「柔軟な労働」をすると働く時間は増加する

by allispossible.org.uk

ケント大学の社会学教授であるHeejung Chung氏とThe Hans Böckler Foundationの研究者であるYvonne Lott氏が行った研究結果によると、「自分がいつ、どのぐらい働くか」など仕事のスケジュールを自分で決めることができる人ほど、オーバーワークになることが多いとのこと。これは数年間にわたるドイツの労働者のデータを分析して判明したことで、分析において、労働者の地位や仕事の種類はもちろん考慮されました。そして、最も労働時間が長い人は、「自分の労働時間を全てコントロールできる人」だったそうです。

Gender Discrepancies in the Outcomes of Schedule Control on Overtime Hours and Income in Germany | European Sociological Review | Oxford Academic
https://academic.oup.com/esr/article/32/6/752/2525493/Gender-Discrepancies-in-the-Outcomes-of-Schedule

Flexible working is making us work longer — Quartz
https://qz.com/765908/flexible-working-is-making-us-work-longer/


この行動パターンの背景にはいくつかの原因があると考えられますが、その1つが「ギフト交換理論」で、雇用者から「ギフト」として自由を与えられた労働者は、信頼に答えるためより働こうとする心理が働くというものです。

一方で、従業員が「好きな時間に働く自由」を与えられるのは給与の支給が「タスクベース」であることが多く、成果によって賃金が左右される場合があります。この場合、他の従業員よりも優秀な結果を残すべく、働き手は労働法を無視した多くの時間を仕事に割くかもしれません。また、家族と過ごしたり余暇を楽しむことよりも仕事を優先する人は、労働時間のコントロールを自分で行えるようになると、仕事の時間を増やします。仕事に力を注ぎこむことによって労働時間のコントロール権を得て、コントロールを得ることによってより仕事を行うようになるというパラドックスが存在する可能性もあるわけです。

しかし、労働時間のコントロールを取れるようになることによって、ライフワークバランスが取りやすくなることを示す研究結果も存在します。この研究では、人が柔軟に働けるようになることで収入が増えることも示されました。

そして、「柔軟な働き方」がもたらす影響は、男女によって違いがあることも判明しています。例えばパートタイムで働く女性は、男性と異なり、柔軟な働き方ができてもオーバーワークすることがないとのこと。これは、パートタイムで働く女性は家庭の事情を抱えており、長時間にわたって働けないことに理由があると考えられています。その証拠に、フルタイムで働く女性が柔軟な働き方を得ると、例え女性が母親であっても、男性と同程度にオーバーワークするそうです。

by Andrew Neel

この時、女性の得る「仕事の柔軟性」は報酬として与えられるものではないことが多いも分かっています。これは女性が「仕事の柔軟性」を得る理由は「家族のため」と雇用者が考えがちであるためだと研究者らは見ており、そのせいで女性は男性と同じようにオーバーワークして仕事を行っても、評価されないことが多いとのこと。

「柔軟な労働時間」という言葉は魅力的に聞こえますが、実際のところ労働者が求めるのはフランスの法律で規定された「労働者が勤務時間外の仕事のメールを見なくても良いという権利」である可能性があるわけです。

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