アクシー)」が走る様子 - YouTube


姿を現した旭化成×GKMによるコンセプトカー「AKXY」。シャープなラインの顔つきを持ち、スポーツカーとSUVを融合した「次世代クロスオーバー車」としてのコンセプトを形にしたものです。


サイドから見ると、リアがギュッと絞り込まれた形状で、その姿は小舟のようにも見えます。ドアが片側1枚のクーペデザインを持ち、開口部の狭いグラスエリア(ガラス面)や、後端にかけてなだらかに絞り込まれるルーフラインはまさにスポーツカー。一方、ショルダーライン(サイドのライン)より低いエリアは、水平や垂直、斜め45度の線を幾何学的に組み合わせた無機質さが強調されており、上半分の優雅さとのコントラストが描かれているとのこと。


ドアはガルウイング式となっており、ドアのスイッチをタッチすると……


電動でゆっくりドアが持ち上がりました。参考ながら、開閉に要する時間は20秒程度。


ドアが開くと、内部には前後2列のシートがレイアウトされていました。


このモデルはなんと前1人+後ろ2人の3人がけレイアウト。ドライバー席は通常どおり右側に配置されており、ガランと空いた助手席部分には大きなインフォメーションディスプレイが配置されています。


プライベートジェットか宇宙船のような包まれ感のありそうなリアシート。球体に包み込まれるような造形で、優しく、やわらかな印象を乗り手に与えるようにデザインされています。この車体では、車のエクステリアとインテリアの両方に旭化成の素材や技術がふんだんに盛り込まれているとのこと。


車内には入れなかったので、グッと手を伸ばしてみた様子。助手席がないことで広大な空間が広がっています。


リアシートは座面と背もたれが連動して倒れる設計になっているそうです。


ドライバーズシートは、ヒンジとバネによって支えられるという構造。


この車両は、旭化成が今後のクルマづくりの姿を自動車メーカーと一緒になってディスカッションしていくためのモデルとして制作されたもの。未来志向で今後のクルマの姿を作る時に、GLMが持つエネルギッシュかつエモーショナルな会社の姿を見て、共同でコンセプトカーを開発することを決め、2015年から協議・制作が進められてきたそうです。


シャープでありながら、どこか優しい雰囲気を感じさせるヘッドライト周りの造形。


フロントフードに配置された開口部は内装へとつながるデザインになっており、環境との共生をモチーフに自動車が呼吸しているさまが表現されているとのこと。


フロント以上にシャープなリア周りのデザイン。車体側面を前後に貫く水平のショルダーラインがリアにつながり、上から見るとリングのような柔らかさを表現しています。


きゅっと絞り込まれたヒップラインは、どこか往年の名車「いすゞ・117クーペ」を思い出させるよう。


柔らかなデザインながら、レーシングカーを思い起こさせる「ディフューザー」のようなデザインが取り入れられているあたりが「未来のスポーツカー」を感じさせるところ。リアガラスが凹凸を描いている様子も、どこかスポーティーな印象を与えていました。


AKXYの制作にあたっては、GLMが車両のデザイン作成、車体設計、パワートレイン設計、そして実際の制作までの全てを担当したとのこと。両社ではこのプラットフォームを活用して今後の新しいEVの在り方を探っていくとともに、GLMでは新たに立ち上げた「プラットフォーム事業」を通じて、日本のみならず世界中でEVに参入したい企業の開発部隊としての役割を担う狙いを立てています。


「プラットフォーム事業」とは、GLMが開発した車両プラットフォームの技術を他社に提供するという事業のこと。GLMが持つ「プラットフォームシャシー」技術は、自動車の骨格となるシャシーを複数モジュールに分割された構造とすることで、用途やサイズに応じた様々な車種展開に対応することを可能としています。自動車を一から開発するためには非常に高いコストが必要とされるのですが、このようなモジュールをもとにすると、それぞれの車種の特性に合わせて構造部材の変更、重量物のレイアウトの変更などをおこなうことで車両開発が可能になるため、コストと開発期間の削減が可能になります。

極端な話、ミニ四駆が「走る部分」であるシャシーの上にボディカウルを搭載するような形で自動車の開発が行えるため、それまでは自動車を作ったことのないメーカーでも事業参入しやすく、思い通りに狙った自動車を開発できるという仕組みです。


また、制御系技術としては、車両特性に最適なEVシステムを実現することが可能な「マルチプルEVシステム」を有しており、モーター・インバータ・バッテリーモジュール・VCU等を組み合わせることで車両の開発を行えるという利点も。これらの技術に加え、それぞれの車種の特性に合わせた構造部材の変更、重量物のレイアウトの変更、加減速制御のチューニングなどを行うことで、最適な乗車フィーリングを実現する「パッケージング能力」の提供を今後の事業の要の1つとしているとのこと。

なお、旭化成グループのキャンペーンガール・大伴理奈さんも参加した発表会の詳細な様子は後ほど別記事で掲載予定なのでお楽しみに。


・つづき
旭化成とGLMが生みだした次世代EVコンセプトカー「AKXY」発表会をレポート - GIGAZINE

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in 取材,   乗り物,   動画, Posted by darkhorse_log

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