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イギリス警察はUEFAチャンピオンズリーグ決勝を観戦にくる推定17万人のファンの顔をスキャンする予定


ヨーロッパサッカーの最高峰であるUEFAチャンピオンズリーグの2016-2017シーズも大詰めを迎えており、残すは5月に行われる準決勝と6月3日にイギリス・ウェールズの首都カーディフで行われる決勝のみとなっています。準決勝では昨年度の決勝カードであり世界屈指のダービーマッチでもあるマドリードダービーが行われることでも注目を浴びていますが、その準決勝を勝ち上がった2チームがぶつかる決勝の舞台ウェールズでは、地元警察が顔認証を用いて犯罪容疑者を検出する計画を立てています。

British Cops Will Scan Every Fan's Face at the Champions League Final - Motherboard
https://motherboard.vice.com/en_us/article/british-cops-will-scan-every-fans-face-at-the-champions-league-final

UEFAチャンピオンズリーグの決勝戦では、世界中のサッカーファンがカーディフのミレニアム・スタジアムを訪れます。この決勝戦に合わせ、カーディフではスタジアムや街中に監視カメラを設置しているそうです。

サウスウェールズ警察の政府調達情報によると、この顔認証システムはカーディフの主要鉄道駅や中央市街地にあるミレニアム・スタジアムの内部、さらにその周辺に配備されるとのこと。スタジアムの収容人数は7万4500人ですが、6月3日の決勝が開催される際には推定17万人がカーディフの街を訪れると見込まれています。そして、ウェブメディアのMotherboardが関係者から得た情報によると、配備されたカメラは6月3日に推定17万人の訪問者の顔をスキャンし、リアルタイムで犯罪容疑者データベースと照合するとのこと。


イギリスは監視カメラ大国として知られており、街中には300万台を超える監視カメラが配備されています。そんなイギリスは2017年3月に監視カメラの使用に関する国家戦略を発表したばかりです。政府の監視カメラコミッショナーを務めるトニー・ポーター氏にMotherboardがメールで話を聞いたところ、UEFAチャンピオンズリーグの準々決勝で日本代表の香川真司選手が所属するボルシア・ドルトムントのチームバスが爆破された事件を受け、イギリス警察は自動顔認証装置(AFR)を用いることを検討することになったそうです。

ただし、監視カメラに関する実施規則に準拠する形でAFRの運用が行われる、とポーター氏は説明しています。実際、「我々の事務所は、AFRを使用するための実施規則に従っていることを確認しており、そのためにサウスウェールズ警察と密に連絡を取り合っていました」と語っています。

さらにポーター氏は、「AFRの使用事例が過去数年間で増加していることから、アメリカ国立標準技術研究所は『顔認証は困難な挑戦である』という報告書を公開しました。AFRでより正確な成果を得るには、良いアルゴリズムと設計努力、他分野にまたがった専門家によるチーム、小さなサイズの画像データベース、技術を適切に調整して最適化するためのフィールドテストなどが必要になってきます」と語っており、顔認証の精度が問題視されていることも理解しているとコメントしています。


ポーター氏が言及したアメリカ国立標準技術研究所の報告書では、「非協調的な被写体、つまりはカメラの方を向いていない、もしくは顔が不明瞭な被写体ではAFRを用いても人物を特定するのに限界がある」という内容が書かれています。報告書は、正確な顔認証が行われるには「高品質のカメラを用いて制御された環境の中で行うこと」が必要であるとしています。その理由は、被験者の顔が何らかの理由で容易に隠れる可能性があるからであり、顔認証のために複数台のカメラを配備するには高いコストがかかるからでもあります。

顔認証に用いられるソフトウェアの精度は、アメリカの下院委員会でも批判されています。この問題については以下の記事を読めばその詳細がわかります。

FBIが犯罪捜査に使う顔認識技術は「正確性に欠ける」のに規制がない - GIGAZINE


AFRを用いることの難しさは、ノッティングヒルカーニバルの警備を担当したメトロポリタン警察の声明からもよくわかります。この声明によると、カーニバルの警備で454件の逮捕者が出たそうですが、AFRはその中の誰も容疑者として検出することはなかったそうです。

AFRの有効性には制限があること、そしてAFRに関する規制がしっかりと整備されていないことについて、プライバシー保護団体の政策ディレクターを務めるレイチェル・ロビンソン氏は、「ますます高度化していく監視技術と、警察による法的保護手段との溝は深まっており、我々はこの問題に対して常に警鐘を鳴らしてきました」とメールでコメント。

このようにAFRに対する明確な問題点や恐怖感が指摘される中、UEFAチャンピオンズリーグ決勝にAFRを用いる計画が浮上したわけですが、AFRが活躍するのかそれともまったく役に立たないのか、そもそも事件が起きるのか起きないのかなどは一切不明。そんなサッカー界だけでなくテクノロジー・プライバシー分野からも関心を集めるUEFAチャンピオンズリーグ決勝は、日本時間で2017年6月4日3時45分からスタートです。

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in メモ,   ソフトウェア,   ハードウェア, Posted by logu_ii

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