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ナマケモノはなぜあんなにも動きが遅いのか?


樹からぶら下がって日がな一日「食べる」「休む」「寝る」しかしていないように見えるナマケモノ。実際、ほぼその3つしかしてないのですが、なぜ彼らはあのような生き方をすることになったのか、動物保護をしているケニー・クーガンさんがナマケモノの歴史を紐解いています。

Why are sloths so slow? - Kenny Coogan - YouTube


1796年、ウエストバージニア州の洞窟で見つかった化石が、のちのアメリカの第3代大統領トーマス・ジェファーソンのもとへ送られました。ジェファーソンは生物学にも造詣が深いことで知られていました。


このときジェファーソンは骨が何の生き物のものかはわからなかったのですが、長く鋭い爪を「北アメリカに生息するライオンかパンサーのような動物のかぎ爪」だと考えました。


そのため探検家のメリウェザー・ルイスウィリアム・クラークに、この未知のライオンへの警戒を促したそうです。


しかし、実際にはジェファーソンのもとへ送られた化石はライオンではなく、絶滅した「巨大なナマケモノ」のものでした。ナショナルジオグラフィックによると、化石が届いて数カ月後、他の標本スケッチとの比較からナマケモノであることに気付いたそうです。


地上に住む巨大なナマケモノ(グランドスロース)が現れたのは3500万年ほど前のことで、多くの種がマストドンオオアルマジロなどとともに、北アメリカ大陸から南アメリカ大陸にかけて生息していました。


グランドスロースにはMegalonychidaeという猫ぐらいの大きさの種もいましたが、ジェファーソンの元へ届いた「メガロニクス」は体重が1トンほどだったように、今見かけるナマケモノ(10kg弱)に比べて巨大なものが多かったようです。


メガロニクスよりも大きい「メガテリウム」(オオナマケモノ)になるとゾウほどの大きさがありました。


グランドスロースたちは強靱な腕でサバンナや森林をゆうゆうと移動し、鋭い爪で草を根から掘り起こして食べたり、木に登って葉や太古のアボカドを食べていました。


小動物にとってもアボカドの種は大きかったので飲み込めませんでしたが、グランドスロースたちはアボカドを食べて種を飲み込み、それを糞といっしょにあちこちに排出しました。我々がいまアボカドを食べられるのは、こうしてグランドスロースがアボカドを広めることに貢献してくれたおかげかもしれない、と制作者のケニー・クーガンさんは述べています。


こうして何百万年も繁栄していたグランドスロースですが、およそ1万年前に西半球に生息していた他の巨大哺乳類とともに数を減らしていきました。研究者たちはその原因を氷河期の到来や、ヒトなどの影響と考えています。ヒトの西半球到達はグランドスロース絶滅と時期が重なるためです。


小さなナマケモノの一部は生き残り、生活の場を樹上に移しました。こんにち生き残っているナマケモノは、中南米の熱帯雨林に住む6つの種です。


樹上生活には捕食者に狙われにくく、エサとなる葉もたくさんあるという利点があります。


しかし、「葉ぐらいしかない」というのは欠点でもあります。生き物は食事でエネルギーを補給し、生命活動や体温の維持、移動などに利用しますが、葉は低カロリーで、しかもエネルギーの摂取が容易ではないためです。


このため草食動物の多くは果物や種子など、葉に比べてカロリーの高いものを食べています。


しかしナマケモノ、特にミツユビナマケモノの食料はほぼ葉だけ。この食事に合わせて、生存戦略を立てています。


1つ目は、食料からは可能な限りエネルギーを摂取するということです。ナマケモノの体の3分の1を占める胃はいくつもの部屋に分かれていて、種によっては1週間程度は食事なしでも過ごせます。


2つ目は、ほぼエネルギーを消費しないということです。「あまり動かない」というのはこの戦略を反映したもので、生活の時間のほとんどは「食べる」「休む」「寝る」に費やされます。木から下りてくるのは1週間に1回、トイレの時だけです。


そもそも移動速度もそれほど速くなく、道路を横断するのに平均して5分ほどかかります。


南米を旅行したチャリダーマンは、ちょうど道路を横断するナマケモノに出会っています。

道路横断中のナマケモノを発見し「無防備すぎて襲われてしまう」ことに納得 - GIGAZINE


動きが遅い理由として、同じぐらいの大きさの動物に比べたとき30%少ないという筋肉量も影響しています。


哺乳類では珍しい変温動物であるというのも「体温を維持する」というエネルギーを使わないための仕組み。体温が「平熱」から5度も上下するというのは、爬虫類に比べれば幅は小さいものの、哺乳類としては異例です。こうした生存戦略により、エネルギー消費、あるいは代謝速度を最小化しています。


新陳代謝の遅さで哺乳類をランク付けすると1位がミツユビナマケモノ、2位がジャイアントパンダ、3位がフタツユビナマケモノだとのこと。


移動が遅すぎて、藻類がナマケモノの背中に生えるほどですが、これはナマケモノが生きていく上でのカモフラージュに役立つほか、時には「おやつ」にもなっているそうです。

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in 生き物,   動画, Posted by logc_nt

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